サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。
-
from: エリスさん
2014年09月05日 11時45分54秒
icon
白鳥伝説異聞・30
上総へは海を渡って行こう、ということになって、船を調達するため、タケルたちは「走水(はしりみず)の海」の傍で一泊することになった。
船は無事に調達することができ、明日の朝には出航できると、キビノタケヒコはそのことを報告する為にタケルの宿所に入った。すると、中には元の姿に戻ったレーテーしかいなかった。
「タケルなら厠(かわや)へ行っているわ。すぐに戻るでしょうから、ここで待っていたら」
と、レーテーが言うので、
「はい、お邪魔させていただきます」
と、タケヒコは正座をした。「しかし、オトタチバナ様。そのお姿に戻られていて良かったのですか」
「もうこの時刻なら、誰も訪ねて来ないと思ったのよ。それに、もし誰かに見られても、その者の記憶を消せばいいことだから」
「ああ、あの時わたしにしようとしていたのは......」
相模で火に囲まれたとき、咳き込みながらもレーテーがしようとしていたことに、タケヒコも察することが出来た。
「オトタチバナ様は、フタヂノイリヒメ様の難産を緩和させたと聞いておりますが......」
「あら、そんな噂がたっているの?」
「違うのですか?」
「当たらずも遠からじだけど」
「では、わたしの体を治すことは可能でしょうか?」
「あなたの?」
タケヒコの体は、幼少期に事故に遭い、生殖器にダメージを負った結果、体の成長が遅れ声変わりもせず、何より性的本能に体が一切反応しなくなっていたのである。
「ごめんなさい、残念だけど......私がフタヂ様に施したのは、苦しみを緩和する為に眠らせただけで、医学的知識は何もないのよ。だから、私ではあなたを助けてあげられないわ」
「そうですか......いえ、わたしも駄目でもともとで聞いてみたのです。お気になさらないでください」
「ええ......でも、私の遠縁に名医がいるの」
レーテーは医術の神・アポローンを思い出していた。母・エリスとは仲が悪かったと言われているが、祖母・ヘーラーの侍女をしているシニアポネーの実父であるから、その伝手を頼れば話をすることは可能かもしれない。
「私がこの旅を終えて、実家に帰ることになったら、その人を頼ることが出来るかもしれないわ」
「かなり気弱なご返答のように受け取れますが......」
「うん......実は疎遠な遠縁なの」
「なるほど。では、あまり期待しないで待っております」
「ごめんなさいね」
「いいえ! わたしこそ無理なお願いをいたしまして」
タケルが戻って来たのは、そんな時だった。
「タケヒコ、待たせたか?」
「いいえ、タケル様。船のことでお伺いしたのですが......」
タケヒコは船の報告をすると、野営地へ帰って行った。タケルはそれを気配で察してから、素に戻って言った。
「タケヒコは自分の体のことを気にしていたのね」
「タケル、立ち聞きしてたの?」
「ええ。帰ってきたら、なんか深刻そうな話をしていたから、入りづらくて」
「まあ、そうよね......」
「聞いた話だけど、タケヒコはあの体のせいで、好きになった女性から冷たくあしらわれたことがあるそうなの」
「それじゃ、気にするようになるわよ」
「そうね、無理ないわ......いい人なんだけどなァ」
「ホントね」
「その遠縁って人、本当に頼れるの?」
「う~ん......微妙なところだけど......タケヒコの為だから、何とか頼んでみるわ」
「ありがとう、私からも頼むわ」
タケルはそう言うと、寝床に潜り込んだ。「明日は早いから、もう寝ましょう」
「うん......今夜は、してくれないの?」
「船旅は体力を使うそうだから、ちゃんと寝た方がいいわよ。ホラ、君も」
タケルは寝床の自分の隣をポンポンッと叩いて、レーテーに入るように促した。
レーテーは仕方なく寝床に入った。すると、タケルが抱き寄せてくれて、熱いキスをくれた。
「お休み。続きは海を越えてからね」
「うん......お休みなさい」
レーテーは仕方なく眠ることにした......。-
サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。 - 0
-
サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。 - 0
icon拍手者リスト
-
コメント: 全0件