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恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜

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公開 メンバー数:6人

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  • from: エリスさん

    2007年10月24日 16時47分48秒

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    「露ひかる紫陽花の想い出・57」
     彩の評判を聞いて、言い寄ってきた公達がいた。
     帝のご要望で、月の宴の席で和琴を奏でたこともあった。
     立后宣旨の使者になったことなど、さまざまに思い出されるけれど、中でも強く記憶に刻まれたのは、彰に縁談が持ち上がってからだ。
     ある日、源氏の大臣が内裏の彩を訪ねてきた。
     「悪いが、人払いをしてくれないだろうか」
     大臣が彩と二人だけで話をしたがるからには、もしや……と、女房たちは初め、いい話だろうと想像していた。だから、彩の人払いに対しても、いそいそと他の部屋へ移動したのである。
     少将も他の女房たちと一緒に行こうとすると、外から誰かが声をかけてきた。
     「庭で散歩でもしない?」
     六位の蔵人(ろくい の くらうど)に昇進していた三郎だった。しばらくは彩からのお呼びもないだろうからと、少将は喜んで彼の誘いに乗った。
     初めは笑顔だった三郎――蔵人だったが、皆から離れて歩き出すと、だんだんと険しい顔つきに変わっていく……それを見て、少将も察しが付いてしまう。
     「源氏の大臣のお話、いいことではないの?」
     「うん……」
     蔵人は、木陰になるところまで来ると足を止め、少将に背を向けたまま話し出した。
     「女四の宮(おんな よん の みや)さまって、知ってる?」
     「最近“二品の宮(に ほん の みや)”に昇格なされた方ね。主上(帝)と同じく大后の宮(皇太后)様からお生まれになった。その方がどうかなさったの?」
     「彰の君様のところへ、降嫁が決まったんだ」
     「な!? なんですって!?」
     先帝であり、源氏の大臣の兄である〈後三条の院(ご さん じょう の いん)〉が、后腹の内親王・二品の宮の才能をこのまま埋もれさせたくないと考え、当時中納言に昇進していた彰に縁談を持ち込んだのである。

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  • from: エリスさん

    2007年10月19日 18時50分23秒

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    幸せのレシピにちなんで

    少し前に、フロア一の美女から、こんな話を聞いた。

     「家計を助けるためにも、お昼ご飯はコンビニ弁当やMacじゃなくて、手作り弁当にしたいって人がいるの。
     でもね、作るのが面倒臭いからって挫折しちゃったんですって」


     それはきっと学生アルバイターじゃなくて、フリーターの人だよね。
     学生さんなら親御さんがなんとかしてくれるだろうし。

     「エリスさん、その人のために作ってあげたら」
     「いくらくれる?」

     材料費はいただきますよ(~o~)


     まあ実際問題、人の分まで作ってる余裕はないので、フリーターの皆さんには他の手助けをいたしました。
     フロアスタッフなら誰でも手にすることができる場所に、私が書いたレシピ帳を置いときました。

     名付けて「簡単!手抜きレシピ」

     男の人でも簡単に作れる料理だけを載せときました。
     これからもちょこちょこ書き足しますので、フリーターの皆さんは参考にしてね(^.^)b

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  • from: エリスさん

    2007年10月19日 15時57分00秒

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    「露ひかる紫陽花の想い出・56」
          最   終   章


     「お嬢様が典侍(ないしのすけ)として内裏に上がられたのは、その年の秋でございましたね」
     彩の形見の藤色の表着を前にしながら、少将は独り言をつぶやいた――三条邸、東の対。
     尚侍(ないしのかみ)となった薫が内裏で左大将と結婚し、彼女を補佐する者が必要となったため、右大臣の働きがけで彩の典侍就任が決まったのは、彩が十八歳の秋のことだった。彩が内裏に住まうことになり、右大臣の選んでくれた大勢の女房のの中に少将や石楠花も加わって、今までにない華やかな世界に、彩は導かれていった。が、妬みや嫉みも少なからず負うことになるのである。
     「私に対する嫌がらせなど、お嬢様のに較べたら大したこともありませんでしたけど」
     彩の家柄や容貌がどの女官よりも劣ると言って、彩よりも下位の女官たちはだいぶ僻んだものだった。それでも、少しずつ彼女の人柄に触れて和らいでいき、彼女が典侍ほ辞すときには誰もが惜しむ存在になっていた。
     少将への嫌がらせはこれに較べると可愛いものである。彼女は容貌が可愛い上に性格もよく、仕事もてきぱきとこなし、誰よりも彩に信頼されているので、右大臣の世話で来た女房たちがやっかんできた。とは言っても、欠点の見つからない相手を直接悪く言うこともできず、そのネタは専ら夫の少尉のことになった。
     「典侍様の一番そばに居る女房の背の君(夫のこと)が、たかが正七位なんてね」
     という具合に。
     四条邸から来た女房だったら少尉がまだ十二歳でこれから出世できるのだと分かっているのだが、右大臣の世話で来た者たちはまさかそうとは思わず、少将が十七歳だから相手もそれぐらいか二十歳前後と決め込んで、それならば官位も五位かせめて六位があたりまえだと思っていたのだ。本人が昼間に少将を訪ねてきても「代わりに手紙を届けに来た弟かなにか」だと考えていたのである。
     石楠花たちも教えてやれば良いのに、本当のことが分かったときの彼女たちの驚きが見物だろうから、と逆に笑ってみていた――確かに、何もかも知った彼女たちの驚きといったらなかったが。
     「内裏にいた頃が一番お嬢様――いえ、檀那様が輝いていらしたのじゃないかと思いますわ。辛いことも多くありましたけど」
     彩が典侍になることが決まって、もう子供扱いはよしましょう、との乳母の尼君の言葉によって、それまで彩のことを「お嬢様」と呼んでいたが(父親が三位で母親が王族なのだから、本来なら「お姫様」でもいいのだが、源氏の邸に行儀見習いに上がっていたころ「源氏の姫君方と同等に呼ばれるわけにはいかないから」と彩が憚ったので、この呼び方が定着していた)、その日から広い意味のある「檀那様」と呼ぶようになった。だが、少将のような幼い頃からの女房たちはつい昔通り呼んでしまうことがあって、そのたびに笑いが起きていた。

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  • from: エリスさん

    2007年10月19日 15時19分53秒

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    「露ひかる紫陽花の想い出・55」
     彰は御簾を上げて中に入ってきた。
     自然な動きで彩が扇を広げ、顔を隠す。
     いつもならそんな彼女を諌める彰だったが、今夜は特別と、彼女の膝の上にいる佐音麿を抱き上げた。
     寝ぼけ眼で佐音麿が彼を見上げ「フニャ」と声をかけてくる。
     「こうゆうのも、いいものだ」
     彩が扇を少しだけ下げて、目元だけを見せて無言で問いかけてくる。
     「君とこうして、静かに過ごすのもいいものだ」
     彰がなぜ訪ねて来てくれたのかも分かって、彩はにっこりと微笑んだ。
     「ありがとうございます」
     軽い音をたてて、扇が閉じられた。


     「お月さま見る?」
     「うん、見る」
     肌着だけを羽織った少将は、足元を気にしながら歩いていき、御簾を巻き上げた。
     雲の無い美しい闇色の空に、優しく輝く黄金色の満月が、うっとりするぐらい風情ある見物だった。
     へえ、と三郎――左衛門の少尉は声をあげた。
     「こんなに綺麗だったんだ」
     「いやだ、あなた庭を歩いてここまで来たんでしょ? 見てこなかったの?」
     緊張していたため、それどころじゃなかった彼は、アハハ、と笑うしかなかった。
     少尉はうつ伏せになったまま、肘を立ててその手の上に顎を乗せ、足を時折バタバタさせながら、庭の方に腰掛けている少将を見ていた。
     この様子を見ている少将は、たった今まで大人の顔をしていたのに、どうしてこんなに可愛くなれるのかと不思議に思っていた。
     少尉の方も、普段は可愛くて少女っぽい彼女が、先刻、そして今もとても色っぽくなったので、びっくりしていた。彼女がいつもの愛らしい笑顔を見せてくれなかったら、ずっと不安でたまらなかったかもしれない。
     『女の人って、その時々で変わるもんなんだな』
     また一つ勉強になったかな? と少尉は無邪気に考える。
     「少将」
     「なァに? あなた」
     「照れちゃうな、その呼び方。三郎でいいよ。あのね、子供、何人ぐらい欲しい?」
     「何人産んでもらいたい?」
     「いっぱい欲しいな。僕さ、父様や母様みたいな生き方に憧れてるんだ」
     いっぱいの子供に囲まれて、夫婦仲良く、心穏やかに、過ぎた幸福を望まずに暮らせる日々。そんな両親ほ見て育った彼には、他に夢見るものなどないのかもしれない。
     「三郎って九人兄弟よね」
     「うん」
     「ちょっと九人は自信ないな。半分じゃだめ?」
     「う〜ん……いいや。その代わり僕に似た子供が欲しいな」
     「そうね、三郎に似た女の子ならきっと美人になると思う」
     「ああ、いいなァ。男ばっかりの中で育ったから、女の子も欲しいね」
     「まかせて、絶対女の子産んであげる」
     二人は、月の光が日の光で弱められるまで、楽しいおしゃべりを続けていた。
     そのまま現実となる夢を願いながら。


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  • from: エリスさん

    2007年10月19日 14時26分27秒

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    「Re:この頃の私」
    キター―――――――――――――――――――――――――!


     なにが来たかと言うと、私が通っていた女性専用メイドカフェが閉店して一ヶ月以上経った昨日の夜。
     その店長さんからメールがきました。


     「二日間だけ限定で、スウィートトリップを復活させます。
      ぜひいらしてくださいね」


     生きますとも
     いや、行きますとも!!

     だってね、おいしいフルーツティーを家でも飲めるように苦労したとは言っても、まだ3種類しか手に入れていないのよ。
     しかもしかもしかも! 家には優しくて愛らしいメイドさんはいないのよ!!!!! それが一番悲しかったの!

     「スイトリ、カムバーーーーーーーーーーーク!」

     と、叫びそうだった今日この頃に、振って沸いたこの話。

     まだこの「復活日」はシフト希望も出していないから、仕事の調節はいくらでもつけられるわ。

     そんなわけで、フロアスタッフ諸君!
     11月4日は私、休暇もらうか早く帰るかどっちかするんで、日曜日だけど、私が居ない分ガンバッテくれたまえ!

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  • from: エリスさん

    2007年10月10日 22時16分08秒

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    録画しておいた「ヒストリーX」を見て

     皆さんは「清少納言」を、どう読んでます?

     せいしょう、なごん

     って、読んでませんか?
     テレビやいろんなところで彼女の通称が読まれるとき、なぜか「せいしょう」で単語を切る。
     でも考えてみよう。そもそも彼女の通称は、

    清家の少納言の娘(もしくは妹)

     という意味合いがある。つまり「少納言」で一つの単語なのだから、「しょう」で切ってはいけないのだ。
     私がそれに気付いたのは高校生の時。
     それから私は、

     せい、しょうなごん

     と読むようにしています。

     くだらないことだったかな(^O^)

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  • from: エリスさん

    2007年10月10日 16時29分53秒

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    「露ひかる紫陽花の想い出・54」
     少将が待っている部屋からは、ほんのりとした明かりが見える。時折、風でゆらめくのが分かった。
     三郎は深く、ゆっくりと呼吸をした。
     「先ずは名前を呼ぶことからだ。いいかい、相手の魂に呼びかけるのだよ」
     左大将の言葉を思い出しながら、胸の近くで硬く拳を握り、気合を入れる。
     回廊へ上がり、御簾の端を掴む。
     そうっとずらしていく……その途端、風が入り込んで明かりが消えてしまった。
     それでも、三郎はひるまずに声をかけた。
     「少将……」
     返事はない――闇にまぎれて、少将は微笑んでいた。彼女も彩に諭されていたのだ。
     「年下だからと甘やかしては駄目よ。人並みに儀式も行えないようでは、殿方ではないわ」
     だから、ひたすら待つしかない。
     三郎は彰の言った言葉を思い出していた。
     「返事がなくても何度でも呼ぶ。弱気を見せるんじゃないぞ」
     ぎこちなく歩きながら、もう一度呼んでみた。
     「少将、どこにいるの?」
     なんとなく人のいる気配がある。――いるなら返事をしてくれればいいじゃないかッ、と三郎が怒りたくなるのも無理はない。
     『いったい何が気に入らないのさ』
     ちょっとムッとしながら考える。
     するとまた、あの二人の声が思い出される。
     「それから……これが一番肝心なことだ」
     左大将が先ず言うと、彰と声をそろえてこう言った。
     「本名で呼ぶんだぞ」
     『あ、そうか!?』
     コツン、と自分の頭を叩く。
     そのころには闇に目が慣れてきて、確かに少将のいる場所が見えてきた。彼は、静かに歩み寄り、彼女の前に腰を降ろした。
     「……八重姫……」
     フワッと彼の周りを甘い匂いが包む――彼女が両腕を差し伸べて、袖で相手をくるんでいた。
     「直人」
     互いの名を呼び合い、気持ちを確かめ合ったあとは、魂を同化させる儀式。
     ほんの少しだけ離れても、また唇が引かれ合う。
     何度も、何度も、繰り返し、繰り返して、互いの絆を結んでいく。
     「……八重姫……」
     彼は、彼女の左肩に顔を埋めてきた――かすかに、震えながら。
     「大丈夫よ、直人」
     包み込むように、彼女が抱きしめる。
     「怖いことなんかないよ、きっと」
     「うん……そうだね」
     二人はクスッと笑い合って………。

     寝殿の客間で、明かりが揺らめいていた。
     彼女は膝の上に佐音麿(さねまろ)を眠らせて、それを眺めながら、回廊に腰掛けている人に声をかけた。
     「あなたも心配性な方ね」
     ん? と返事をした彼は、御簾越しにつれない恋人を覗いた。
     「三郎殿が心配で、いらしたのでしょう? 彰の君様」
     「三郎……とは、もう呼べないよ、彩。元服し官位を頂いたのだから。これからは左衛門の少尉と呼ぶことだね」
     そうでした、と彩は静かに笑う。彰も笑い返すと、「それもあったのだけど」と先刻の質問に答えた。
     「同じ屋敷の中で身近な者が結婚すれば、いざ我も……と思うのではないかと、あてにして来たのさ」
     「またそのようなお戯れを」
     言われるだろうな、と思っていたことをその通りに言われて、彰は笑うしかなかった。
     「でも、嬉しいですわ。今宵は誰かに居てもらいたかったから」
     「やはり……寂しい?」
     「……どうしてかしら」
     彩はため息をついた。「あの娘にとって、幸せなことなのに」
     「それだけ、少将は君にとって特別な存在なのだ。どの女房よりも……いや、わたしよりも、身近にいた人だから」
     「おっしゃる通りかもしれませんわ。私って、意外と独占欲の強い女なのかも」
     笑っている声――なのに、どこか寂しそうに聞こえる。

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  • from: エリスさん

    2007年10月10日 15時49分04秒

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    「露ひかる紫陽花の想い出・53」



     一方、四条邸では乳母の尼君があれやこれやと皆を指揮し、余計に大わらわしていた。
     「ああ、その几帳は片付けてちょうだい。こちらの綺麗な方を立てておいて。それより、三日夜の餅(みかよ の もち。子孫繁栄を願って、結婚三日目の夜に餅を食べる風習があった)の仕度はできていて? 少将はちゃんと化粧(けそう)じてるのかしらねェ」
     指示を聞いている女房たちが可哀想になってくる。
     少将の婚儀は東の対の一室を借りて行われることになっている。彩は自ら、一人だけで少将の化粧の世話をしていた。
     「少将は薄めに化粧した方が可愛いわね。紅も淡く……はい、できたわよ」
     「お嬢様……」
     少将はそう言ったものの、言葉が続かなくて、目に涙が浮かんできた。
     「ああ、ほらほら」
     化粧が落ちないように、彩は手早く拭ってやる。
     「こんなおめでたい日に、涙は禁物よ。……本当に、いつかはこんな日が来るとは思っていたけれど……なんだか、惜しいような気もするわ」
     「お嬢様……」
     少将がまた泣き出しそうな顔をするので、彩はできるだけ笑顔を見せた。
     「幸福におなり、少将。私の分まで。おまえの笑顔をいつでも私に見せておくれ。それが私の幸福にもつながるのだからね」
     彩の言葉に、少将も笑顔を返しながら答える。
     「はい……幸福に、なります」
     そして、その夜。
     当時の婚儀は現代の結婚式とは違って、仰々しいことはしない。まず、花婿が花嫁のいる部屋の前まで行き、外から声をかける――「夜這い」の語源になった「呼ばふ」である。この時、花嫁が返事をして相手を招き入れれば結婚成立、なのだが。中には前もって訪ねて来ることも知らせず、呼ばうこともせずに、強盗のように押し入ってきて力ずくで花嫁を手に入れる男もいたので(それでも結婚は成立する。花嫁に傷がつくので家族や周りの者が認めてしまうのだ)、初めの方の儀式はあってないようなものだ。とにかく、一夜を過ごせば内縁の結婚。その後の三日夜の餅やお披露目が済めば正式な結婚となる。

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  • from: エリスさん

    2007年10月05日 15時15分54秒

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    「露ひかる紫陽花の想い出・52」




     そして、翌日。
     三郎は初めて髪を髷(まげ)に結い、烏帽子をかぶった。
     束帯姿もなかなか似合い、浅緑色の袍を着ていた――七位の色である。(当時は位によって着る色が分けられていた)
     石上三郎直人は今日より正七位左衛門の少尉(さえもん の しょうじょう)に任ぜられた。
     とは言っても、これはしばらくの間だけで、すぐにでも蔵人所(武官が兼任する文官職。天皇に近侍)に移らせるつもりで二人の大臣はいるらしい。
     元服式には、双方の父の代理で彰の中将と、桜の左大将も出席していた。
     「良かったな、三郎――いや、少尉。これで大人の仲間入りだ」
     彰が言うと、いいんでしょうか、と三郎は首を傾げた。
     「兄たちより上の官位で元服させていただいて」
     「だからと言ってひがむような狭量な兄弟ではないだろう」と、左大将は言った。「それに、これで満足されては困る。まだ下っ端の武官にすぎないのだからね。これからも精進を怠らないように」
     その言葉に、三郎は力強くうなずいた。
     「さてと……」
     彰はサッと音をたてて扇を開くと、口許に当てた。「今宵の覚悟はできてるかな?」
     「はい、昨日決心を固めました」
     『昨日?』
     何があったんだろう……と二人は思ったが、口にするのはやめておいた。無粋だから。
     「よし、それじゃ手順を確認しておこう。まず……」
     左大将が話し出すと、三郎は身を乗り出すようにして聞く体勢に入った。


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  • from: エリスさん

    2007年10月03日 19時24分59秒

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    この頃の私

    今日は久しぶりに◆◆君に会った。
    話の流れは忘れてしまったが、◆◆君の質問に対して、私はこう答えた。

     「今日は仕事帰りにお茶していこうか、それともまっすぐ帰ろうか、迷ってるのよ」

    ちなみにこの時は二人とも、レジのお金を数えてました。朝からパンフレット売場担当だった私の後を、◆◆君が引き継いだんですね――よくまあ数え間違えずに済んだものだ。

     「へえ。どこで?」
     「武●●茶房で」
     「ああ、和風喫茶の」
     「うん……最近、萌えがたりなくてさ」
     「萌え?……って、なんですか」
     「分かりやすく言えば〈癒し〉よ。あそこ、メイドコスチュームなんだ」
     「ああ!」
     「ゴメンね。兄妹そろってのオタクで」

    まあ、相手が◆◆君だから愚痴れたんだけど。
    私が通っていた秋葉原の女性専用メイドカフェが閉店して、早一ヵ月。
    美味しいフルーツティーを頂きながらメイドさんと会話を楽しんだ、あのひととき。それが失われてしまってから、私には癒しがなくなってしまったような気がする。

    とりあえず、美味しいフルーツティーだけはどうにか捜し出して、自宅で飲めるようになったけど。
    でも可愛いメイドさんは家にはいないよォ――!!

    結局、帰る時間が遅くなってしまったんで、武蔵野茶房には行かれませんでした(T_T)/~

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