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from: エリスさん
2008年07月31日 16時08分13秒
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「箱庭・13」
第一章 初夏
それからしばらくして、会社を辞めた。
中途採用者が来てくれて助かった。彼女はすでに他の出版社でマッキントッシュでの編集経験があり、私と来目杏子の仕事を見事に引き継いでくれたのである。
円満、とまではいかなかったものの、そんなわけで退社に漕ぎ着けるのに、そう苦労はしなかった。
家も出ることにした。
近頃、母の足の具合が思わしくないことも気づいてはいたが、今は母から離れた方が良い、と思ったからだ。
私は、解放されたかったのだ。
新しく住むところを探していた私のもとに、叔母(父の妹)から朗報があった。昨年亡くなった紅藤の祖母の家を叔母が相続していたのだが、誰も住む人がいないので借家にしようとしていたらしい。それで、どうせ貸すなら姪の私の方がいい、と言ってくれたのだ。家賃も安すぎる値段で。
叔母からの電話を受けて、私はすぐに松戸にある亡き祖母の家を訪ねた。叔母が先に来て待っていてくれた。
懐かしい――もうすぐ散ってしまう藤棚も、池の中で今を盛りに咲く睡蓮(すいれん)と菖蒲(しょうぶ)も、秋を待つ紅葉も、変わらずにそこにある。私は祖母が作ったこの庭を気に入っていて、小説の主人公が住む庭園のモデルにしたくらいだった。
「本当にこの家、私に貸してくれるの? 弓子叔母さま」
私が言うと、にっこりと微笑んで叔母は言った。
「沙耶ちゃんなら安心して貸せるわ。庭造りも好きなようにしていいのよ。ただ、あの藤棚はそのままにしてもらいたいんだけど」
私の母が「藤棚なんてあると、場所を取って、他の花が置けない」と言っていたのを覚えていたらしい。私も同じ意見だと思ったのだろうか。私はすぐさま答えた。
「もちろん、大事にするわ。私、藤の木大好きだもの」
叔母は安心したように息をついた。
「家の中、案内するわね」
父の兄弟は、祖父の厳格で非情な教育を受けて成長したので、私たちはどうも好きになれないのだが、この一番下の妹である叔母と、父にとっては義理の姉(祖父の姉の娘だったが、実母の死後、祖父の養女になった人)である梓美(あずみ)伯母様は、私も姉も兄も大好きだった。祖母に養育されたおかげで優しい人たちだからである。
紅藤の祖母も、私の母と似たような経緯で祖父と結婚している。そもそもは新潟県にある浄土真宗のお寺の住職の家に長女として生まれた人で、そのせいか霊感があった。私にも多少の霊感が備わっていることに気付いた祖母は、常に護符となるアミュレットを身につけているように勧めてくれた。
「私の実家の桐島家は、越後に古くから根づいた片桐家の分家で、代々霊媒体質の者が生まれてくるのよ。そのうえ、片桐家の菩提寺であるお寺の住職を務めてきたからね。孫であるあなたにも、その力が出てしまったのね。悪い霊に取り憑かれないように気を付けなければいけませんよ。体も弱いことだし」
と、祖母は言っていた。
そして私たち姉弟妹に占いを教えてくれたのも、実は祖母だった。霊力があるのなら、それを利用するのも知恵だからと。浄土真宗の宗徒である祖母がタロットなんて……と、初めは思ったが、どうも片桐家の人はそういうことを気にしない一族らしい。その昔、神道からあっさりと、浄土真宗に改宗したと伝え聞いているし。片桐本家の嫡流にあたるお嬢様も、私以上に何種類もの占いや、気功術まで修得していると聞いている。
祖母は私たちをとても可愛がってくれた。母親に愛されずに育った私たちが、なんとか人並みになれたのも、祖母のおかげだと思う。私が専門学校生だった頃に祖父に先立たれて、この家に移り住んでからも、私たちはよく甘えに来ていたのだ。icon
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from: エリスさん
2008年07月31日 13時44分25秒
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「火曜日に・5」
そんなわけで、他にも「御茶の水」「都バス」「中華街」「原宿」「江ノ島」などなど買い求めたら、ペン立てがこうなりました。
そのうちお父さんに、新潟から来る道中で「新潟ヴァージョン」を買ってきてもらおうと思っています。
ついでにお台場の映画館で「崖の上のポニョ」を見てきました。
平日だったのでかなり空いていて、いい席で見られてラッキーでした。
話の内容も「ひたすらに可愛い」内容だったので(ゲド戦記はひたすら悲しい話だったからなァ.....)、夏休みに親子連れで見るにはぴったりだと思いました。icon
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from: エリスさん
2008年07月31日 13時28分15秒
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「火曜日に・4」
この「楠正成ヴァージョン」は、格好いいので、そのうち「息子」と呼んでる子にあげようかな? と思ってますが.....そのまま自分で持っているかもしれません。(^◇^)
これってやっぱり、皇居を守ってる楠正成公像から来ているのかな?
南北朝時代、楠正成は天皇を守るために戦ったけど、正成は南朝の天皇のために戦った武将なのに、今上陛下は北朝の流れを汲む方なのだから、あの像があるのはおかしいだろう! という突っ込みを幾度となく受けている。
確かにそうなんだけど、でも南北が和合して何百年も経った今なら、正成公ほどの武将はそんなこと関係なく、今上に臣下の礼を尽くすと思うな。だからいいんだよ、別に銅像があっても。icon
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from: エリスさん
2008年07月31日 13時25分15秒
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from: エリスさん
2008年07月31日 13時23分56秒
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from: エリスさん
2008年07月31日 13時21分02秒
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from: エリスさん
2008年07月24日 18時49分54秒
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今週の更新は二日に分けました
いつもなら二連休がとれるはずなのですが、職場の都合でそうもいかず、
仕方ないので、小説アップを二日に分けました。
今日はフィットネスで泳いだあとにネットカフェに行き、「恋愛小説発表会・改訂版」を更新しました。
明日は仕事終わりにまたまたネットカフェに行き「神話読書会〜女神さまがみてる〜」を更新します。
来週もこのパターンになりそう (^o^;-
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from: エリスさん
2008年07月24日 15時48分25秒
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「箱庭・12」
私が食事をしている間に、姉は仕事を再開した。
私も手早く食べ終えて、ベタ塗りとトーン張りだけ手伝わせてもらった。――姉はマイナー誌ということもあって、アシスタントを置かないから、時折私や兄、漫画仲間に手伝いを頼む他は、ほとんど一人で終わらせていた。そのためか、実に要領がいい。締切りに遅れたことは今まで一度もないとか。
このきっちりとした性格は、やはり母似である。私たち姉弟妹の中で一番母に反発している姉が、一番母に似ていて、忠実に母の教えを守っている。
姉は私より四つ上の二十八歳(もうすぐ誕生日がきて二十九になる)。未だ独身だが、かつて婚約者がいた。
姉が高校生の時から交際していた人で、同じ美術部の先輩だった。
それが、今から十年くらい前(姉はそのとき大学生だった)、デザインの仕事をしていたその人は、関西の方へ仕事へ行く途中、乗っていた飛行機が群馬の山中に墜落し、亡くなった。――あの事故と、悲惨な物だった。生存者はたった三人。そのとき助けられた中学生が、今は看護婦になって、阪神大震災の被災地で働いている、という話題が最近の新聞に載っていたが……。
その時、姉はショックのあまり流産してしまった。――恐らく、一生子供の望めない体になって。
母は「結婚前に子供を作るなんて、ふしだらな!」と姉を責め続けていたが、その表情の端でなぜか安堵しているかのように見えたのは、私の見間違いだったのかしら?――もし、見間違いでないとしたら、それは……。
とにかく、そんなことがあって、姉は一生独身を通すことになった。そんな自分を寂しいと思わないわけはないだろうが、姉が今でも死んだ恋人のことを愛しているのは分かる。
女として、姉の生き方には尊敬する。
私も姉のような、母のような生き方ができるだろうか。――一生、崇原のことだけを慕っていけるのかしら? また、千鶴の時のように忘れてしまうようなことはないだろうか。
自分が信じられない。
こんな私に、生きる資格はあるのだろうか……。icon
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from: エリスさん
2008年07月24日 15時30分45秒
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「箱庭・11」
父はあまり他人と交わるのが好きではなかった。そのため、祖父母と暮らしていた家を出て、今の家に移り住んでからは、それまでは家政婦や庭師(がいる家だったのだ、祖父の家は)がやっていたことを全て母に任せて、自分は仕事と余所に囲っている女たち(人間嫌いでも女性は別らしい)にだけ精神を注いでいた。母とは愛し合って結婚したわけではないし――実のところ、父には心から愛する女性がいるのだが、その人とは結婚できないぐらい近い血縁だったために、諦めて他の女性と結婚するしかなかった、という背景もあるから、こんな風になってしまったのは仕方のないことなのかもしれない。だから父にとって母は「子供を産むための道具」であり「家事をこなすロボット」でしかなかった。
母が庭造り――自分の世界に閉じこもってしまったのは、当然のこと……。ましてや、絶対に忘れる事の出来ない愛する人がいたのだから。母が私たち姉弟妹(きょうだい)を愛してくれないのも、父に無理矢理産まされた子供だからであり、婚約者を裏切ることにもなるからだ。
そう、頑なになるまで愛しているのは、死んだ婚約者だけ。五十四年たった今でも。
「女って、個人差はあるけど、みんなそんなものよ。あんたにだって、経験あるでしょう?」
姉に言われて、たぶん私は頬が紅潮したと思う(自分では見えないけど)。突然、私は昔のことを思い出してしまった。
「あんたって、恋愛に関しては秘密主義だったから、本当にドツボにはまってからでないと教えてくれないけど……南条(なんじょう)、だっけ? あの人と付き合ってた時も、その崇原さんを好きになった時も、あんたこっそり夜中に泣いてたわよね。“本当は好きになっちゃいけないのに、忘れられない”って」
「……だって……」
母のように、一生に一度の恋こそが女の美徳。そう教えられて育った私たちだったから、高校・専門学校と通して付き合っていた南条千鶴(なんじょう ちづる)とは、例え周りに「禁忌」だと言われても、お互い真剣に付き合ってきた。出来れば結婚もしたかったのに……私たちは、別れてしまった。
それでも、就職してからも、千鶴のことだけ愛していよう、他の人のことなんか見向きもしないで生きよう、と、自分に誓ったのに、崇原に惹かれてしまった。まだ千鶴を愛している、その気持ちのままで。あの時、どんなに自分が愚(おろ)かしく思えたか。恥ずかしくて、死んでしまいたかった。
私には到底、母のような生き方はできない……。
それでも、何年もたってしまったけれど今は、自分なりに気持ちの整理はつけたのだ。千鶴を想っていた気持ちと、崇原を想う気持ちは別のもので、いま感じているこの想いこそが本物なんだって……自分に言い聞かせてきた。少しでも、貞淑な女と認められたくて。
だから、崇原を好きにはなったものの、告白するまで二年もかかってしまったのだ。彼が来目杏子と付き合っていることも気づかずに。
「ね? きっとその人も、結婚を決めるまでは相当悩んだと思うよ。あんたが南条さんを忘れられなかったように、きっとその人も崇原さんのこと、忘れられないと思う。ね? 今はその人を恨むことよりも、その人がそんな結果を出さなきゃならなくなった、その苦しみを考えてあげよう? シャアならできるはずよ」
「……うん、努力してみる」
「うん!」
姉はそう言って立ち上がると、台所の方を向いた。
「さて、何食べたい?」
「え? でも、お姉ちゃん」
私は、流し台の中に入っている食器類を見てから、言った。「もう、お夕飯、食べ終わっちゃったんじゃないの?」
「私はね。でも、あんたまだでしょ?」
「私はいいわ。それより、もう仕事始めた方が……」
「いいから。何食べたい?」
「本当にいいわよ。私、少しダイエットしなくちゃいけないから……」
すると、姉はどうやらムッとしたらしくて……後ろ向きのままなのに、額の青筋が見えたような気がした。
「ダイエット……ですって……」
「え、ええ……少し、必要かなァって」
「どこが!」と、姉は振り向いた。「あんたね、身長一五九cmの体重四十五kgのくせして、これ以上ガリガリになるつもり! 今だって、先月会った時より面やつれしてるじゃないの!」
「え、でも……今年の新人さんで、もっと私より体重が軽い人がいて……」
そう、その人は四十三kgしかなくて、とっても可愛らしいのだ。
「そりゃ、あんたより背がちっちゃいからでしょ! そんなこと言ってたら、私の五十五kgはどうなっちゃうのよ!(身長は一六二cm)」
「だって、お姉ちゃんのはいわゆる“グラマラス”だから、それぐらいでも……」
「だァかァらァ! あんたもそうなれるはずなのに(姉妹なんだから)、そうなれないのは極端に小食だからでしょ! いいから、文句言わずに食べなさい!」
と言って、姉が作ってくれたものは、レトルトの麻婆豆腐だった……お姉ちゃんらしいわ(料理不得意だものね)icon
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from: エリスさん
2008年07月22日 18時39分59秒
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「2サークル共通カキコ・世間は三連休、私は三連勤」
昨日までの三日間は、私も同僚たちも過酷な日々でした。
いつもは温厚な人までピリピリしちゃって(^o^;
私などは、運んでいたラックを何もないところで倒してしまい、
「エエ〜! エリスさんのそんなドジ、初めて見た!」
と笑われ(^o^;
「エリスさん、疲れてるでしょ?」
と、労られてしまった。
正直な話、三日間の朝3時起きは辛かったです。併せて、多くのお客様を接客し、トラブルに対応し――家に帰れば、暑さで機嫌の悪くなった猫ちゃんをなだめ orz
おかげで昨日は、疲労のせいなのか、家事をやりながら眠くなってしまい、洗濯物を畳んでいる途中でギブアップした。
「お兄ちゃん、手伝って……」
「僕の分は畳まなくていいから、先に姫ちゃん達の小屋掃除しな。手伝ってやるから」
兄に手伝ってもらいながら、なんとか猫の世話を終わらせたものの、食器洗いと夜の勤行(読経と唱題をすること)をさぼって寝てしまった。
そんな感じなので、いつもならフィットネスに行っている今日は、それもお休みして、家で天ぷらの大量作り置きをしてました。
そのうち忙しさに体が慣れてくる、とは思うんだけど……(^o^;
それでも小説サークルの更新だけはお休みしないように、がんばりますね。icon
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