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神話読書会〜女神さまがみてる〜

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  • from: エリスさん

    2014年07月11日 11時42分11秒

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    白鳥伝説異聞・26

    高天原からの近道を通って来たレーテーは、出口である光の中へ飛び出した。そこは、祖母ヘーラーの私室にある大鏡だった。
    大鏡の前には、すでにヘーラーとエイレイテュイアが待ち構えていた。
    「お帰り、レーテー。エイレイテュイアに聞いていた通り、愛らしい姿だこと」
    と、ヘーラーが言うと、エイレイテュイアも言った。
    「そうでしょう? お母様。もう、すっかりこの姿が気に入っているらしくて、元の姿に戻るのを忘れているぐらいなのですよ」
    「あっ、ごめんなさい」と言って、レーテーは元の姿に戻った。「つい、うっかりしてました」
    「良いのですよ。あなたが幸せでいるのなら、それで」と、ヘーラーは微笑んだ。「さあ、先ずは旅の疲れを癒しに、湯にでも浸かってきなさい」
    レーテーはその言葉に従って、湯殿へと向かった。
    久しぶりに入ったギリシアのお風呂は、温かくて広くて、リラックスできた。倭国で旅をしている間は、川で水浴びをすることが多かっただけに、確かにこれは癒された。
    レーテーが湯の中でゆったりしていると、誰かが声をかけてきた。
    「お背中をお流し致します」
    「うん、ありがとう......」
    侍女の誰かが来たのだろうと思い、湯から上がると、そこに居たのはエルアーだった。
    「あなただったの......そっか、ここの侍女になったのだものね」
    「はい、レーテー様」と、エルアーは言った。「おかげさまで、レーテー様付きの侍女として、こちらでご厄介になっております」
    「あら、私の専属なの?」
    「はい」
    「そう!......それじゃ」
    と、レーテーは浴場椅子に座った。「先に髪を洗ってくれる?」
    「はい、畏まりました」
    レーテーがそのまま待っていると、少しして、シャンプーのついたエルアーの手がレーテーの頭に伸びた。頭皮を優しくマッサージする指が、とても気持ちよく感じた。
    「上手いのね、エルアー。とても気持ちいいわァ」
    「恐れ入ります」
    「もうちょっと上の方もやってくれる?」
    「はい......」
    背の低いエルアーは、身を乗り出すようにしてレーテーの頭頂部分をマッサージした。その時、レーテーの背中にエルアーの胸が当たった。――さっきまでは服を着ていたはずだったが......。
    レーテーは振り返って、それを確認した。「あなたも脱いだの?」
    「はい......この方がお世話をし易いと思いましたので」
    「そうだろうけど、主人の湯殿の世話をする侍女は、服を着ているのが礼儀なのよ」
    「え!? あっ、失礼を......」
    エルアーが恥ずかしさで真っ赤になってしまったのが可愛くて、レーテーは微笑んで見せた。
    「いいわ、私にだけは許してあげる。でも、他の女神の侍女になるようなことがあったら、気を付けてね」
    その後、レーテーはエルアーに体も洗ってもらった。初めは背中だけにするつもりだったが、エルアーが「よろしかったら前の方も」と言うので、遠慮なくやってもらったのだった。なにしろ、エルアーとはすでに全裸を見せ合った仲である(エルアーの恐怖の記憶を消した時に)。
    エルアーは、レーテーの胸を大事そうに洗いながら、言った。
    「前にお見かけした時より、豊かにおなりになりましたね」
    「やっぱりそう見える? 女の胸ってね、愛する人に触れてもらう度に成長するものらしいのよ」
    「愛する人?」
    「ええ。倭国に恋人がいるのよ、私。その人と一緒に旅をしているの」
    「そうなんですか......どんな、殿方なのですか?」
    「殿方の格好をしているけど、女性よ。とても勇ましい、けれど優しい方なのよ」
    「そう......ですか」
    エルアーはレーテーの胸から腹の方へと洗い布を滑らした。その時、エルアーの指先がレーテーの乳首を泡の下で弾いた。
    思わずレーテーが声を漏らした......それを聞き、エルアーはもう一度同じことをした。
    「あっ、もう!」と、レーテーはその手を掴んで、笑って見せた。「おふざけはダメ。ちゃんと洗って!」
    「すみません......」
    冗談のようにして誤魔化したが――レーテーはこの時、エルアーが自分に特別な感情を抱いていることに気付いた。
    翌日は、アルゴス社殿の女神が総出で、最果てにある混沌神カオスの居城へ新年の挨拶に行った。混沌神カオスはヘーラーの祖母ガイアが"姉"として慕っている神であるが、実はオリュンポス神界で最初に生まれた両性神だった。
    そこで、レーテー達はエリスの実母ニュクスと初めて顔を合わせた。
    ニュクスは自身の髪を翼に変化させる術を持っており、その力はニュクスの血を引いている者なら誰でも出来るはずだからと、先ずはエイレイテュイアの一人っ子であり実はエリスの息子である恋神エロースに、背中の翼を髪に変える術を教えてあげた。このおかげで、眠る時は背中の羽を傷つけないようにうつ伏せで眠っていたエロースが、仰向けでぐっすりと眠れるようになったのである。これを見ていたエリスの末子アーテーが、自分も空を飛べるようになりたいからと、髪の毛を翼に変える術を伝授してもらい、さらにエロースに空を飛ぶ技術を教えてもらっているうちに、レーテーもこっそりニュクスからその術を教わったのだった。

    「ああ、だから先刻、君の背中に翼が見えたんだ。空を飛んで帰って来たんだね」
    タケルはまだ、レーテーを組み敷いたまま話を聞いていた。
    「はい、そういうことです......」
    「それで? その後そのエルアーとはどうなったの?」
    「ええっと......今日のことなんだけど......」

    レーテーが倭国に戻ると聞いて、エルアーは旅支度として3着のキトン(ギリシアの民族衣装)を差し出した。
    「私がお造り致しました。どうぞお持ちください」
    「まあ......本当に器用ねェ......」
    レーテーはその内の一着を体の前に合わせてみた。サイズもぴったりで、色合いもレーテーに似合っていた。
    「だけど、これは持っていかれないわ。向こうでは倭人に化けて生活しているから、ギリシアの服は着られないのよ」
    「そうなのですか......残念です」
    エルアーはそういうと、レーテーに差し出したキトンをギュッと抱きしめた。それを見たレーテーは可哀想に思えて、
    「私のために作ってくれたのよね? サイズもぴったりだし、色と柄も私の好みだわ」
    「はい......糸を紡ぎ、染めるところから始めました。そうして、レーテー様のお帰りを今か今かとお待ち申し上げておりました」
    「そうだったの......ごめんなさいね。ではこれは、私が次に帰って来たときに着させてもらうわね」
    「レーテー様!」
    エルアーは必死にレーテーにしがみ付いてきた。そして、レーテーの胸の谷間に口づけをして、言った。
    「私、レーテー様のことが好きです! ずっと、ずっとお傍に居たい!」
    「エルアー......」
    「お願いです! 私も連れて行ってください!」
    エルアーがひた向きな瞳をレーテーに向けて来る。それがとても愛しく思えたが、レーテーは受け入れてやることはできなかった。
    なぜなら、自分にはタケルがいる。
    だが、そう言って拒絶してしまうと、きっとこの子は死んでしまう。ただでさえ辛い目にあって、それを克服する為にアルゴス社殿に来たのである。エルアーはまだ、その克服の途中段階にいる。そんな時に、また辛い目に合わせるわけにはいかなかった。
    「エルアー......私は、高天原の天照さまからのご依頼で、倭国で勤めを果たしているのよ。だから、そのお勤めが終わるまでは、あなたを倭国に連れて行くわけにはいかないわ」
    「お勤め?」
    「そうよ。倭国の英雄・倭建命を庇護すること......それが私の勤めなの。だから、それが済むまで、ここで待っていて」

    「そう......わたしとのことを"お勤め"だと言い訳して、逃げてきたの......」
    「他に言いようがなかったのよ......」
    「あのさ、レーテー......ひな鳥の習性って知ってる?」
    「ひな鳥......の、習性?」
    「ひな鳥ってね、卵から孵(かえ)って最初に見たものを母鳥だと思うんだって......君がその子の治療をした時、まさにその現象が起きたわけだよね」
    「ああ......はい、そうです。だから私も、やり過ぎちゃった、って思ったわ」
    「だよね。でも、その時はその治療法が最も適した治療法だった。だからしょうがない......うん、これはしょうがない事だわ」
    タケルは自分に言い聞かせるように「しょうがない」を繰り返した。
    「分かったよ、レーテー。その娘、君の側女(そばめ)にしておやりよ」
    「え? でも......」
    「その子は君じゃないと駄目だ......君以外、その子を受け止めてあげられる人はいない」
    「それは......そうなんだけど......」
    「それに、君もその子のことを憎からず思ってる。そうでしょ?」
    そう言われてしまうと、反論が出来ない。
    レーテーの戸惑いを察したタケルは、レーテーの上に覆いかぶさって、キスマークの付いた胸の谷間に、熱い口づけを与えた。
    「あっ! タケル......」
    「でも、君の本気はわたしだけだ」と、タケルは言うと、レーテーの唇にもキスをした。「あくまでその娘に許すのは"お情け"だけ。本当の伴侶はわたしだ。いいな?」
    「もちろんよ!......ありがとう、許してくれて」
    「わたしも、その娘と同じ苦しみを味わった。だから、邪険にはしたくない」
    「タケル......」
    レーテーからもタケルにキスして、言った。「私、あなたのそうゆうところ、大好きよ」
    後にタケルもオリュンポスに迎えられて、レーテーと一緒に、侍女として一歩引いた立場のエルアーとも暮らすようになるのだが、この三角関係が案外うまくいっているのは、すでに別の物語で語った通りである。

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