小学校では、すべての教科を教える構えで自分を鍛えなければならない。だからといってどれもこれも手をつけようとするとしなければならないことが多く、いくら時間があっても足りない。
　これでは前に進むことができない。だから、教科書会社が出している指導書に頼って、なんとか指導書をこなそうとする。本来ならば、じっくりと教材研究をして、子どもたちに合った内容と指導で授業に臨みたいところだがそれができないと思いながら毎日を過ごしているのではないだろうか。これではなかなか自分の資質を上げることはできない。
　そこで、欲張らないで、１つの教科を自分の得意分野として極められるように努力をしたい。
　子どもたちが考えを進めていく流れは、問題解決の過程を通るように授業は仕組まれている。だから、１つの教科を極めることは、他の教科にも通じることが多い。内容の配列や１時間の授業の仕組み方を１つの教科を通して追求していく。そして、1時間の授業の展開に合わせた学習活動に必要な指導方法を磨き、子どもを鍛える。子どもを鍛えようとすると、繰り返しの練習が必要となる。ここで問題となるのが、繰り返しをするにも１つの教科では時間が足りないということになる。そこで、他の教科をうまく利用することになる。
　例えば、聞く・話す姿勢作りは、どの教科においても必要な能力であり、１つの教科を極めるためにも他の教科で繰り返し何度でも指導することで身につけさせることができる。また、１つの活動から次の活動に移るための約束事はどの教科にも必要である。（この約束がないと「はい、やめなさい。。それでは次は・・・。」と教師が指示をしないと次の活動に移ることができない。）教科の特性によって約束事は違ってくるが、どの教科にもそういう約束を作ることで、繰り返し指導することができる。例えば、みんなの前に立ったら活動を止めて教師を見るとか、この合図や音が聞こえたら次の活動に移るとかどの教科にも用意しておくことができる。また、グループ活動やペア活動の仕方についてもどの教科でも使えるので、これも約束を作り、繰り返し指導することができる。（グループ活動では、誰から話始めるとか、話を聞き終わったら次は何をするのかという約束を作っておく。）
　このように１つの教科を極めるためにも他の教科を利用すれば、学習方法を子どもが身につけ、指導の効率があがる。
　また、１つの教科を極めると、本質が見えるようになり、他の教科もそれぞれの教科の本質から見ようとするようになる。ここまでくると教科書会社が出している指導書の読み取り方も違ってくる。ただ、書いてあることを書いてあるようにしようとすることはなくなり、指導書を参考にして授業を仕組むことができるようになる。
　これができるようになるには、ある程度の年月が必要となる。まさに授業の質を上げるための努力の連続だ。目の前の子どもを育てることが目的だから、指導書の通りにならないからといって子どもの能力の問題だと決め付けてはいけない。うまく活用できるだけの能力が教師にないと考えたい。授業に必要な学び方を身につけさせる努力なしに、能力を育てることはできない。教え込みの授業は、まさにこの努力が足りないと考えたい。教師がよくしゃべる授業は、きっとこの努力が少ない授業になっている。子どもが主体に動けば、教師の全体へのしゃべりは授業の半分以下になる。このように自分の専門を磨く努力は授業を磨き、子どもを育てることになる。自分の専門教科ならば、教科書会社の指導書に頼らず、自分で教科書を作る程の構えを持ちたい。