新規登録がまだの方

下の[新規登録]ボタンを押してコミュニティに登録してください。

登録がお済みの方はこちら

コミュ二ティポイントのご案内

詳しく見る

恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜

恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜>掲示板

公開 メンバー数:6人

チャットに入る

サークル内の発言を検索する

サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。

閉じる

from: エリスさん

2010年11月26日 14時20分57秒

icon

夢のまたユメ・1

いつだって気づくのが遅い。素敵な人だな、気が合う人だな――そう思ってても、すぐには恋愛に結びつかない。だから一目惚れなんかありはしない。一緒に過ごして


 いつだって気づくのが遅い。
 素敵な人だな、気が合う人だな――そう思ってても、すぐには恋愛に結びつかない。だから一目惚れなんかありはしない。
 一緒に過ごして、人となりを十分理解してから、その人に恋をしていると気づくから、だいだいこうゆうパターンが待っている。
 「俺、好きな子ができたんで、告白しようと思うんですけど、どうしたらいいでしょう……」
 告白する前に振られる……。
 それでも、面倒見の良いお姉さんを気取って、こんなことを答えたりする。
 「大丈夫よ。あんたなら絶対にうまくいくわ。私が保証してあげる」
 そうして、助言通り相手はめでたく好きな子と両想いになってしまうのだ。


 「というわけで、また失恋しました、私」
 宝生百合香(ほうしょう ゆりか)はパソコンに向かって、そう打ち込んだ。すると、パソコンの画面が一段上がって、新しいメッセージが表示された。
 〔またって言っても、男性に失恋したのは今の職場に入って二度目でしょ? あとはほとんど女の子に対して淡ァい恋心抱いただけじゃない〕
 「いやまあ、そうなんだけど」と百合香は呟いてから、またパソコンに打ち込んだ。「でも、女の子に振られるより、男に振られた方がダメージ強いのよ」
 百合香はチャットをやっていたのだ。話し相手は百合香が参加しているコミュニティーサイトで知り合ったネット仲間である。
 〔前の女の子の時にも思ったんだけど、どうして思い切って告白しないの? 告白もしないで、相手に彼氏ができた、振られた!って愚痴るぐらいなら、当たって砕けちゃえば、いっそスッキリするよ、ユリアスさん〕
 ユリアスというのが百合香のコミュニティーサイトでのハンドルネームである。
 「そんな難しいよ。大概の女の子はノーマルなのよ。告白したところで、アラフォーの女が受け入れられる確率は低すぎよ。それだったら、頼りにされるお姉さんとして仲良く接してくれた方のが幸せだわ……相手が女の子の場合はね」
 〔で、今回は男の子だったわけだ。それなのに告白しなかったのは、また自分の年齢のこと気にしちゃった?〕
 「それもあるけど、相手のことを好きだって気づいたのが本当につい最近だったから、告白する間もなく、向こうから恋愛相談を受けちゃったのよね」
 〔間が悪かったわけだ。でも、ユリアスさんの文章からは、そんなに落ち込んでるようには感じられないんだけど(^。^)y-.。o○
  もしかして、勝てそうな相手なの?〕
 「どうだろ。確かに、世間一般的に見れば“チャラい”見た目で、良いイメージは持たれないタイプなんだけど……。でも、私よりずっと若いし、美人だし」
 それから少し間があって、返事がきた。
 〔ユリアスさん、見た目の魅力なんてどうにでも誤魔化せるんだよ。結局、人間は中身で勝負なんだからね〕
 「ありがとう、ルーシーさん」
 それだけ打って、少し考え事をしていたら、向こうから書き込みがあった。
 〔それより、来週からの連載って、もう内容決まった?〕
 百合香が言葉に詰まったので、話題を変えてくれたようだった。
 「うん。二年前に見た初夢をベースにして作ろうと思うんだけど」
 〔二年前の初夢って、確か、『現代版源氏物語』?〕
 「そう。あのままじゃリアリティーないけど、アレンジすれば結構面白いのが書けると思うんだ」
 〔へえ、楽しみ(^_^)v〕
 百合香はコミュニティーサイトで小説ブログの連載をしていた。もちろんこれは趣味の範囲をちょっと超えたぐらいのもので、収入にはならない。だから普段は映画館でパートで働いていた。同僚はみな二十代の若い子ばかりで、何人か三十代前半はいるが、三十九歳という所謂アラフォー世代は百合香だけだった。それでもルーシーが言うとおり、同僚たちとの関係は良好で、最年長ということもあって常に頼られる存在だった。ちなみに入った当初から自分がバイ・セクシャルだということは親しくなった人たちに話している。初めは珍しがられたが、今では(勤務四年目)誰も気にしていないようだった。

  • サークルで活動するには参加が必要です。
    「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
    ※参加を制限しているサークルもあります。

    閉じる

  • 68
  • サークルで活動するには参加が必要です。
    「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
    ※参加を制限しているサークルもあります。

    閉じる

  • 0

icon拍手者リスト

from: エリスさん

2010年12月03日 13時51分58秒

icon

「夢のまたユメ・2」


        第1章 現実の中の日常


 「10番シアターへ、清掃時間残り2分です」
 百合香がトランシーバーで連絡を入れると、向こうから返事が戻ってくる。
 「了解です!」
 その返事を聞き、百合香はマイクを手にして、ロビーにいるお客にアナウンスをした。
 「お客様にご案内申し上げます。ご入場は上映開始時刻の約10分前でございます。入場開始のアナウンスまで……」
 いましばらくお待ちくださいませ、と言おうとしているところに、子供を連れた三十代ぐらいの女性が百合香にチケットを見せながら駆け寄ってくる。そのチケットの内容を確認した百合香は、
 「恐れ入ります、お客様。こちらはただいま清掃中でございまして、もうしばらくお待ちください」
 「え? まだなの?」
 「はい、恐れ入ります」
 と、説明している間にも、他の客が入ってこようとする。
 「恐れ入ります、お客様。こちらはまだ清掃中でございまして……」
 どうしてアナウンスを聞いてくれないんだか……と、百合香は心の中で落胆する。ちゃんとアナウンスを聞いていれば、まだ入れる時間ではないことぐらい分かるはずなのだが。
 そのうちに、10番シアターの清掃スタッフからシーバー連絡が入る。
 「入場口へ、10番清掃終了です!」
 「了解です」と百合香が言うと、奥の方から箒を持って走ってきた男性スタッフが、その箒を通路の脇に置き、百合香の前に立った。
 「OKです、リリィさん」
 「よし、行くよ!」と彼に言った百合香は、シーバーのスイッチを押して言った。「10番入場します。手の空いたフロアスタッフからもぎり(入場口でチケットの半券を切る係)のヘルプお願いします」
 そして百合香はアナウンス用のマイクにスイッチを入れた。
 「お客様にご案内申し上げます」
 その言葉を発するとすぐに、客が百合香の方に集まってくる。そして差し出されたチケットを、代わりに百合香の前に立った男性スタッフが受け取ってもぎりを開始した。
 「大変長らくお待たせいたしました。13時50分より10番シアターで上映の、《ハリーポッターと死の秘宝 Part.1 日本語吹替版》の入場を開始いたします……」
 この後もアナウンスで「入場に対しての注意事項」などをしゃべるのだが、大概聞いてもらえないものだった。なにしろ、300人以上の客がロビーに溢れかえっていて、早く映画が見たい一心で、みなシアターへ急いでいるのである。
 ロビーの客が全員シアターに入るのは、おおよそ8分後ぐらいである。
 「映写室お願いします。10番シアター《ハリポタ吹替》上映開始2分前です」
 百合香がシーバー連絡を入れたころ、ようやくロビーが静まり返った。
 その場にいたフロアスタッフは、みんなしてため息をついた。
 「半端ねェ、ハリポタ……」
 「これで3Dだったら死亡フラグ立ってるよ」
 「いや、3Dじゃなくても、もうすでに……」
 と百合香は言いながら、ハンカチタオルで汗をぬぐった。「アリガトネ、ナミ。助かった」
 「いえいえ、お互い様」と、百合香の前に立っていた“ナミ”こと池波優典(いけなみ ゆうすけ)は言った。「あのお客の数じゃ、誰かリリィさんの前に立ってないとアナウンスできないでしょ? もぎりで手がふさがっちゃって」
 そうだね、と言う代わりに百合香は微笑んでみせた。
 そんな時、奥の方から別の男性スタッフがやってきた。
 「リリィ! ちょっと早いけどアナウンス交代する?」
 「そうね、10分早いけど交代しとこうか。メガネは溜まってるの? ジョージ」
 ジョージと呼ばれた彼――林田穣次(はやしだ じょうじ)は即座に言った。
 「オウ、あと100個ぐらい」
 「ああ、がんばって拭かないとね(-_-;)」
 ここで言うメガネというのは3Dメガネである。百合香が勤務するこの映画館「シネマ・ファンタジア」も一年半前から3D映画を導入したのである。
 「あっ、じゃあ俺も」
 と優典が言うと、百合香は、
 「あんたは今のうちに男性用トイレのチェックしておいで。ミクちゃん、女性用お願いね。沢口さん、一緒にメガネふきましょう」
 「ハーイ」と、それぞれの心情によった返事が返ってくる中、百合香は奥へと歩き出した。
 アナウンスボックスのある入口から、奥へ入っていくと、10個のシアターが並んでいる。その中でそれぞれの作品が上映されていた。その途中の廊下には、近日公開される映画のポスターや、段ボール製の巨大模型(POP)が並んでいる。それらを見ながらゆっくりと帰る客もいれば、急がないと上映が始まってしまうのか走って行く子供もいる。そういう人たちに「いらっしゃいませ」と一礼をしながら百合香と沢口さん(百合香よりは年下だか先輩の女性スタッフ)が歩いていると、真ん中のシアターの前から怒鳴り声が聞こえた。
 「うだうだ言ってないで黙って貸しゃあいいんだよ!」
 見るからに品の悪い男性客に、新人の女性スタッフが絡まれていた。

  • サークルで活動するには参加が必要です。
    「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
    ※参加を制限しているサークルもあります。

    閉じる

  • サークルで活動するには参加が必要です。
    「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
    ※参加を制限しているサークルもあります。

    閉じる

  • 0

icon拍手者リスト