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神話読書会〜女神さまがみてる〜

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  • from: エリスさん

    2016年03月18日 02時12分16秒

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    2016誕生日特別企画「桜色の乙女」・3

    とりあえず、郁子は拾ってきた浴衣と帯を、その桜子と言う少女に着せてあげた。すると桜子は郁子に対してもニッコリと笑って、郁子に抱きついてきた。
    その様子を見て、郁子は郁に言った。
    「まるで猫の子のようなお嬢様ですね」
    「ああ、そうね」と、郁は言った。「あなたは猫を飼っているから、余計にそう思うのかもしれないわね」
    「確かに、この甘え方は雌猫のようだが......」と、エリスは言った。「この子は、知能が遅れているのか?」
    その言葉に郁は頷いた。「とは申しましても、普通の知的障害とは違います。この子は物語が止まってしまったことにより、自我の成長も止まってしまったのです」
    物語が止まる――つまり、御祖である淮莉須部琉がその物語の続きを書かずに放って置いている状態のことだが、普通ならこの場合、物語の住人達は筆者の制約のないところで自由奔放に生きていられるものである。それが桜子の場合は出来ないということは、筆者が存在自体を忘れていると言うことである。
    「確か、姉様の――というか、私たちの物語の最終回は、姉様が男の子を出産して、産後の肥立ちが悪くて他界する......となってますが、その時の男の子は元気にご成長されてますか?」
    郁子が言うと、郁は苦笑いをした。
    「その男の子、あなたは赤ん坊の時しか見ていないのではない? 成長した姿を見た事は一度もないでしょ?......つまり、そうゆうことよ」
    「え!? それでは......」
    その男の子が桜子??......しかし、先刻まで裸だった桜子は、エリスが欲情するほど完璧な女体だった。
    「生まれた時は確かに男の子だった。でも幾日もしないうちに女の子の体になっていて、またある時には両性具有になっていたり、何度も姿を変えて、そして最終的に女の子で止まったけど、同時に知能の成長も止まってしまった」
    「つまり、こうゆう事か?」と、エリスは言った。「御祖がその子の設定をことあるごとに変えたあげく、先を書くのを止めてしまったので、その子は知能が止まったまま体だけ成長したと」
    「はい、エリス様」
    「だったらどうして、御祖にご意見申し上げないのです!」と、郁子は言った。「御祖に現状を報告すれば、この子の知能が止まったままにならずに済んだでしょうに」
    「それもそうなんだけど......」と、郁は微笑み、郁子から桜子を離して、自分の腕の中へ納めた。
    「知能は遅れていても、この子は人一倍素直で愛らしい、清らかな魂を持っているわ。そんな子を、まるで花を愛でるように育てるのも一興かと思って......」
    「なるほど、良い趣味をしている」と、エリスが笑顔で言うと、
    「何が良い趣味ですか!」
    と、郁子が般若の形相を見せた。「花のように愛でるとか、そう言ってこの子を俗世間から隔離していたようですが、そんなことは許されていい事ではありません!! そもそも、この子は知能が止まっているために、自分自身を守ることも知らない。おかげでエリス様に純潔を奪われそうになってるんですよ!!」
    「人聞きの悪いことを申すな、乾殿」と、エリスは言った。「少々、花の蜜を吸っただけではないか」
    「エリス様もエリス様です! 簡単に他の子に手を出さないでください! お后様がいるのに!!」
    郁子があまりにも怒るので、桜子は怖がって郁の後ろに隠れた。
    「アヤ、そのくらいにして。桜子が怯えているわ」
    そう言われてしまうと、まだ言い足りない気分だったが、郁子も黙るしかなかった。
    なので、代わりにエリスが提案した。
    「ここは一つ、御祖にご相談に行こうではないか」
    「賛成です、エリス様」と、郁子は言った。「姉様、行きましょう。この子を普通の女の子にしていただくのです」
    すると郁はしばらく考えたが、
    「......そうね。そろそろ潮時かしら」
    と、御祖の元へ行くことを了承した。
    郁は桜子をお姫様だっこした。「一緒に来てくれる? アヤ」
    「ええ、姉様」
    「私も行こう」と、エリスは片桐枝実子に戻りながら付いてきた。「それにしても、どうしてここにいたのでしょうね?」
    「主人(藤村郁彦)がね、私が仕事でいない時に、桜子と話をしたそうなの。私が桜の花が好きだから、桜子って名前をつけたことや、隣町である乾の町には、とても綺麗な桜の園があるって......」
    「それで、ここへ一人で来てしまったと......お嬢様は隔離されているわけではないのですか?」と、郁子が聞くと、
    「特に鍵とかは掛けていないわ。それでも、この子が屋敷から出ることはなかったんだけど。今日はどうゆうわけか、ここまで一人で来ちゃったのね」
    郁の言葉に桜子はニコッと笑って、
    「さくら、だいすき!」と、ますます郁に抱きついた。
    なので郁子は思った――「桜の花が大好き」と言ったのか、それとも、「さくら(自分のこと)はママが大好き」と言ったからこそ抱きついたのか。
    『知能がつけば、もっと自分の思いを表現することができるわ。姉様の子供なんだから、文才のある子に育つはず』
    ともかく、彼女らは御祖の住む居城へと向かったのだった。

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