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神話読書会〜女神さまがみてる〜

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  • from: エリスさん

    2016年01月15日 01時58分56秒

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    あなたと巡り合うために

    太陽神アポローンが愛娘の屋敷を訪ねた時、その愛娘は名目上の伯母(本当は実の母)のもとへ行っていた。
    「姉上のところか......」
    それじゃ仕方ないかと、アポローンは孫たちと一緒に遊びながら待つことにした。しかし男の子たちは活発に動き回るので、流石にスポーツ万能のアポローンでも息が上がってしまう。
    ベンチで座っていると、そこへ10歳になる女の子が近寄って来た。
    「ご機嫌よう、おじい様」
    その子はコローニスと言った。先程まで長女のエデュウミテミスと一緒に本を読んでいたのだった。
    「今日は何を読んでいたのだ? コローニス」
    「恋物語よ、おじい様。少女がある男の人に一目惚れしてしまうのだけど、なんとその人は生き別れになっていた実の父親だったの!」
    「......あまり、いい作品を読んでいないね、コローニス」
    自分の実体験から、そんな内容の本をこの子たちの母親であるシニアポネーが置いておくはずがない。と、なれば、コローニス自身がこの本を買って来たのだろうか?
    するとコローニスは言った。「お母様と一緒にアルゴス社殿に行った時、レーテー様がいらなくなった本を下さったの。そんなに変な本かしら?」
    「レーテーか......流石にエリスの娘だな」
    アポローンはいろいろとあって、エリス女神のことを良く思ってはいなかった。
    「酷いことをおっしゃらないで、おじい様。レーテー様は善意で私たちに御本を下されたのよ」
    「......まあ、そうだな。センスはともかく、そなた達に親切にしてくれたことは、有難く思うよ。今度わたしからも礼を言っておこう」
    その言葉に満足したコローニスは、アポローンに抱きついて、その頬にキスをした。
    「おじい様、大好き!」
    アポローンは面食らっていたが、それを見ていたカッサンドラ―は面白そうに笑って、言った。
    「あらあら。コローニスはおしゃまさんね」
    「あら、だって伯母様」と、コローニスはアポローンに抱きついたまま言った。「大好きな人にはキスをするものなのでしょ?」
    「そう、相手が恋人ならね。でも、今あなたがしがみ付いている方は、あなたの何なのかしら?」
    「今は祖父よ、確かにね」
    するとコローニスはアポローンから離れて、しっかりとカッサンドラ―を見据えて言った。
    「でもいつか、おじい様の恋人に相応しい女になって見せるわ」
    「そう......」と、カッサンドラ―は微笑んだ。「ならば、もっといろいろな物を学ばなければなりませんね。太陽神の妻に相応しい教養を」
    「分かったわ、伯母様。勉強に戻るわ」
    コローニスはそう言うと、アポローンにニコッとしてから、勉強部屋へ戻って行った。
    後に残されたアポローンはまだ呆気にとられていて、カッサンドラ―に唇にキスをされて正気に戻った。
    「今のは......どう解釈すればいいのだ?」
    アポローンの疑問に、カッサンドラ―は、
    「あの子が、かつてあなたの妻だったコローニス姫の生まれ変わりであることは、すでに見抜いておいででしょう?」
    「ああ、見抜いてはいたが......」
    「前世で非業の死を遂げた彼女は、次こそはあなたと永遠に結ばれたくて、あなたの初恋にして最愛の人・アルテミス様の孫として生まれ変わってきたのです」
    「そなた......どこまで知っている」
    「あなたに予言の力を消された、あの時まで見ていたすべてです。だからこそ私は、あなたのお孫たちの家庭教師になる決心をしたのです。私が育てれば、いつか予言が成就されても、私はそのお方に嫉妬を覚えなくて済むでしょう?」
    「カッサンドラ―......」
    アポローンが済まなそうな表情をするので、カッサンドラ―はニコッと笑いかけながら、彼の両手を取った。
    「でもその日までは、私を一番に愛してくださいね」
    「ああ、約束するよ」
    二人は見つめ合い、そのままキスをしようとしたが......誰かの視線に気付いて振り返った。
    小さい孫たちが、期待に胸をわくわくさせながら二人を見上げていた。
    「もう、あなた達ったら!」
    カッサンドラ―は照れ笑いをしながら、子供たちを負い飛ばすのだった。

    そしてそれから7年後。
    17歳になったコローニスは、堂々と両親の前でアポローンにプロポーズをした。常日頃の言動からコローニスが真剣にアポローンに恋していると気付いていたケレーンとシニアポネーは、心情としては祖父と孫で結婚させるなど、どうかと思ってはみたものの、神族であれば近親婚は認められている。何よりも娘がこんなにも真剣にアポローンへの思いを現しているのである。親として祝福してやるべきだと考えた。
    「君様(きみさま)、我が娘を妃に貰っていただけますでしょうか?」
    ケレーンの言葉に、
    「そなた達が認めてくれるのなら」
    と、アポローンは受け入れたのだった。
    こうしてコローニスはアポローンの妃となり、姫御子を出産した。その子はカナーニスと名付けられ、後に人間界に転生した片桐枝実子こと女神エリスの監視役兼師匠として、日高佳奈子として人間界に降臨したのだった。

    FINE

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