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from: エリスさん
2007年06月25日 21時14分33秒
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「恋愛小説を書いている最中に、ブルーな私 に関連して」
足の具合が悪いのに無理して仕事をしていたので、明日からの三連休は養生に専念しようかと思ってます。
ゆえにネットカフェには行きません。
なので「露ひかる紫陽花」は、今週は休載しようかと……具合が良くなったら外出するかもしれませんが、まだわかりません。
その代わりと言ってはなんですが、「神話読書会〜女神さまがみてる〜」の方でもちょこっと恋愛小説は書いているので、良かったらそちらを読んで待っていてください。
アドレスは ↓↓↓
http://www.c-player.com/ac48901/message
「神話読書会」のメンバーをこっちに誘導したら、怒るかな?icon
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from: エリスさん
2007年06月20日 16時29分38秒
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「露ひかる紫陽花の想い出・29」
次の日、彰の中将(しょう の ちゅうじょう)から手紙が届いた。
彩(あや)は手習いの手を休めて、あやめの茎に結ばれたその手紙を取って、開いた。
紫色のあやめ……彰もいろいろと考えていると見える。
彩は読み終わると、クスッと笑った。
何か、と少将が聞くと、あんまり可愛くて、と彩は答える。
「お頼みしていた香(こう)を取りに参ります――ですって」
「は!?」
そんな頼み事、いつされたのだろう……と少将はここ数日を思い返してみる。彩と彰の間で交わされた約束を、少将が知らないなどと言うことはないのだが……全然覚えがない。
「考え込まなくていいわ。私も覚えがないもの。でも、あの方はいつでも私が用意してあるのを知っておいでなのよ」
彩が言うと、少将も納得した。
何しろ、彰は彩が調合した香しか使わない人なので、彩も作る時は常に多めにしておいて、彰の分を取っておくのである。
つまり、訪ねる口実だった。先日のことを謝りたいのだろうが、そうはっきりと言うのも気恥ずかしいから、適当な理由をつけたにすぎない。
「本当に仕様もない御方よね。すぐに後悔なさるくせに」(自分も相当に悪かったことを忘れている)
などと言いつつも、嬉しそうな表情をして、席の設えを言いつけ、自身は仕舞ってある香の壷を取りに行った。
これだからお二人の仲は長く続くんだわ、と少将でなくても思うだろう。恋人、と言うより、駄々っ子を母親があやしているようなものだ。
少将は女房の部屋へ行って何人か呼び寄せると、彰を迎えるための準備を始めた。
そのころ、西の対(乳母の尼君(めのと の あまぎみ)の住居)では、楓(かえで)と一緒に三郎が来ていた。
「寝殿へ行って来てもいいでしょ?」
三郎が言うと、諦めたように、
「ご迷惑がかからないようにね」
と、楓は言った。
三郎は回廊まで出ると沓(くつ)を履き、庭を突っ切って寝殿へ向かった。
「渡殿(西の対から寝殿、寝殿から東の対へ渡る廊下)を通って行けば良いのに、そんなに花の近くを歩きたいのかしらね」
尼君が言うと、
「単に走って行きたいんですよ」
と、楓は言った。「好きな人に逢うためなら仕方ないのかしら」
「本当に良かったこと、三郎殿に好いた女人ができて。でも私は彩をと願っていたのだけれどね」
「そんな、高嶺の花ですわ!? 彩の君にはもっと相応しい方がいるじゃないの」
「源氏の若君のこと? 無理よ、楓。我が家とは格が違うわ」
「でも姉様のご実家はあの若狭宮家(わかさのみやけ)なのよ。世が世なら、姉様も彩の君も内親王だったはずだわ」
尼君の祖父・若狭の宮は、二代前の帝との皇位をめぐる政争に巻き込まれて、擁立しようとした当時の左大臣ともども失脚させられたのである。以後、官職もないまま侘しい暮らしに入り、一族から女御を出したものの皇子が一人生まれただけで、立后も叶わずに終わった。そして今に至っている。
「あまり格だとか何だとかって考えないことよ、姉様。当人同士が幸福なら、それに勝るものはないわ。それより、少将の君ってどんな子なの?」
楓が言うので、尼君も気を取り直して少将のことを話し出した。
「亡くなった夫の家人に、兼重って人がいたのを覚えていて? あの人の子よ。妻をお産で亡くしたあと、一人で育てていたのだけど」
「確か、二年ぐらいして病気で突然亡くなって……ああ、あの子なの。少将、なんて呼ばれているから分からなかったわ」
「少将の呼び名は夫がつけたのよ。自分がそのころ近衛の少将だったから。彩にもっとも近しい間柄になってもらいたくて」
その願いは、見事に叶えられたと言える。icon
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from: エリスさん
2007年06月12日 15時03分06秒
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「露ひかる紫陽花の想い出・28」
「だから、だからこそ、あの方の人生を汚したくないのよ。……でも、おまえは違う。何の障害もなく人を好きになり、尽くすことができる」
彩は両手で少将の頬を包んだ――女の目から見ても可愛らしい。どんなことをしても守ってやりたくなる。彼女にはそんな魅力があることを彩は見抜いていた。
「おまえは幸福におなり。私にその姿を見せてね。それだけが私の、心の拠り所なの」
「……お嬢様……」
返す言葉がなくて躊躇している少将に、彩は微笑みかけてから手を離した。この時、少将の肩に指の先が触れて、湿っているのに気づく。
「着替えなくていいの?」
少将もようやく、着物が三郎の涙で濡れていることに気づいた。
彩はもう一度笑いかけてから、御簾の中へ一人で入っていった。
少将は、ゆっくりと自身の肩の辺りを撫でていった。
『素直な子なんだ、三郎殿って』
感情がすぐ表に出る。笑って、泣いて――隠すこともしないで。
「僕は直人――石上直人(いそのかみ の なおひと)」
自信に満ちた、堂々とした姿を見せるかと思えば、可愛いくらい子供っぽくて。
そんな人なら、なんの野心も打算もなく、自分を想ってくれるに違いない。
想って欲しい。
……誰にも聞こえないように、そっと呟いてみる。
「……直人……」icon
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