「裕子はメタル蛇を無視し、ネクタイを取り、シャツを脱ぎ、スカートを脱いだわ。そして1分ほど瞑想して、ブルックナーの終楽章の冒頭のフレーズを口ずさんだわ。すると濃密なエネルギーが体全体から噴出していくのが感じられたわ。でもそのエネルギーは暗黒頭脳のエネルギー塊に吸い取られていってしまうの。これでいいのか迷っていると、また昌夫さんからメッセージが来たわ。“裕子が今発散しているエネルギーで邪悪の根源を中和しているんだ。いわばブラックホールとホワイトホールがミートしたようなもんさ。このミートで、凄まじい光が全宇宙に満ち溢れるだろう。何時中和が完了するか計り知れないが、裕子には、途中で挫けることなく、最後まで全うしてもらいたい。これが全宇宙が救われる最後の戦いなのだ。”」

「メタルの蛇は次々に出てきたわ。そして真っ赤なべろを出して、裕子の太腿やあそこを嘗め回すの。どうも裕子のフォース源を探っているようなの。裕子も自分がどれだけのパワーを持っているのか知らないけど、多分相手も知らないから迂闊には攻撃できないのよね。」

「その時、昌夫さんからメッセージが入ったわ。“裕子、いよいよ最後の決戦だ。ブルックナーの第7交響楽の終楽章を口ずさんだら、君のフォースは全開になるはずだ。裕子のシャツとスカートはフォースのシールド効果を持っているから、これらを脱ぎ捨てて暗黒頭脳のエネルギー塊に立ちはだかってくれ！”」

「空間バイクから前へ投げ出された時、裕子は何かに激突すると思って目を瞑ったの。でも空間の密度が大きく、粘っているから、空中でシャボン玉みたいに止まったわ。そして立ってみると、まるで地面があるように立てるの。5分くらい経ったころ、この雲の中から蛇の頭見たいのが出てきたと思ったら、裕子目がけて頭を近づけてくるの。金属で出来てるように思えるんだけど、目もあるし、べろもあって不気味なやつ。いったい何者？頭脳中枢のボディガード？それとも侵入者検知用のプローブ？どっちにしても気色悪いわ。」

「空間バイクはマッハ5くらい出るんだけど、飛んでるうちにどんどん減速してくるように感じたわ。周りの空気がどんどん濃くなっているみたい。そのうち、粘ついてるように感じられるようになったわ。だけど何時までたっても頭脳中枢らしい物が現れてこないの。。壮大なコンピューターのお城か、巨大な脳みそみたいなものを想像していたのに、そういうものがぜんぜん見当たらないの。そんな時、昌夫さんからテレパシーのメッセージがとどいたわ。どうもこの粘ついた空間が暗黒頭脳そのものらしいんだって。エネルギー場が幾重にも縮重し、統一されてこんなブラックホールみたいな状態になってなってるんだって。最初は仮説でしかなかったんだけど、裕子がそれを証明したんだって。そんな時、空間バイクが急に止まり、裕子は思いっきり前方へ投げ出されてしまったの。」

「裕子いってくるわ。絶対負けないから！」

そして，1人で空間バイクに跨り，暗黒頭脳中枢へ向かって飛翔した。裕子の運命やいかに？

「この宇宙大戦を終焉させるためには，裕子の存在そのもの以外に活路は見出せないんだ。成功する保証は全くないが，裕子の機能を使わないで勝てる見通しは皆無に等しい。本当は無理をせずに無事に帰ってこいといいたいところだけど，全宇宙の希望のために成功するまで死んではいけない！としか言いようがない。酷いようだけど，よろしく頼む。もし裕子が窮地に立ったなら，おいらは身の分解を省みず，裕子の救出に飛び込むつもりだ。おいらはずっとここで待っている。」
「分ってるわ。裕子の出生の秘密だもんね。だけど，還ってこれたら普通の女の子になれるのかな？」
「勿論だとも。俺の嫁さんにだってなれる。」
「ありがとう。でも，それは還ってきたら考えるわ。」

「ここから先は超人でないと耐えられない世界なんだ。おいらのような常人が踏み込むとたちどころに分解してしまう。すまんがこれから先は１人で行ってくれ，俺は何時までもここで裕子の無事な帰還を待つ。」

「じゃあ行くわよ！」

「ＯＫ！」

そして，２人はガブジゲラード星の地底空間を飛翔し，暗黒の深淵へ向かって旅立った。

「この下のほうに確か駐機場があったはずだ。そこで空間バイクを１機失敬することにしよう。」
「ＯＫ！ 操縦は裕子がするわ。思いっきりぶっ飛ばして，今までのストレスを全部発散させよっと。」
「相変わらず跳ね返りだね。だけど途中で事故ったらいままでの努力が水の泡だぞ。」
「分かってるって。もう，心配性なんだから。」

「覗き窓からの将軍の眼力が薄れたようだわ。」
「奴も眠ることがあるんだろう。いいチャンスかもしれないな。それではそろりとまいろうか。」
「将軍が孤独好きで助かるわね。裕子たちはテレポーションができるって知らないのね。」
「どこへ飛び出すか分からんけどね。」
「ところで裕子，また脚が伸びたんじゃないか？」
「可能性はあるわ。こんな低重力地帯で跳ね回ってたんだから。
それにしても昌男さんはあんまり伸びないのね。」
「ほっといてくれ！」