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from: エリスさん
2007年12月21日 12時58分01秒
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「露ひかる紫陽花の想い出・66」
少将に手を引かれて、三の君――美倭子が入ってくる。
「本当の呼び名は〈彩霞の姫(さいか の ひめ)〉といいます。彩霞、この御方があなたのお父様ですよ」
「……父様? 伊予の伯母様に似ているみたい……ホントに私の父様なの?」
「おいで、わたしがおまえの父様だ」
彰が彩霞を抱きしめると、彩霞は衣に染み付いた香りに、わあ、と感嘆の声をあげた。
「母様の合わせた香の匂いだァ。父様ね、私の父様なのね」
すると、彩も言った。
「そうですよ、私の香を使えるのはここにいる三人だけ。私の最愛の人達だけが使えるのよ」
少将は、足音を殺しながら、庭の外に出ていた。
彩の香を使える最愛の人達……。
彩の口から出るまで気づきもしなかった。彩が今まで合わせた香が、彰と彩霞の手以外には絶対に渡らなかったことを。尼君や高明でさえ焚くことの許されなかった彩の香。それが、彼女の数少ない愛情表現だったのだ。
自分が割って入る隙間などない。
当たり前のことなのに、なぜ悔しいのか分からない。なぜ、これほどまでに自分が彩にのめり込んでいるのか。
気づかされたのは、その夜だった。
彩の具合が急に悪くなって、枕も上げられぬ重態になったのである。
治癒祈願の僧の読経が響く中、皆が彩を見守っていた。
彩は弱々しい声で、尼君に手を取られながら言った。
「お願い、母上。姫を……彩霞を彰の君様に託してね。二品の宮様は慈悲深いお方と聞くから、きっと……」
「彩、しっかりおし! 姫の母親はおまえよ、おまえなのよ!」
「母様ァ!」
彩霞の叫びに返すように、彩が優しく微笑み……握っていた手から、力が失せた。
彩の魂は、自分のために霊芝を捜し求めて山へ入っていた最愛の人――彰のもとへ翔けて行った。
皆が泣き叫ぶ中、少将はしばらく呆然としていた。今、目の前に起きたことが信じられないのだ。
『檀那様が……亡くなられた……?』icon
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from: エリスさん
2007年12月17日 19時55分15秒
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人のこと言えない
先日、恋する乙女ひーちゃんが、私にこう言った。
「×▼■さんの私服姿を見ちゃいました! 格好良かったんですよ」
――その私服姿、私も見たんだけど、正直なところを言わせてもらった。
「どこが?」
私の見た感じ、あれは実年齢より幼く見せてるだけで、格好よいとか言う次元じゃない。
恋は盲目だね。
ところが今日、予定外の残業をすることになった私は、いつもなら私の方が一時間早く帰るので絶対に見ることのない○○さんの私服姿を、見ちゃいました!
あっ、新鮮! 服のセンスもいい。ちょっと格好いい……。
ごめんよ、ひーちゃん。私も盲目だよ orz
でもね、×▼■さんの私服は本当に格好よくないから(大爆笑)-
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from: エリスさん
2007年12月14日 14時07分03秒
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「露ひかる紫陽花の想い出・65」
「先日、姉の薫が君を見舞ったそうだね。その時、信じられないものを見たと言っていたよ……彩、伊予の守(高明)が側室に生ませたという娘、三の君(三女)と呼ばれているその子は、我ら源氏の一族に良く似た容貌をしているそうだね」
彩は几帳の向こうで横たわりながら、顔を背けていた。
「薫の君様は勘違いなされたのでしょう。きっと、ご覧になったのは兄の正室、あなた様の二番目の姉君がお生みになった中の君(次女)ですわ」
「中の君は六歳。三の君は四歳ぐらいだろう。見間違うはずがないよ。……彩の君、もしやその子は……」
「薫の君様と同じことをおっしゃってはなりません!! ……もし、あなた様の御子だとしたら、その子は、俗世を捨てたこの尼の身から生まれたことになるのです。そのような醜聞! あの子のためにもあってはならぬのです!!」
「……それでなのか?」
何年もしないうちに任期が切れる伊予の守のもとへ身を寄せることにしたのは、都で子を産まないため。自分が三の君の母であることを隠すためにしたことだったのか――と、彰は考えた。
「なぜ、あの時……君がわたしを受け入れてくれたのか、その後で出家したのかは、わたしなりに考えて答えを出していたよ。おかげで、わたしは宮との夫婦生活におぞましさを感じずに済んでいる」
それどころか、宮が彩の内面にあまりにも似すぎていて、のめり込みそうで恐ろしくさえ思っている。彩はそれさえも気づいているのだろうか――寝返りを打って、彰のことを几帳越しに見つめていることが、気配で分かった。
「だが、そこまで見通していたとは……いや、わたしが至らなかったのだ。我らの縁は神仏でさえ断ち切れぬほどに強い。一夜さえあれば、子を授かるのは当たり前だったのに。君は、その子を唯一の慰めとして見ていたのだろうね」
「彰の君様……私は、三の君の母だとは言ってはおりませんよ」
「ああ、そうだったね」
長い沈黙が二人を包んでいた。
どんな想いが巡っていたのか、傍に控えていた少将も想像するには、あまりにも二人と接していた時間が長くて、纏まりきれない。二人の歴史を一番見ていたのは、誰でもない自分だったのかもしれないと、考えずにはいられなかった。
「今宵は内裏で宿直なのだよ。……もう、帰らないといけない」
彰は静かに立ち上がった。「また、訪ねてもいいかな」
「それまでには、和琴をお聞かせできるようにしておきましょう」
「楽しみにしているよ……早く、元気になっておくれ」
彰は部屋を出て行こうと歩き出したが、戸口のところで立ち止まり、少しだけ顔を戻した。
「わたしも変わったものだ……以前のわたしだったら、こんなにもあっさりと帰ったりしないのに。……もし、三の君がわたしの子なら、君が生んでくれたのなら、是非手元に置いておきたいと思ったのだ。せめてもの慰めに」
彩はゆっくりと起き上がり始めた。
「しかし、違うというものを連れて行くわけにはいかない。第一、その子の母親が可哀想だ……でも、一目ぐらい見てみたかったよ」
言葉が出掛かるのを、彩は胸を抑えて必死に堪えていた。――これでいい。美倭子のためにも事実は隠さなければならないのだから。
……だが。
「彰利様!!」
理性に情熱を押さえ込む力はなく、ついに彩は几帳の奥から姿を現した。
彰が書け戻ってきて、抱きしめる。
「三の君は――美倭子はあなた様の御子です!」
思わず涙が溢れてくる。
「良く……良く産んでくれた、刀自子」
「彰利様……」
彩が彰の諱(いみな)を口にしたのは、この時が初めてのことだった。icon
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from: エリスさん
2007年12月14日 13時39分51秒
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「露ひかる紫陽花の想い出・64」
二品の宮との婚儀を明日に控えて、彰は内裏の彩のもとを訪ねた。あまりにも人の気配がないのを彼も感じ取ったようだった。少将以外の女房は皆、四条邸へ帰るなり、賢所(かしこどころ)で泊まるなりしていたのである。
彩が待っている部屋の隣室で、少将は夫とともにいた。
「あなたは汚れませんわ、彰の君様」
彩の声が聞こえてくる。
「私がいるではありませんか」
「君が浄化してくれるの?」
彰の声が、彩の声がしたすぐそばから聞こえてくる。
「おっしゃったではありませんか。我等は既に魂が同化しているのだと。私が己の魂を浄化することが、即ち、あなた様を浄化すること。なにを恐れることがあるのです」
「……君の言うとおりだ。馬鹿だね、わたしは」
二人がより深く互いの魂を同化させたことは、隣室の二人にもわかった。
これで二人は夫婦になる……少将も蔵人も、そう思って疑わなかった――疑いたくもなかったのである。
なのに、彩はその翌朝、四条邸へ戻って尼となった。
彰を浄化するとはつまり、同じ魂を持つ自分が仏道へ入ることだったのである。
尼となった者を内裏に出仕させるわけにもいかない。今上もようやく彩の辞任を承諾した。皆の嘆きは表現のしようもない。
彩は少将や尼君と一緒に伊予の国へ下った……胎内に彰の子・美倭子を宿して。
次の年、少将が蔵人との間に長男を出産し、三ヵ月後に生まれた美倭子の乳母となった。
そのころから彩の体が異常を来たし始めた。時折、胸を痛めて苦しむようになり、薬師(くすし。医者と薬剤師の中間と言える職種の人)の診察を受けるようになった。
兄の任期が切れて都へ戻ってきてから、名のある薬師に新たに見せたところ、血の巡る道の途中で血が固まる病気(血栓)だと診断され、それには一生の内に一つ見つかるかという程の貴重で高価な茸・霊芝(れいし)を飲ませるしか治療法はないという。――彩の兄・高明はそれを懸命に探し続けた。
日に日に衰弱していく彩は、見舞いたいという彰の希望を断り続けてきたが、ついに情には勝てずに、彼と対面することにした。icon
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from: エリスさん
2007年12月14日 11時07分58秒
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人気投票
なぜか私が作った「簡単! 手抜きレシピ」のあまりページに、男性スタッフの人気投票が作られていた。
「あなたがイチ押しの男性スタッフに投票してね」ってヤツね(^O^;
それによると、見た目の割には意外と言うべきか、いや、仕事ぶりからして当然なのか、あの人が一位になっていた。
まあ、まだ投票期間中なので、最終的にどうなるか分かりませんが。
そしたら◆◆君に、
「○○さんがダントツだね。エリスもやっぱり○○さんに投票したの?」
と聞かれたので、
「ううん、あなたに投票した」
と、彼の名前の横に一票だけ入れられていた票を指差しながら答えた。
「え? その一票ってエリスなの? なんで○○さんに投票しないの!」
「だって、入れるのが恥ずかしくって……」
「ええ〜」(大爆笑)
いいじゃん、私が投票しなくったって、あの人がダントツ一位なんだから。それに、私に投票してもらったって、あの人は嬉しくないだろうし。
それ以前に、君に誰も入れていなかったのが悲しかったのよ。いい子なのにね……悪ふざけが過ぎるけど(笑)-
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from: エリスさん
2007年12月14日 10時56分22秒
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メール受信箱
今日は出かける前に、携帯に保存されていたメールを大分削除してきた。――なんのことはない、溜まりすぎていたので少し整理する必要があっただけだ。
過去のメールを見て、
「ああ、こんなこともあったっけ」
と思い出しながら作業をしていると、ついついあの人からのメール、もしくは私があの人へ送ったメールで手が止まってしまう。
私は面と向かって自分の思いを口にできないタイプなので、大概あの人と会話するときはメールだった。
でもあまりそれって良くないって、私が参加させてもらっているサークルのオーナーさんも言っていましたよね。男ってそうゆうのを面倒くさがるから、メールよりも、直接会って気持ちを告げて貰ったほうがすっきりするって。
でも私は――面と向かって拒絶されるのが怖いから、ついついメールで誤魔化していた。実際、メールだと大胆な告白もできるし……。
そうは言っても、やっぱり、た○きオーナーがおっしゃっていたことの方が正しいみたい。メールで喧嘩してから、しばらくメールは出さないでいたら、最近は仕事中に話しかけてくれるようにもなったし(仕事話・雑談ともに)。
しかも先日はとうとう「野望」も達成できたし(^_^)
やっぱり面と向かわないと、ダメなのかなァ……まだまだ怖いけどね。-
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from: エリスさん
2007年12月07日 18時38分24秒
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よっしゃああああ!
今日は以前から野望していたことを、実行に移しました。
十歳以上年下のあの人のことを、今まで「さん」付けで呼んでいたけれど、今後は「君」付けで呼ぶ!
だってその方が可愛いから。親しみも持てるし。
でもそれって、案外難しかったのよ。だって歳はともかく、向こうの方が先輩だし、こっちは仕事を教わる立場。
だけど今日、どさくさに紛れて、呼んじゃいました。「○○君」って。
それも二回 )^o^(
たぶん本人は気付いていないと思うけど。
明日からもこの調子で呼び方を定着させます!-
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from: エリスさん
2007年12月06日 15時00分34秒
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「露ひかる紫陽花の想い出・63」
無論、彰の側室にもなる気はなかった。
彰の性格は彩が一番理解している。あの誠実な彼が二品の宮を正室に迎えたからと言って、彩を蔑ろにするわけがない。自分が側室として入れば、二人の夫婦仲の障害になる。それは二人を縁付けた後三条の院の怒りを買い、彰の身はただでは済まなくなるだろう。
「中納言様のために、都を出るのですか?」
少将の問いに、彩は答えない。
答えられない、本当の理由を、少将は感じ取った。
「ご自分のためなのですね、やはり」
少将はこのときほど彩を情けなく思い、また、自分の変貌に驚いたことはなかった。
「中納言様が二品の宮に御心を移されるのが怖くて、お逃げになるのですねッ。あの方に忘れ去られるのが辛いから……!」
彩が振り返ったことによって、彼女の言葉は遮られた。
怒ってはいなかった。どこか哀しそうな、だが平静の表情。
「そうよ」と、彩は言った。「あの方の中に、いつまでもいたいから。だから、自分から消えてしまうの」
だが、それだけではなかったのだ。彩が都から離れる理由は。次の年になるまで、少将ですら気づきもしなかった。
「本当に、檀那様は先を見通されるのにたけておいででしたね。あの夜が、そんな意味のあるものでしたとは」icon
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from: エリスさん
2007年12月06日 14時42分46秒
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「露ひかる紫陽花の想い出・62」
彩が大納言に何を聞かされたのか、その夜、蔵人が訪ねてくるまで想像もできなかった。
ここ数日、彰が自室に閉じこもったまま、食事も摂らず眠りもせず、誰も寄せ付けずにいるというのだ。
「大納言様なら、彰の中納言様が実の兄のように慕っている方だから、なんとかしてもらえるかもしれないって、源氏の大臣が三条邸にお招きになったんだ。僕も大納言様に誘われて一緒に行ってきた……僕たち二人だけは中に通してくれたよ。ひどいやつれようなんだ。見ていられなくて……」
「そんなに?」
七日後に二品の宮との婚儀を控えた彼が、何を思ってそんなことをしているのか、容易に想像できる。
だが、それを成就させるわけにはいかない。
「わたしを恨んでもいい。せめて食事をしてくれ、彰の君。一口でいいから! 死んじゃいけない!」
大納言が手をついて頼んでいるのに対し、中納言は膝を抱えながら、弱い声で言った。
「兄上……以前、おっしゃっていましたね。愛してもいない相手とは、儀式も汚れになる……と」
その言葉で、大納言の喉は石を詰められたように声が出なくなってしまった。
「わたしは……汚れてしまうのですね」
表情のない、笑い。
いや、泣いているのかもしれない……と蔵人は感じた。
「あんな自暴自棄な中納言様、見たくなかったよ」
蔵人も少将の胸に縋って、泣いた。
次の日、蔵人は彩から手紙を預かった。彰宛のものである。
蔵人が彰に手紙を届けると、ようやく彰も元に戻るようになってきた。源氏の大臣は彩に感謝して、すぐに内裏の彩のもとへ訪ねてきた。
「わたしを恨んでいるだろうね。そなたを正室に迎えると約束しておきながら、二品の宮の降嫁とともにそれを反故にしてしまったのだから。許してくれとは言わぬ。だがせめて、中納言の側室として、あれの傍にいてやってはくれまいか。そなただけなのだ、あれを支えてやれるのは」
大臣が懇願する前で、彩も頭を下げて願い出た。
「これが最後の我が儘でございます、大臣。私の――藤原法明(ふじわら の のりあきら)の女(むすめ)の典侍辞任を、主上に願い出て下さいませ」
その場にいた女房たちが驚いたのも無理はない。
大臣がどんなに諭しても、彩の意志は変わりようもなく、それならばせめてしばらく宿下がり(休暇を取って実家に戻ること)でもと、とにかく彩は内裏を離れることを望んだ。
大臣が帰ってから、少将は彩に思い止まってくれるようにと頼んだ。
「なぜ内裏を去らねばならないのです。今は尚侍の薫の君様も、ご出産のためにいらっしゃらないのに。それは、このまま内裏にいるのは、皆の指弾の的でしょうから、辛いのもわかりますが、でも、今までどんな酷いことを言われようとも耐えていらっしゃったじゃないですか!」
「少将……世間から逃げるために内裏を去ろうというのではないのよ。勘違いしないで」
彩は兄・高明(たかあきら)がいる伊予の国へ行こうとしていたのである。しばらく田舎で暮らしてみたいと言って。icon
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2007年12月04日 16時58分03秒