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神話読書会〜女神さまがみてる〜

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  • from: エリスさん

    2012年10月25日 22時52分26秒

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    つないだその手を離さない・5

      それから五年の月日が流れた。
     エリスの御子たちを成長させる目的で付けられた従者たちは、大方その役目を全うして、そのまま主人と結婚するか、同性の場合は愛人に納まるなどしていた。
     アルゴス王の姫のイオーは、予定通り13歳でアルゴス社殿の巫女として仕え始め、15歳になった今もそれは続いていた。――もう一つの職務と共に。
     イオーが祈りの間で朝の祈りを捧げていると、もう一人の巫女であるフローラーが入ってきて、彼女に声を掛けた。
     「ご苦労様、イオー。交代の時間よ」
     「はい、フローラーさん」
     フローラーはイオーより3つ年上で、イオーより先に巫女になっている、いわば先輩である。そして、同じ職務を経た仲間でもあった。
     その同じ職務とは、当然……。
     「イオー!」
     その声は突然、天井から響いてきた。二人は驚きもせず見上げると、天井から背中に赤い翼を生やした少女が飛び降りて来るのが見えた。
     「アーテー様」
     この5年の間に、実の祖母である夜の女神ニュクスから、背中に翼を生やす方法を教えてもらい、空を飛ぶことを習得したアーテーは、好きな時に人間界と天上界を行き来できるようになっていた。
     アーテーは右手にピンクの花を手にして、イオーの前に着地した――その姿は、まだ13歳ぐらいに見えた。年相応のイオーよりまだまだ幼く見えるが、それでも、初めて会った時の5歳児の体型に比べれば、かなりの成長である。
     「イオー、お仕事終わった?」
     アーテーが聞くので、
     「はい、たった今。フローラーさんと交代したところです」
     「それじゃ、遊びに行こう。今日は天上界のアルゴス社殿においでよ」
     「そうですね、今日は母もそちらにお邪魔しているはずですから、そういたしましょう。帰りは一緒に帰ってこれますし」
     「レシーナーと一緒に帰るんじゃ、ちょっと早いよ。帰りは私が送ってあげるから、夜まで一緒に居て(^o^)」
     「そういうわけには……夜も巫女の仕事がありますし」
     「おばあ様(ヘーラー)にお許しをいただけば、一回ぐらいお休みもらえるのに」
     「そうゆうわけには参りません」
     「イオーは堅物なんだから……でも、そうゆうとこ、大好き!」
     「ありがとうございます(^o^) では、参りましょうか」
     「うん……あっ、そうだ。これ!」
     アーテーは手に持っていたピンクの花を、フローラーに差し出した。
     「アンドロクタシアーお姉様から、フローラーにって」
     「まあ……シアー様が?」
     フローラーは頬を紅潮させると、嬉しそうにその花を受け取って、うっとりとするのだった。
     「シアー様……お元気でいらっしゃるのかしら?」
     「元気だよ。最近はエリーニュエス(復讐の女神たち)のお仕事を手伝って、悪い奴らを懲らしめまわってるよ」
     「まあ……あのお優しい方が、どんな思いでそんな辛いお役目を……」
     「お姉様は“殺人の女神”だもん。どんなに辛くったって、気丈に職務をこなされているよ」
     「ええ……そうですわね」
     フローラーは悲しそうな顔をした。「だからこそ、私がお傍でお慰めしたかったのに……」
     フローラーも元はアンドロクタシアーの侍女だった。フローラーと一緒に成長することで、アンドロクタシアーも立派な大人の女神に成長したのだが……自らが司る物を忌むべき物と思い、それに花のようなフローラーを巻き込みたくないと、彼女を自分の傍から離したのである。
     「フローラーの気持ちは、私からちゃんとお姉様に伝えるから。だから、フローラーも諦めちゃ駄目だよ、お姉様の事」
     「はい。ありがとうございます、アーテー様」
     「それじゃ、イオーを連れて行くね」
     「はい、行ってらっしゃいませ」
     フローラーに見送られながら、イオーはアーテーに抱きかかえられて天上界まで昇って行った。
     普段は13歳ぐらいの少女の姿をしているが、イオーを抱きかかえている間だけは、実は少し大人になっている。アーテーにその自覚はないらしく、目的地についてイオーを降ろすと、元の姿に戻ってしまうので、イオーもあまりそのことは言わないようにしていた。アーテーが少し大人になるからこそ、自分より体格の大きいイオーを抱えて空を飛べるのだろうから、そのことを指摘して二度と大人になれなくなってしまったら、小さいアーテーがイオーを抱えて空を飛ぶなど危険すぎるからである。
     『でも、私を抱きかかえている時のアーテー様って、本当に凛々しくて、まるで夢の国の王子様みたいなのよね……』
     うっとりと、そんなことをイオーが考えている間に、アーテーは両手を背中に回して呪文を唱え、翼を髪に変えて自身の毛髪につなげた――赤毛の長髪の少女も、また可愛い姿ではあるのだが。
     「なにして遊ぼうか?」
     「秋になりましたし、木の実ひろいでもしませんか? 向こうの方から芳しい匂いが漂ってまいります」
     「ああ! 葡萄の匂いだね。私のお母様、葡萄が大好物だったんだ」
     「では、取りに行って、お供物としてささげましょう」
     「いいね。あとでみんなで食べられるし……じゃあ、私、籠取って来るよ。ここで待ってて」
     「はい」
     以前は、何かものを持たなければならない時は、イオーが代わりに持ってあげていた。そうしないと、アーテーが無意識に力を放出して物を破壊してしまうからだが、ここ2年ぐらいは、アーテーも力のコントロールが出来るようになって、無闇に物を破壊することがなくなった。  そういうこともあって、他の姉妹より体の成長は遅れているものの、心の成長はなされたと認められて、イオーの侍女としての役目はお役御免となったのだが、今もこうして二人の交流は続いているのである。
     イオーは、噴水の岸に腰を下ろして、アーテーが来るのを待っていた。……すると、誰かの話し声が聞こえてきた。
     どこから? と、あたりを見回すと、それは噴水の傍にある東屋からだった。
     その東屋は蔦の葉が絡み合って、格好の隠れ家にはなっているが……入口に、ドアがあるわけではない。そこに、アーテーの長姉・レーテーと、彼女に仕える男装の娘・タケルがいた。
     「日光に晒されると、本当にあなたの肌は透けるように白くなる……」
     タケルが今まさにレーテーの服を脱がせているところを、イオーは見てしまった。
     「あなたの黒髪も、日にあたると輝いて見えるわよ、タケル……」
     レーテーはそう言って、タケルにキスをしながら、その前開きの異国の服を脱がし始めた。
     白い肌と、桃色の肌が、重なり合っていく。
     イオーは、この場をどうやって逃げようか、と、気持ちが焦ってしまった。しかし、下手に動けば二人の邪魔をしてしまう。
     『それにしたって、こんな誰に見られるか分からないところで!?』
     レーテーとタケルの馴れ初めは、レーテーが日本(やまと)とかいう国に旅行に行った時に知り合って、ちょうどタケルも旅をしていたので、しばらくレーテーも日本人に化けて旅に同行したとか……なんでも日本はまだ未開の地で、宿泊所のようなものがないから野宿だったとか聞いているが。
     『だから、外の方が盛り上がるとか? でも、他人の迷惑も考えてよォ〜!』
     イオーは心の中でレーテーを非難した――もちろん、直接非難できるわけがない。
     どうしよう、動けない! と思っている時に、誰かがふわっとイオーを包んだ。
     「静かに……動かないで」
     アーテーだった。
     「下手に動いちゃ駄目。このまま黙っているんだよ。じきに終わるから……」
     「は……はい」
     アーテーとイオーは、二人がすることを黙って見守ることにした。
     レーテーの肢体は細身ながら、胸はとてもふくよかで、その果実にタケルが触れるたびに、とても甘い声を奏でていた。タケルは、女ながらによく鍛えられた体をしており、その力強さでレーテーを蕩(とろ)けさせている。
     イオーは……見ているうちに、恥ずかしさを忘れていた。そして、アーテーも気付かぬうちに大人の体に変貌していた。
     「綺麗だね、レーテーお姉様」
     ひそひそと、アーテーがイオーの耳元で囁く。
     「はい……本当に」
     「いいなァ……私もあんな体になりたい……」
     「アーテー様なら、きっと……」
     いや、もうすでになっているのを、イオーは自分の腕にあたるアーテーの胸のふくらみで感じていた。
     「イオーも、以前より大人になったよね」
     「それは……もう、15歳ですから……」
     「15歳か……子供だって産める歳だよね」
     アーテーは、そうっとイオーの胸に触れてきた。イオーが「あっ」と小さくあえぐと、
     「いや?」
     「いいえ……いえ、いけません。私は神に仕える巫女……」
     「巫女は、神にならその身を捧げてもいいんだよ?」
     「でも……あっ、いけません……」
     アーテーの手がイオーの胸を撫でてくるので、イオーが愛らしい声を上げていく……。
     「ねえ、イオー……私たちも、そろそろ……」
     「アーテー様……」
     二人の唇が、まるで引き合うかのように近づいた時……二人は頭を抑えられた。
     「はい! そこまで」
     半裸のままのレーテーとタケルが二人の傍に立っていた。
     「あなた達は、こんな隠れるところもないところで、するつもり?」
     「お姉様に言われたくないですゥ〜」
     と、文句を言っているアーテーは、一瞬のうちにもとの少女に戻っていた。
     「私たちはちゃんと、四方のうちの三方は隠れているところでやっていたわよ」
     「それでも屋外に変わりはないじゃない」
     「いいのよ、私たちみたいな熟練したカップルは。あなた達はまだ初心者でしょ? ねえ、イオー」
     と、レーテーはイオーに顔を近づけた。
     「初体験は、ちゃんと誰にも見つからないところで、したいでしょ?」
     「あの……えっと……」
     イオーは、レーテーの豊満なバストが目の前にあることにドキドキしてしまって、何を話していいのか分からなくなってしまって、
     「あの……失礼します!」
     と、その場を逃げ出してしまった。
     「あら、本当に初心な子ね」
     と、レーテーが言うので、
     「もう! お姉様の意地悪!」
     と、アーテーは言って、イオーの後を追いかけた。
     「本当に、我が妹ながら、アーテーも奥手よね」
     すると、タケルがレーテーを後ろから抱きしめながら言った。
     「君のその奔放なところは、母君譲りなんだろ?」
     「そうよ。母君は、愛しい女を見つけたら、全身全霊で愛しぬいていたわ。だから、相手の女も同性愛の禁忌に恐れることを忘れて、母にすべてを捧げていた。イオーは、その一人のレシーナーの娘なんだけどね」
     「親子だから似るとは限らないよ……わたしは、父親に似る気は毛頭ないし」
     「そうね。あなたはあなたのままで居てね。ヤマトタケルノミコトさん」
     「もうその名で呼ぶなよ。今の私は、ただのタケルだ」
     「そうでした。じゃあ、タケル……続き、して(#^.^#)」
     「ハイ、女神様」
     イオーはどこをどう走ったのか分からず、いつの間にか社殿の正面入り口まで来てしまい、そこで誰かにぶつかった。
     倒れそうになったのを、その人が腕を掴んで守ってくれた。
     「これは、巫女殿。どうなされました」
     イオーとぶつかったのは、この社殿の近衛隊長・ティートロースだった。
     「あっ、ティートロースさん……すみません、ちょっと……」
     「しかし、ちょうど良かった。今、うちの(近衛隊)者にあなたを探させていたのです」
     「私を?」
     そこへ、アーテーが追いかけてきた。
     「イオー! 待ってよ……あっ、ティート」
     「アーテー様。やはり、お二人は一緒におられましたか。実は、乳母殿(レシーナー)が……」
     「母が!?」
     見れば、馬車が停められていた。そして、社殿の中からレシーナーが、エイレイテュイアに手を引かれながら歩いてきた――大きなお腹を抱えて。
     「お母様! どうなさったのですか!?」
     「ああ、イオー……」
     レシーナーは額にうっすらと汗を浮かべて、苦しそうにしていた。
     なので、代わりにエイレイテュイアが答えた。
     「陣痛よ。心配ないわ、まだ始まったばかりだから、生まれるのは今晩ぐらいよ。その前に、ティートロースに送らせるから、あなたも付いて行ってあげて」
     「はい! もちろんです」
     なのでアーテーが「私も行く!」と言うと、
     「あなたは駄目。人間の出産に立ち会うと言うことは、その子に祝福を与えること。すなわち、その子に祝福を与えた神と同じ能力を与えることになるのよ――分かっているでしょ?」
     分かっている――アーテーの司る物からして、それはあまり喜ばしいことじゃない。分かってはいるけど……。
     自分の言葉でアーテーが落ち込んでしまったので、エイレイテュイアはアーテーの頭を撫でてあげてから、ティートロースに言った。
     「それじゃ、ティート。頼むわね」
     「はい、お任せください、姉上様」
     ティートロースは半神半人の近衛隊長であり、エイレイテュイアの妹・マリーターの夫でもあった。
     レシーナーを馬車に乗せて、イオーもその傍らに座ったことを確認すると、ティートロースは馬車を走らせた。
     ちょうどその時、反対方向から天馬に乗った男神が舞い降りてきた。
     「あら、お父様。お珍しい」
     エイレイテュイアが言うのも無理はない。その男神――神王ゼウスは、滅多に妻の社殿であるこのアルゴスには来ないのである。
     「最近、ヘーラーがちっとも帰ってこないのでな。仕方ないから顔を見に来たのだ。そこにいるのは、エリスの末娘だな?」
     「はい、陛下」と、アーテーは返事をした。「アーテーにございます」
     「ふむ。それで、いま出て行ったのはティートロースのようだったが? 誰を馬車に乗せていたのだ? 病人のようだったが」
     「病人ではなく、予定日より一月も早く陣痛を迎えた妊婦です。身重なのに良く働くものですから、無理が来たのでしょう」
     と、エイレイテュイアが答えたので、アーテーも言った。
     「私の養育係のレシーナーです」
     「レシーナー……覚えているぞ、エリスの最後の愛人だったな。すると、あの同乗していた娘は……」
     「レシーナーの娘で、私の侍女だったイオーです。今はアルゴス社殿の巫女をしています」
     「イオー……そうか、イオーか……」
     ゼウスが何を思い出しているのか、エイレイテュイアは分かっていたが、あえてその事をアーテーに言うつもりはなかった。
     

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