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from: エリスさん
2015年05月15日 11時13分47秒
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悠久の時をあなたと・7
クロノスとレイアーが真の夫婦となったのは、ガイアがヘカトンケイルを産んだ翌月のことだった。
それまではクロノスの方が決心がつかなくてうじうじとしていたのだが、いざ同じ臥所に入ると、レイアーの生まれたままの姿の美しさに魅了されたクロノスは、我を忘れる程夢中になったという。
その結果、レイアーは身籠った。
すると、それを知った日の夜から、クロノスは悪夢にうなされるようになった。
クロノスが夜中に突然悲鳴を上げて飛び起きるたびに、隣で寝ているレイアーも目が覚めてしまうのだが、レイアーが何度「どんな夢なの?」と聞いても、クロノスは決してその内容を言おうとはしなかった。
そして、悲劇はレイアーの出産直後に起きてしまった。
そのあまりにも惨(むご)い悲劇に、我が耳を疑ったガイアは、すぐにもレイアー達のもとに駆け付けた。
「レイアー! 真なのか!」
ガイアは娘の姿を見るなり言った。「クロノスが生まれたばかりの赤子を飲みこんだとは!」
涙に暮れていたレイアーは、その言葉に頷いた。
「なんてことを!」と、ガイアは怒り心頭だった。「クロノスはどこだ! 問い詰めてやらねば!」
「待ってください、お母様!」
レイアーはガイアの服の裾を掴んで止めた。「クロノスは......何も覚えていないのです」
レイアーが産屋に籠っている時は何事もなかったクロノスだったが、赤子が産まれて、その産声が鳴り響くと、突然産屋に入ってきて、生まれたばかりの赤子を産婆から奪い取り、赤子に小さくなる呪術をかけて、口の中に放り込んで飲みこんでしまったのである。あまりのことにレイアーが悲鳴を上げると、それと同時にクロノスは気を失ってしまった。
「ともかくクロノスを寝室に運び、しばらくすると彼はうっすらと意識を取り戻しました。そして言うのです。"子供はどうなった?"と......それで私は、彼が自分のしたことを覚えていないと気付いて、こう言ったのです。"子供は死産でした"と。すると彼は、安堵したように"そう......"というと、また眠りについてしまったのです。まるでここ数日の眠れぬ夜を取り戻すかのように」
「なんてこと......」
ガイアはレイアーも伴ってクロノスの寝室へと行った。確かに安堵したように眠っているクロノスの額に、ガイアは自分の額を重ね合わせた。そうすることで相手の記憶を探ってみたのである。すると、ガイアは恐ろしい事実を知った。
ガイアは顔を上げると、レイアーに言った。
「クロノスはウーラノスに呪詛をかけられておる」
「呪詛?」
「そう......生まれてくる我が子に惨殺される悪夢を見続けさせられ、あたかもそれが現実に起こると思い込まされているのだ。クロノスはそれに対して"これは夢だ、現実ではない"と思おうとして、頑張ってはいたのだが......」
「お父様の呪詛には、勝てなかったのでございますね......それで、お母様。その呪詛は破れないのですか?」
「無理だ。こんな強烈な呪詛は、無理に破ろうとすればクロノスの精神も道連れに崩壊してしまう。ウーラノスめ、自分がもう子供を作れなくなったからって、腹いせにこんなことを......」
ガイアはレイアーの方を向き、彼女の手を取った。
「レイアー、子供をつくるのを止めなさい。そうすればクロノスもこんな暴挙に出なくて済むのです」
「......分かりました。それでこの人を守れるのなら」
レイアーはこの時、そう決心をしたのだが......それは簡単なことではなかった。-
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