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from: エリスさん
2007年02月26日 13時18分17秒
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恋多き女神・1
ヘーパイストスとアプロディーテーが結婚して、一年が過ぎた。決してラブラブではなかったけれど、食事の準備やお掃除や、妻としての役割はちゃんと果たしてくれ
ヘーパイストスとアプロディーテーが結婚して、一年が過ぎた。
決してラブラブではなかったけれど、食事の準備やお掃除や、妻としての役割はちゃんと果たしてくれるアプロディーテーに、不満などはない。
ないのだけれど……。
仕事から帰ってきて、疲れたから少しベッドに横になろうかなァと思っていたその時、彼――ヘーパイストスは見つけてしまった。
枕の上の、金色の髪を。
アプロディーテーの髪か? いや、それにしては短い。それに少し太めだ。
自分の髪は少し茶色みがかっているし、これは明らかに、この家の者以外の髪だ。
『いったい誰の……』
恐る恐るそれを手に取ると、微かに残るオーラを感じて、確信してしまった。
『あ、兄上!?』
間違うはずがない。それは、同じ母から生まれた兄・アレースの髪だったのだ。
『なんで!? なんで兄上の髪の毛が、こんなところに!?』
訳がわからないでいるヘーパイストスに向かって、キッチンからアプロディーテーが声をかけてきた。
「あなたァ〜ン、お夕飯ができましたわよォ〜」
「あッ、ああ……ハーイ…………」
ベッドに髪の毛、ベッドに髪の毛、ベッドに髪の毛!!
それが意味するものは、やっぱり一つしかないのか!?
『うそだろ!? 兄上ェ〜〜〜〜〜〜!』
ヘーパイストスはその髪の毛を、千切れるかと思うほど強く握り締めた。
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from: エリスさん
2007年03月18日 12時09分12秒
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「恋多き女神・19」
数日後。
エリスは差し入れを持ってヘーパイストスの仕事場を訪ねてきた。
「どう? その後なにか手は打った?」
「う〜ん……それなんだけど」
ヘーパイストスは何かを手に持ったまま、エリスの方を振り返った。
「これ、なんに見える?」
「なにって、網だろ?」
すると、ヘーパイストスは深いため息をついた。
「分かっちゃダメなんだ……っていうか、見えちゃダメなんだよ」
「はァ?」
ヘーパイストスが持っていたものは、薄い糸で編み上げた網だったのである。だが彼は、本当は「目に見えない網」を作りたかったのだ。
「だけど僕には、目に見えない糸が作り出せないんだよ……」
「糸かァ……ヘースには専門外なんだな」
「うん……」
そこへ、キュクロープス兄弟が顔を出した。エリスが持ってきた葡萄(ぶどう)のジュースをコップに入れて持ってきたのだ。もちろん、ステロペース特製の氷入り。
「うほほ(どうぞ)」
「ありがとうございます。おじ様たちも飲んでください。おいしいですよ」
「わほわほ(ありがとう、いただくよ)」
「うほうほ、わほ(おまえも休息しなさい、ヘース)」
「ハーイ……」
仕事場で食事をするのもなんなので、四人は隣室にある休憩室に移動した。
そこでヘーパイストスと向かい合ってジュースを飲んでいたエリスは、見慣れないものを見て驚いた。
キュクロープス兄弟が、コップに長い棒をさして、その棒を口にくわえていたのだ。
「ヘース、おじ様たちはなにをしているの?(エリスは気を抜くと女言葉になってしまう)」
「ああ、ストローでジュースを飲んでいるんだよ」
「ストロー?」
「あの口にくわえているやつさ。あの棒は管になっていて、吸い込むと飲み物が口の中に入ってくるんだ」
「ヘエ……ヘースが作ったの?」
「そう。ホラ、そうしないとさ、プロンテースおじさんは手にしたものを熱湯に変えてしまうし、ステロペースおじさんは凍らしてしまうだろ?」
「なるほど……だからいつも、おじ様たちが使うものには長ァい柄が付いているんだものな。そうなると、食事はどうしているの? 長いスプーンを使うにしても、口に運ぶのは……」
二人の会話を途中から聞いていたキュクロープス兄弟は、「わほ!」と二人に声をかけてきた――見ていてごらん、ということだ。
テーブルの上には、ポップコーンが置かれていた。それを先ず、プロンテースが長ァい柄のスプーンで掬い取り、向かい側に座っているステロペースの方へ向けた。ステロペースはそのスプーンに口を近づけて、パクッと食べる。
今度はステロペースが長ァい柄のスプーンでポップコーンを掬い、プロンテースの口元へ運ぶ。それをプロンテースがパクッと食べる。――二人はいつもこうやって、お互いに協力しながら食事をしているのだった。
それを見て、エリスは言った。
「どっかの国のお伽噺にあったよね、《天国のスプーンと地獄のスプーン》。あれみたい!」
「そう、その話の《天国》バージョンさ」
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