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from: エリスさん
2015年07月17日 12時06分08秒
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悠久の時をあなたと・11
その日、ガイアは何かに呼ばれている気がして、岩山を歩いていた。
草木もまばらにしか生えていない岩山である。木の一本でもあれば、その木霊(こだま)が呼んでいるのかと予想もつくが、それすらない場所である。ガイアは警戒しながらも、未知なるものへの関心に心を躍らせてもいた。
やがて、しばらく歩いていると、山の頂上についた。すると、自分を呼んでいる声がますます大きくなった。
そこには、黒光りする岩が一つ落ちていた。
それを拾え! と、声は言っていた。
ガイアがその岩を手にすると、聞こえていた声が止んだ。
「これは......」
ガイアはその岩に異様な力を感じた。
一方その頃、レイアーは庭園でクロノスと会っていた。
クロノスは野菜畑の世話をしながら、なるべくレイアーを見ないようにしていた。そして、レイアーの身体から発せられる百合の花に似た香りを嗅ぐたびに、駆け寄って抱きしめたいのを必死に堪えていた。
「しばしのお暇をいただきたいのです」
レイアーがそう言うと、クロノスは胸が締め付けられるような痛みを感じた。
「わたしと別れたいと言うのか?」
「違います!」
と、レイアーはつい口走ってしまい、手で口を覆った。そして気持ちを落ち着かせてから手をどけて、言った。
「本当に、しばらくの間だけお暇をいただきたいのです。しばらく、一人になりたいのです」
「一人に? 母上の元にも行かず?」
「......はい」
クロノスはレイアーの言葉の端々から、彼女の本心を感じた。それは決して自分への裏切りではなく、ましてや自分に飽きたわけでもない。我が子を喰らうという残虐無比なことをした自分に対して、レイアーは憐れみこそすれ、憎む気持ちは微塵もないのだ。それでも自分から離れようと言うのなら、それは余程の事情なのである。
「分かった......君の好きにするといいよ」
クロノスはそう言うと、スコップやカマの入ったバケツを手に立ち上がった。
「身を寄せるところが決まったら......そうだな、プロンテースとステロペースにだけは知らせてやってくれ。心配するだろうから」
クロノスがそのまま行ってしまおうとすると、レイアーは追いかけて、彼の背を抱き留めた。
「お願い! 最後にもう一度! あなたの温もりに触れさせて!」
レイアーはクロノスを振り向かせると、彼の肩にしがみ付いた。
耐えられずに、クロノスもレイアーの唇にキスをした。
何度も何度も唇が引き合い、呼吸が乱れてきても、二人は互いの欲望を堪えられなかった。そして、レイアーが自ら肩留めを外して服を脱ごうとすると、その手をクロノスが止めた。
「それだけは......それだけは駄目だッ」
「クロノス............」
クロノスはレイアーから離れると、言った。
「元気で......せめて、わたしから離れている間は、心安らかでいてくれ」
「......ええ、クロノス。あなたもお健(すこ)やかでいて......」
クロノスが見えなくなるまで、涙ぐんでいたレイアーだったが、意を決して涙を拭うと、居城の出口へと向かった。するとそこには、プロンテースとステロペースがいて、彼らが作った空飛ぶ乗り物も用意されていた。
「ウホ、ウホホ......」
プロンテースが「母上に呼ばれたので、途中まで送ります」と言うので、
「ありがとう。ちょうど私もお母様にご挨拶がしたかったから、一緒に乗せて行って」
と、レイアーは乗り物に乗り込んだ。プロンテース達が作った乗り物とは、今で言えば気球だった。ただ、籠は上下に二つ連なっていた。というのも、上の籠には熱気と冷気を操りながら運転するプロンテース達が乗り、下の籠にお客さんを乗せるためである。プロンテース達と一緒に他の人も乗せてしまうと、二人の能力で火傷や凍傷を負わせてしまう危険があるからだった。
気球でしばしの空中旅行を楽しんだ一行は、思ったよりも早く最果ての地に着いた。
「ごめんね、二人とも。実は私の目的地もここだったの。クロノスには私がお母様のところに居るっていうのは、内緒にしておいてね」
「ウホホ(心得た)!」と、二人は返事をした。
そこへガイアが現れた。
「いらっしゃい、レイアー。キュクロープスの二人も良く来てくれました」
ガイアの表情の険しさから、レイアーは言い知れぬ不安を感じた。
ガイアはいったい、何のためにプロンテースとステロペースを呼んだのだろうか......?-
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