｢結局マドリードではほとんど自由時間の無いまま，裕子は昌夫さんと連れ立ってマドリードからミラノへイベリア航空で飛びました。マドリードの空港は荒野のど真ん中にあるだだっ広いものです。対して広くもないイベリア半島の首都近くにこんな広大な荒野が広がっているなんて信じられない。｣

｢ディナーは結構盛り上がったわ。一緒にお仕事していた仲間たちが開いてくれたの。みんないい人たち。紅１点のシェリーって人は身長は裕子と同じくらいだけど，とってもスレンダーなの。手足もとっても細かったわ。脚なんかは裕子の半分くらいかも。８時半から始まって終ったのが11時半，とっても楽しかったわ。お互い母国語でない英語で話し合ってるから，逆に分りやすいのね。でもこれは裕子の送別会でもあったの。せっかくマドリードに馴染んできたし，やっと自由時間が取れると思ったのに，研究チーフになっている昌夫さんは結果を持って明日ミラノへ跳ぶンだって。裕子も一緒についていくことにしたわ。残念だけど。この夜は月がとってもきれいだった。｣

｢裕子はその後，暮れなずむマドリードの市街をちょっと散歩したの。暮れなずむって言ったってもう８時過ぎなのよ。夜は何時までも明るいわ。だけど朝は７時でも真夜中みたい。おきるのがたーいへん。マンションは日本のつくりとよく似てるわ。だけど，外の仕切りを見ると日本よりは３倍ほど広そうね。ではそろそろディナーに行って来るわ。｣

｢今日は夕方６時半にホテルに戻れたので，早速眼下に見えたスタジアムまで歩いてみたわ。やっぱり予想的中，レアルマドリードのフランチャイズ，サンチャゴスタジアムだったわ。外から見るだけだけど，スッゴク大きな建物だったわ。そろそろ７時半になるんだけど，まだまだ日本の５時くらいの明るさなの。この周辺，まだ人は少なかったけど，今夜は試合があるんだって。でも夜の９時から始まるのよ。残念ながら，今日は８時半からディナーに誘われていたから，試合を見ることはできなかったわ。いずれにしても今から入場券を手に入れようと思ったら３０倍から１００倍のプレミアムを覚悟しなければダメらしいいと聞いたけど。近くにレアルマドリード専門のお店があるんだけど，これも８時にならないとオープンしないんだって。ディナーから帰ってテレビをつけて見たら，１１時半頃だったけど，まだ試合をやっていたわ。当たり前の話だけど，スペイン語でまくし立てられるので，さっぱり分らないわ。｣

｢裕子の部屋にはもう一箇所ベランダがあるのよ。真下には古い大きな教会が見えるわ。少し右にターンすると，大きな重箱みたいな競技場が見えたの。ひょっとして，あのベッカム様がいてたレアル・マドリードのフランチャイズかな，なんか胸がときめくわ。今日早めに仕事から解放されたらちょっと見てこようっと。｣

｢裕子はやっとホテルの周囲を見回す余裕ができました。ホテルの１３階にある部屋にはベランダが付いていて，先ずはそこからの眺望を紹介します。この斜めに伸びた奇妙なビルは六本木ヒルズみたいな集合オフィスなんだって。市街の大通りを跨いでシンメトリーに造られてるのよ。１０年くらい前にできたらしいんだけど，その隣に更にそれぞれ近代彫刻みたいなお脆い格好をした高層ビルがいっぱい建築中だったわ。流石にガウディのお国ね。
ここ，スペインもこの夏は40℃を越える猛暑続きだったらしいけど，今では18℃くらいでとても爽やかよ。ベランダにいると，気持ちのいいそよ風がふいてるわ。でも時々この風さんはエッチになるの。｣

｢裕子はせっかくマドリードにいるのに，全然プライベートな時間が取れないの。いつもホテルに帰るのが０時過ぎなのよ。そんな訳で，取り敢えず暫く生活しているホテルの部屋を紹介するわ。マドリードの街中にあることは確かなんだけど，どこにあるのか未だに知らないの。ユーロビルディングっていう名前なの。部屋は結構ゴージャスなんだけど，ただ寝に帰るだけなんで，なんか勿体無いわ。
スペインの女性は素敵な人が多いよ。アメリカみたいな下半身デブや全身でぶには殆どお目にかからないわ。今日も１８５ｃｍくらい身長のあるスレンダーなタイトミニスーツ姿のアンナっていうヒトと一緒にお仕事したの。スッゴク脚も長かったわ。その長い脚を組んで，プカーッとタバコを吸うのよ。裕子圧倒されちゃった。こういう素敵な女性も目立つけど，昌夫さんより背の低い短足男性も沢山いるわ。要するに，３σが日本より相当に広いのね。｣

「マドリードへ来てから、いつも大勢の人と一緒にいるので、裕子もなかなか自由に外出できないの。基調報告はもうちょっと待ってね。」

「皆さんお元気ですか。まだ新しい画像が使えないけど、一応マドリードには滞在してるのよ。エビデンスが無くっちゃあ信用してもらえないかもね。昌夫さんの後について行ったら、撮影禁止のラボに閉じ込められちゃった。裕子も便利に使われてるのよ。ＬＣ/ＭＳ/ＭＳって装置知ってるかなあ。裕子も何のことかさっぱりだけど、器用だねって煽てられて、調子に乗ってオペレートしてるの。そのうち外に出られたらまた報告するね。じゃあまたね。アディオス･アミーゴ。」

「パリのシャルルドゴール空港で乗り継いで、ようやくマドリードに着いたのが夜の10時。昌夫さんはもう仕事をしていて、ディナーとやらから戻ってこないの。明日からもずっと、会議と実験とディナーの毎日なんだって。いったい何しにこんないいとこまで来てるのかしらね。明日から裕子は何をしたらいいのか今晩ヨーク考えよーっと。とりあえず無事に着いたことだけ皆さんにお知らせします。」