ミトコンドリアは細胞内に沢山住んでいるけど、1つ1つが遺伝子を持っていて、独自に有性生殖も分裂増殖もできるって前に書いたけど、単独にそれぞれ遺伝子を持っているってことが癌やらいろんな病気の諸悪の根源だって疑われた様なのね。当時、国立がんセンターにいてはった林純一という先生が、ミトコンドリアの遺伝子は突然変異を起こし易いけれども癌化には至らない、ってことを実験的にも論理的にも証明したわ。がんセンターでのテーマがミトコンドリア癌仮説を確立せよということだったので、風当たりが相当にきつかったそうよ。林先生はこれだけでは終わらず、先天性疾患や遺伝病にも例外はあるけど殆どシロという結論を出したの。そして、裸の遺伝子を持つ最も変異しやすいミトコンドリアが何故シロなのかというメカニズムもしっかり提唱しての。このメカニズムがまたまたきわめてミステリアスなのよね。ミトコンドリアは遺伝子を持っているから有性生殖をするんだけど、勿論父方からは精子の形で、母方に卵子へ突入する訳だけど、どういうわけか生殖すると精子の遺伝子はみんな死んじゃって、卵子の遺伝子しか残らないんだって。そんな訳で一方的に母方の遺伝子のミトコンドリアばっかりが増えて行って、父方のミトコンドリアは消滅して、遺伝子変異やなんかで多様化したミトコンドリアは自然に純粋種に戻るんだって。これが癌厳正にならない理由の１つらしいのね。こんな訳で、ミトコンドリアのもとをたどると人間のルーツに行きつけるんだって。何でも今盛んに内戦している南スーダン辺りにイブがいたんだそうよ。そうしてもう1つ優れているのはダメージを受けたミトコンドリアに対して、他の多くのミトコンドリアが結合して修復しちゃうシステムを持ってるなんて言ってたわ。凄いダメージコントロールの仕組みね。そんな優れた機能から、ミトコンドリアは人間が死んでも、あるいは宿主である細胞が死んでも数か月は生きているんだって。不老不死の存在だなんてことも言われているわ。こんなことから怖いＳＦチックな話が生まれてくるのね。パラサイトイブだとかミトコンドリアの解放だとか。