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from: エリスさん
2007年04月08日 14時41分18秒
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異形の証(いぎょう の あかし)・1
いつからか、僕がお母様の子供ではないことは、気づいていた。お母様とは全然似ていないし、どちらかって言うと従兄弟のリーモスやポノスとの方が似ていて――で
いつからか、僕がお母様の子供ではないことは、気づいていた。
お母様とは全然似ていないし、どちらかって言うと従兄弟のリーモスやポノスとの方が似ていて――でもその従兄弟は、正確には「従兄弟」ではなくて……。
だから、叫んでしまった。
「僕の本当の母親は誰なんですか!」
お母様が悲しむ顔を見るのは辛いけど……でもどうしようもなかった、あの時。
僕の成長が十五歳で止まってしまったのも、お母様が道ならぬ恋に奔(はし)った所為だと、だから僕が呪われてしまったのだと、そう思い込んでいた。
「恥ずかしくないのですか。女同士で愛し合うなど、汚らわしい!」
本当は汚らわしいなんて思ってない。お母様が本当に愛している人なら、祝福してあげたかったんだ。
でも、あの頃の僕には、できなかった。
気づいてしまったから……。
僕の背中にある翼――それこそが、僕の本当の母親が「あの人」である証であると、分かってしまって。
素直になれない自分を、僕はどうすることもできず……。
「教えてください、お母様。どうして僕に、Eris(エリス)叔母様と一字違いのEros(エロース)を与えたのですか!」
そんな問いに、お母様が答えられるはずがないのは、分かっていたのに……。
「お母様の血だけを引いていれば、僕が《異形の神》として生まれるはずがないんだ!!」
言葉ではどんなに反発しても、
本当は、
エイレイテュイアお母様も
エリス叔母様も
大好きなのに……
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from: エリスさん
2007年04月25日 13時57分29秒
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「異形の証(いぎょう の あかし)・8」
「それじゃ行ってくるよ」
プシューケーをお姫様抱っこした僕は、ベランダから飛び立って、一路アルゴス社殿へと向かった。
「行ってらっしゃァーい!」
娘のヴォループタースが、両手を振って見送ってくれている。
「あんなに夢中で手を振って。ベランダから落ちなければ良いけど」
と、プシューケーがちょっと心配そうな顔をする。
「アハハ、ホントにね。僕の娘でも空は飛べないからな」
「私が人間ですからね」
本当はプシューケーも神の血を引いているんだけど、本人は知らない。彼女の祖母・シニアポネーは、表向きはヘーラー王后に仕える精霊なんだけど、本当はアルテミス女神とアポローン男神の間に生まれた女神だった。けれど、アポローンとの関係を知られたくなかったアルテミスが、エイレイテュイアお母様に頼んで、胎内に宿った子供を別の女性の胎内に移してもらったんだ。
つまりシニアポネーは、僕と同じ方法で生まれてきたんだ。
そして、シニアポネーに好きな人ができたとき、その仲を取り持ったのが僕だったりする。
シニアポネーはその恋が成就して結婚し、たくさんの子供に恵まれた。プシューケーの母親はその中の三番目の子供になる。
僕がプシューケーに恋をしたのは、僕の初恋の人になるシニアポネーと似ていたから……ということもあるけど。今はシニアポネーとは比べ物にならないぐらいプシューケーのことが大好きだ。――そのことはプシューケーも承知の上だよ。内緒にしておくのも嫌だったから、ちゃんと話したんだ。
――しばらくして、アルゴス社殿が見えてきた。
中庭に三台の馬車が止まっている。その内の一つにエリス叔母様の娘たちが勢ぞろいで乗っていて、その中の一人が僕たちに気づいて、元気よく手を振ってきた。
「ワーイ! エロースだ! エロースゥ!」
叔母様の末娘・アーテーだった。破壊の女神らしく、よく不注意で物を壊してしまうある意味「特技」を持った子だ。
このアーテーと、その一つ上のホルコス(誓言の女神)は、十二歳ぐらいで成長が止まっていた。その他の兄弟たちも「二十歳と呼ぶには若すぎる」ぐらいの見た目で、ちゃんと二十歳過ぎぐらいに見られるのは第四子(僕を入れると第五子)のアルゴスまでだった。この結果、僕の成長が十五歳で止まったのは、二人の母の忌まわしい関係による呪いではなく、単なる血筋であることが発覚した。あの頃はみんな子供だったから、まさかこうゆう結果になるなんて思わなくて、エリス叔母様はすごく気にしていたはずなんだ。ちゃんと真実を教えてあげたいけど……会えないものなァ、今は。
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