スペースバイクのスピードがどんどん上がっていったの。そして、スピードメーターは光速の98％ぐらいに達したわ。そして突然何かのエネルギーバリアーに激突して裕子は訳の分からないどろどろの空間に投げ出されたわ。裕子の体は自分でも全く信じられないんだけれど、丈夫にできているのね。これじゃあ裕介さんは恐らくばらばらになっちゃたと思うわ。何とか立ち上がってみると、なんか雲の上にいてるみたいで、目の前には渦を巻いた暗黒の空洞がぽっかりと空いているの。これをみんなはブラックホールと呼んでいるのね。何でもかんでも吸い込んで、それこそ暗黒エネルギー粒子に『分解しちゃうのね。裕子もしっかり踏ん張ってないとすぐにも吸い込まれそう。すると突然蛇のような化け物が裕子をめがけて襲ってきたわ。そしてこいつらも裕子のスカートの中を嘗め回すのよ。なんだか吸い込まれた物質の分解されきらないで成仏できなかったコークがひも理論に従って化け物になったみたい。

「裕介さん、それ本気で言ってるの。」
「ああ、裕子には気の毒だけど、裕子と俺との体の構造が違うんだ。jここまで環境エネルギーが濃縮せててくると、普通の分でできている俺は、クウォークまで一気に分解してしまうんだ。裕子は特別な原子核でできているから、場が統一されても生きていけるんだ。これから先は統一場の世界に入るから、裕子でないと行けないんだ。だから裕子は最強のリーサルウェアポンとなるわけだ。本人は何にも知らないだろうけど。」
「そんな話し始めて聞くわ。いままで勝手に裕子を敵地に送り込んで、勝手に遊ばせていたわけではないのね。ここに落としどころがあったのね。」
「そういうことだ。あとはこの宇宙の運命は裕子1人にかかっている。」
「そんで、裕子はこれから何をすればいいの？」
「このまま中心まで行ってくれ。そうすれば自動的に裕子は覚醒するようになっている。」
「なんか訳が分からないけど、裕子が唯一のメシアだってことなら行くっきゃないのね。」
「そうだ、裕子の頑張りが失敗すれば、宇宙は自食作用によって巨大なブラックホールに落ち込み、完全に消滅する。」
「それじゃあ行ってくるわね。行けば何とかなるのね。それ以上の責任は持てないよ。」

ここまで2人3脚で逃げてきたのは大変なタスクだったわ。でもよく考えてみたら、ミステリアンたちはもう裕子たちの存在を気にしてる余裕がなかったんだから、さっさと紐を解いてしまえばよかったのよね。でも、裕介さんは結構この体制が気に入っていたみたいで、自分からさっさと外そうとは言わなかったわ。何でなの？脚が裕子よりずっと短いことが強調されてるのに、不思議な感覚ね。それはそうと、折角手に入れたスペースバイクを操縦しようと思ったらやっぱし紐を解かなきゃ無理なので、やっと解いたってところなの。裕介さんは運動音痴なので、必然的に裕子が操縦することになったんだけど、裕子も初めてなのであんまり自信はなかったの。でも結果こうなったわけ。さてどこへ行くか？裕子はその先の指令を全然聞いてなかったので、裕介さん任せなんだけど。何でも暗黒エネルギーのホワイトホールになっている、このカプジゲラード星の中心に向かって2人で突入するんだって。裕介さんは情報を小出しにする悪い癖があるのね。さっさと全貌を行ってくれたらいいのにっ、て言ったら、そうすると裕子はきっとひるむから、小出しにするんだって。ぞ～としてきたわ。じゃあ発信させますか。ミステリアンは相当脚が短かったと見えて、このミステリアン使用のバイクでは脚をだらんとさせてなくてはならないのがしんどいは。

「ミステリアンたちが周章狼狽を始めたようよ。」
「じゃあそろそろ全力で逃げるとするか。」
「でもこんな2人3脚じゃあよく走れないよ。何せ長さが大きく違う脚を股の付け根まで縛られちゃったんだから。」
「なせば成るってやつさ。取り敢えず必死で頑張ってみよう。」
「短い脚の裕介さんに合わせるからできるだけ大股で走ってね。」
「短い脚は余分やろ！何とかスペースバイクを探してみよう。さあ行くぞ！」

「さあ、もうそろそろ彼らも宇宙連合軍の包囲網が完成して、セキュリティーシステムにもほころびが生じつつあることを認識しつつある筈だ。」
「そうすると、もう裕子の脚と戯れてる余裕なんてなくなるのね。この時が来るまでずいぶんと長いこと待ったような気がするわ。」
「ほんまにご苦労さんやったな。これも裕子のたぶらかし作戦の大成果だったんだ。」
「裕子にはさっぱり意味が分からないんだけどね。今でもただ疲れただけみたいに感じてるのよ。」
「俺らに目が届かなくなったのを見定めて、このミステリアンの指令室からそっと抜け出すことにしよう。歩きにくいかもしれないけど、暫くはこのまんまでいたほうが怪しまれないだろう。」
「裕子は嫌だけど、裕介さんはこのほうがいいんじゃないの。」
「図星かな」

「裕子の受けた命令はもっとシビアーだった筈よ。こんな裕子の脚に戯れているような状態でいいの。向がだらけていれば、こっちもいっしょにだらけてしまいそう。本当にこんなんで宇宙大戦が終結できるの？」「これでいいんだよ。ここはミステリアン国家の中でも暗黒エネルギーを支配する中枢に近いから、逆に緊張感がなくってだらけているんだろう。第２次世界大戦のときも、ノルマンディで惨憺たる敗北を喫している最中に、ドイツのパリ防衛司令部では社交界に明け暮れていたという話も聞いたし、中枢部というのは平和ボケしていて結構こんなもんかもしれないよ。でももう時間の問題で、大包囲網が完成して前週からの侵攻が始まれば、彼らは裕子と遊んでなんかいられなくなる筈だ。その時を見計らって、更に内部へ突入することにしよう。」「裕子には良くわかんないけど、インテリジェンスの少佐殿の命令に従うわ。」