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from: エリスさん
2014年07月04日 12時13分04秒
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白鳥伝説異聞・25
東国を目指す途中にも小さな国がさまざまにあり、タケル一行はそれらの国に「大和に与するか否か」を問いていき、与しないと言えば制圧するつもりだったが、すでにタケルの評判が広まっていたこともあり、どこの国でも歓待を受けた。
そして、そんなうちに大晦日を迎えた。
正月にはオリュンポスに帰る約束をしていたレーテーが、しばし一行から離れることになった。
「三が日の間はここに滞在させてもらえることになったから」と、タケルは言った。「その間に帰って来てくれよ」
「もちろんよ。元日に大おば様のところに挨拶に行ったら、すぐに帰って来るわ」
念のため、吉備のタケヒコや他の兵士たちに怪しまれないように、高天原のコトノハに輿(こし)で迎えに来てもらった。
タケルたちに見送られているうちは、レーテーもコトノハも輿に乗っていたが、誰にも見られないところに来ると、輿を担いでいた下男たちは白鷺に姿を変え、輿も天蓋付きの車へと変化した。そして、コトノハが御者になって白鷺に車を引かせて空を飛び、高天原まで戻ってきたのだった。
「わざわざ黄泉の国を通らなくても、高天原からオリュンポスまで行ける近道があるのよ」と、コトノハは言った。「天照さまがヘーラー様と行き来できるように、お造りになったそうよ」
「その近道を、使わせてもらえるの?」
レーテーが言った時、天照大御神が現れた。
「もちろん、通らせてあげるわ。私の親友のお孫さんですもの」
天照の私室の奥に、その近道を塞ぐ扉があった。天照は自ら扉を開き、
「ほら、あの光に向かって歩いて行きなさい。あなたも良く知っている場所に出られるわ」
レーテーは言われた通りに進んで行った......。
レーテーがいない間、タケルは滞在地の国造から歓待を受けていた。国造は、
「是非とも我が娘を差し上げたい」
と申し出てきたが、タケルは征伐に向かう旅の途中であることを理由に、丁重に断った。それでも、夜になると国造の娘が、
「夜伽のお勤めに参上いたしました」
などと寝室で待っていたりするので、タケルは娘を傷つけないように断るのに骨を折ったのである。
レーテーが帰って来たのは、二日の夜も明けかかろうかという時間だった。タケルはちょうどその時間に目が覚めて、御簾越しにレーテーの背中に亜麻色の翼が広がっているのが見えた。しかしその翼はすぐに消え、御簾を巻き上げながら、まだ本来の姿のレーテーが入って来た。
「一人なの?」
レーテーが聞いてくるので、タケルは苦笑いをした。
「あたりまえだろ。なにを疑っているのさ」
タケルは掛けていた布団を持ち上げて、レーテーに隣に寝るようにと敷布団を叩いた。
「私がいないから、大和の王族とつながりを持とうと、国造が自分の娘を差し出してきたのじゃないかと思って」
「差し出してきたけど、断ってるよ。当然だろ......」
と、そこでタケルは欠伸をした。「早くおいでよ、眠いんだから......」
「うん......」
レーテーはタケルの布団の中に入り、掛布団を掛けてもらった。
タケルは、眠いと言いつつもレーテーを抱き寄せると、その胸に顔をうずめた......そして、気付いた。
「誰の匂い?」
「え!?」
と、レーテーはドキッとした。
「他の女の匂いがする、この辺りから......」
そしてタケルはレーテーの胸元をはだけさせると、谷間にくっきりと残るキスマークを見つけた。
「やだ、跡がついてたなんて......」と、無意識にレーテーがギリシア語で言うと
「ど~ゆ~ことォ~?」と、タケルはむっくりと起きだして、レーテーを見下ろした。完全に怒っている。
「わたしが浮気していないか疑っておいて、自分は故郷でどこぞの娘に手を出していたのか? レ~テ~~~?」
「ま、待って! これには訳があるの......」
「ヘェ~~訳ねェ~~?」
怒っているので、男言葉も、声を低く出すことも忘れてしまっている。なのでレーテーは、
「今は夜中だから、誰かが起きて来ないよう小声で......」
「分かっ......てるよ......」と、タケルは声を小さくした。
「で? どんな訳があれば、そんなところにそんな跡が付くのさ」
「それは......あなた、エルアーのこと覚えてる?」
「エルアー?」
それは、男に酷い目にあわされた為に男性恐怖症になってしまった少女のことだった。レーテーが記憶を消してやることで、正気を取り戻したのだったが。
「私、治療の時にやりすぎてしまったみたいで......」
「やり過ぎって......何があったんだ?」-
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