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from: 謎のみっしょんすくーるさん
2007/10/31 18:51:44
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10月31日水曜日
3度目はLong good-bye
神戸忠雄
第3章 2度目のgood-bye
(十六)
39万7千5百円。貯めておいた稼ぎの金額である。あと1日働くと,目標の40万円を越える。そんな気持ちからか,例のお姉ちゃんがいる飲み屋に出向いてしまった。あんな出来事があって以来,がむしゃらに働いた私は,正直,もういいやという感じであった。とにかく酒が飲みたい,それだけであった。
送迎のマイクロバスが飲み屋の前に到着し,他の職人と同様,無造作に席を立ち,バスを降りた。暖簾をくぐろうとしたとき,一瞬躊躇ったが,もういいや,という感情の方が強くなり,とにかく店に入っていった。気分的にだけかも知れなかったが,多少,鼓動は早く高まっていた。
店に入った私は,カウンタに座り,ジョッキのビールを頼んだ。
「久しぶりですね」そんな聞き覚えの強い声が聞こえた。そう,例のお姉ちゃんであった。お姉ちゃんは,他の客と同様,何もなかったかのように私に接してきた。そうされることにより,私も鼓動が通常のスピードに戻り,高まりも治まった。
「明日,山を下ります」そんな私の言葉に,店のおばあちゃんとおばちゃんに,社交辞令のような頑張ってください的な挨拶をしてくれた。もちろん,お姉ちゃんもだ。完全に落ち着きを取り戻した私は,普段のペースでジョッキのビールを呑んだ。
私はジョッキのビールを4杯呑み,千円札を2枚出して店を出た。そして店の前に待機していたマイクロバスに乗り込もうとした。その時である,お姉ちゃんが駆け寄ってきて,私になにやら手渡そうとした。私は何気なく手に取った。それはお姉ちゃんの名前が書いてある名刺であった。
「ありがとう」私は,精一杯の返事をした。辛いとか,寂しいとかではなく,ただ単に,女性から物をもらったことが嬉しかっただけであった。それだけではあったが,とにかく言葉に詰まり,返答が出来なかったのであった。
私は,マイクロバスのタラップをお姉ちゃんの方を観ながら上った。お姉ちゃんは,お辞儀をしたままであった。これでいいんだよな,そんな自問を投げかけながら,バスの窓からお姉ちゃんを眺めていた。
私は,最後と決めた仕事に出ていた。もちろん,23時開始の深夜である。いつも通りの仕事を,いつも通りにこなせた。ただ,これで最後かと思えば,何となくスコップが軽く感じられた。
*=*=*=*=*
今日はハロウィン。
ちゃんと,死者と出逢えましたか?
私は。。。
いつまでも,とは思いつつ,ハロウィンになるとね。
ちょうどこの時期だったし。。。
辛いね。
今日は,少し感傷的な謎のみっしょんすくーるでした。
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