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from: エリスさん
2011年01月28日 14時55分03秒
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「夢のまたユメ・8」
慶子はティーカップを口から離すと、目線をカップに落したまま言った。
「結婚することになったわ」
真莉奈(まりな)は手に持っていたお盆を握りしめて、答えた。
「おめでとうございます、お嬢様」
すると慶子はテーブルに音をたててカップを置いた。
「おめでたくないわよ、好きでもない男なんだから」
「お嬢様……」
「でも仕方ないわ。私は一人娘で、父の病院を継ぐには医者と結婚するしかない。私は……」
慶子は右手で、自分の左腕の袖をめくった――肘から先が義手の腕。
「私は、医者にはなれない……」
「でしたら!」
真莉奈は身をかがめると、慶子の膝にすがりついた。
「お嬢様が好きになれる男性が現れるまで、お待ちになればいいのです。まだお嬢様は二十歳なんですもの。これからいくらだって!」
「無理よ」
「無理じゃありません!」
「無理よ、私には。だって……」
慶子は真莉奈の肩に手を置くと、自分の方に引き寄せて、彼女の口にキスをした。
信じられない出来事で真莉奈が言葉を失ってしまう……。慶子には予想できたことなのだろう、苦笑いを浮かべると、言った。
「私は男を好きになれないのよ。昔からそうだったわ……父も私のそういうところを気づいてる。だから、無理にお見合いをさせたんですもの」
「でも……」
「いいのよ! もう……これが私の運命」
慶子は真莉奈を解放すると、椅子から立ち上がって窓辺へと行った。
「私はこの家の血筋さえ残せれば、それでいいのよ」
「そんなの、あんまりです! お嬢様が可哀そうすぎます!」
「そう思ってくれる? だったら……」
――長い沈黙。
「だったら……なんですか? お嬢様」
真莉奈はもどかしくて仕方がなかった。慶子はきっと自分に頼みたいことがあるのだ。それさえあれば、彼女はきっとこの先の不幸を耐えていけると考えているはず。だけどその頼みは、真莉奈にとっても不幸かもしれないと遠慮している。
その頼みこそが、真莉奈の願いなのだとも気付かずに。
だから真莉奈から言ってみせた。
「でしたら、私を一生お傍においてください!」
慶子は驚いて振り向いた。
「私は……私の方こそ、お嬢様をお慕いしておりました。メイドの身分で、お仕えするお嬢様にこんな大それた想いを抱くなんて、神をも恐れぬ思いだと分かってはいますが」
「真莉奈……」
「それでも私、お嬢様が好きなんです! だから、お嬢様が好きでもない男と結婚しなければならないと言うのなら、せめて私をお慰みに!」
「真莉奈! あなたまだ十五歳なのよ! そんな大それたこと、こんな勢いに任せて決めていいの?」
「勢いじゃない! ずっと前から私! この家に来た時から!」
真莉奈は慶子に駆け寄ると、抱きついて、情熱のままにキスをした。
「……真莉奈……」
「お嬢様……私を……」
真莉奈は白いエプロンを外すと、その下のブラウスのボタンを外し始めた。
………………………と、いうところまで書き進めたとき、百合香の携帯が鳴った。
その着メロは、家族からかかってきた時にしか鳴らないようにセットした曲で、気がついた姫蝶も炬燵の中から出てきた。
「もしもし? お父さん……うん、今、ネットで小説書いてた」
新潟県で一人暮らしをしている百合香の父・一雄からだった。icon
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from: エリスさん
2011年01月21日 14時23分18秒
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from: エリスさん
2011年01月14日 14時26分19秒
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「夢のまたユメ・7」
百合香がぼうっとしていると、後頭部を段ボールの板で叩かれた。
「何? 居眠り? メガネ磨きながら」
百合香を叩いたのはぐっさん こと 山口冴美だった。
「すみません、アネさん(ぐっさんのが先輩なので、ときどきこう呼ぶ)。ちょいと寝不足で」
「早寝早起きのリリィが? なにがあったの」
百合香たちは従業員エリアで3Dメガネを洗浄拭きしている最中だった。ちなみに、フロアスタッフだけでは人手が足りないので、他の売店スタッフやチケットスタッフも手伝いに来ていた――その中に小田切もいた。
「いやぁそれがねェ、かなり夢見が悪くてさ」
「なになに、じっくり聞かせなさいよ」
ぐっさんは百合香の頭を叩いたダンボール板を床に敷いて、その上に座って一緒にメガネを拭き始めた。
「前の会社でのことは話したよね? 私が退職した理由」
「ああ、聞いたね」
二人が話していると、他の部署のスタッフも「なになに?」と近寄ってきた。
「宝生さんって、何か理由があってOL辞めたんですか?」
「うん、そう」と百合香は言った。「中途採用で入ってきた男が、思ってもみない変態親父だったのよ」
「ヘェ? どんな?」
「まあ、ぶっちゃけて言えば……見たくないモノ見せられたの」
それを聞き、女の子たちは怖がって(半分面白がって)悲鳴を上げた。
なのでぐっさんが聞いた。「それを、夢に見たの?」
「うん……」
「うわァ、ご愁傷様……」
「ここ何年かは見なくなってたから、もうトラウマからは抜け出せたと思ってたんだけどさ……」
「あれじゃない? 昨日、どなり散らした客がいたから、思い出しちゃったんじゃない?」
「うん、だと思う」
「リリィってそれがあったから、男性恐怖症になっちゃったんだもんね」
「はい……」
それを聞き、小田切が「え?」と言った。
「えっ、リリィさんって……そうなの?」
なので百合香は明るく勤めてこう言った。「かなり治ってはきてるのよ、今は。でも基本、男すぎる男はまだ駄目ね」
「それじゃ恋愛とかできないじゃないですか」
と売店スタッフの女の子が言うので、
「そんなことはないよ。以前は確かに駄目だったけど、今はもう恐怖を感じない男性なら、普通に恋愛対象に入るもの」
「じゃあ、どんな男なら大丈夫なんですか?」と男のチケットスタッフが聞くので、
「見た目が女っぽい人なら全然大丈夫よ」
――と言ってから、百合香は『しまった!』と思った。だがもう遅く、即座に小田切に止めを刺された。
「ああ、つまり優典(ゆうすけ)みたいな」
カチンッと百合香の頭の中で響いた――自分の口が滑らしたのも悪いのだが、それをこんな形で曝(さら)け出されるとは。
それでも、できるだけ大人としての対応をしてみせた。
「あなたね、そう思っても自分の彼氏を例えに出しちゃダメでしょ」
「アハハ、すみませェん」
本当に清まないと持ってるのかな? この女……と、心の内では怒り心頭だったが、そこでトランシーバーから連絡が入った。
〔フロアスタッフへ、売店スタッフに伝言お願いします。お客様が並び始めました。奥にいる売店スタッフは持ち場に戻ってください〕
なのでぐっさんがシーバーに応じた。「了解しました、伝えます……売店込んできたから、戻れって。小野田マネージャーだった」
売店スタッフはシーバーを持っていないので、そばにいるフロアスタッフが伝言をしてあげなくてはならないのである。
「分かった、じゃあ戻るね」
小田切たち売店スタッフがそそくさと戻って行き、ついでにぐっさんはチケットスタッフにも戻るように勧めた。
その場には百合香とぐっさんだけが残った。
「牽制されちゃったね、リリィ」
ぐっさんが言うので、百合香は笑った。
「やっぱりぐっさんもそう思った?」
「思った。小田切さん、リリィの気持ちに気付いてるのかね」
「どうだろね。だとしても、自分の方が絶対的に優位だと思うんだけど」
「小田切さんはそう思ってないんじゃない? いつか、ナミをリリィに取られるって恐れてるのかもよ」
「ええ〜? ありえない。彼女のが若くて可愛いのに」
「見た目じゃないから、女は。実際、ナミってリリィに懐いてるじゃん? そういうのを見て、危機感を感じるんだよ、きっと」
「……でも、ナミの私への気持ちって……」
母親か、姉への親しみ。
「そうだけど、恋する女は盲目だから、そこが見えなくなっちゃっうんだよ」
「……困ったもんだ」
「まったくね……よし、これで全部拭けたね」
3D眼鏡がすべて拭き終わり、ケースに戻された。今日は破損もなければ紛失もない。
「明日は平日だから、そんなに3Dのお客も入らないよね」
と百合香が言うと、ぐっさんは言った。
「トロン:レガシーが始まるまでは平和でいてほしいよね。ホント、今度の仮面ライダーは3Dじゃなくて、大助かりだよね」
「夏の仮面ライダーの時は大変だったものね(^_^;)」
「あっ、仮面ライダーと言えば……忘年会、リリィは来るでしょ?(仮面ライダーの初日と忘年会が同じ日)」
「行くよ、もちろん」
「スペシャルゲストが来るって、ジョージが言ってたよ」
「スペシャルゲスト? 誰よそれ」
「さあ?? でも、リリィが喜ぶ人だって」
「ええ? 気になるなァ、誰なの、いったい!」
「ジョージとっちめて聞いてみれば? 私にもそこまでしか言わなかったから」icon
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from: エリスさん
2011年01月07日 15時30分01秒
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「夢のまたユメ・6」
「ルーシーさんは今日はお休み?」
〔ううん、今日は出勤だった。12月に入ると土曜も仕事だったりするんだよ〕
「どこも忙しいみたいだね(^_^;) そうそう、今のうちに言っておかないと。18日はチャットできないと思うから」
〔忙しいの? 確かその日って新作映画が多いんだよね〕
「うん、“仮面ライダー”とか、いろいろとね……でもそうじゃなくて、うちの職場の忘年会なんだよ」
〔ああ、そうか! 奇遇だね。私もその日忘年会なんだ〕
そこまでパソコンで会話をして、え? と思った――やっぱりシネマファンタジアの人なんじゃないかしら? その日は他の部署も忘年会するって聞いたけど……とはいえ、シネマファンタジアに限らず、年末はどこの企業も忘年会をするものだから、そこは突っ込まないことにした。
〔でも19日の夜はチャットできるでしょ? 週に一回はユリアスさんとお話しできないと、さみしいよ〕
「そうね、じゃあ19日はお話しましょ。まだ先の話だけど(*^_^*)」
〔それはそうと、昨日の更新読んだよォ。今回も良かったよ。次がすごく楽しみ。次からは真莉奈(まりな)と慶一朗(けいいちろう)の馴れ初めの話だよね?〕
「うん。その前に慶一朗の母親の慶子と真莉奈の話になるけど」
〔ということは、ユリアスさんお得意の百合萌えネタになるの?〕
「そうよ。楽しみにしててね」
その後もしばらくルーシーとチャットを楽しんで、そろそろ8時になるからと終わらせた。その間、猫の姫蝶(きちょう)は百合香の膝の上に乗ったり、炬燵の中へ潜り込んだりと、好きに動いていた。洗濯物をたたむ間はどうしても相手をしてもらえないと分かっているので、そういう時はいったん自分の部屋に戻っている。そして百合香が洗濯物を終えて部屋から出てくると、姫蝶はその後を甲斐甲斐しくついて歩くのだった。
「キィちゃん、今日はどこで寝る? 自分のベッド? それともお姉ちゃんの部屋の炬燵の中?」
百合香が聞くと、姫蝶は百合香の部屋に入って、部屋の端に移動させられた炬燵のそばへ行って、一声鳴いた。
「炬燵のスイッチは切ってあるけど、いいのね」
「みにゃあ」
「分かったわ。じゃあ、お姉ちゃんはお風呂に入ってくるから」
すると、姫蝶は走り寄ってきて百合香の足に体をこすりつけてきた……甘えさせてくれ、と言っているのだ。だから百合香はゆっくりと体を撫でてあげた。
「ごめんね……お姉ちゃん、喉が弱いから、一緒に寝てあげられなくて」
猫好きなのに、猫の毛が喉に入ると気管支が発作を起こすので、同じ寝床では寝てあげられないのだった。
薄暗い工場に入っていく……電気のスイッチがある場所がちょっと遠い所にあるから、仕方なく窓からもれる光を頼りに中に入るしかない。
百合香は印刷物が積んである棚までたどり着いた――あとはそれを持って校正ルームへ戻ればいい。毎朝の日課だから、別に苦ではないけれど……その日は違っていた。
百合香が立っている横から、カチャカチャっという音が聞こえてきた。なんだろうと振り向くと、そこに……上半身は裸で、今まさにズボンを脱いだばかりの男がいた……。
「イヤァ――!」
……という、自分の悲鳴で眼が覚める。
百合香は夢を見ていたのだ。
『久しぶりに見た……昼間、客のどなり声なんか聞いたからだな』
6年前、実際に百合香の身に降りかかった災難だった。幸いと言おうか、見たくないものを見せられただけで、百合香に実害はなかったのだが、それでも、それが原因で百合香は12年間も務めていた印刷会社を辞めざるを得なかったのである。
『ああもう!…………だから男っていや……全部じゃないけど』
その時、
「みにゃあ?」
姫蝶が心配そうに見下ろしていた。
「大丈夫よ、キィちゃん……大丈夫」
百合香は姫蝶の頭を撫でてあげてから、姫蝶を抱き上げて炬燵まで連れて行った。そしてパジャマに姫蝶の毛がついていないか確認してから、パンパンと軽くはたいて、また寝床に戻った。
『ちゃんと寝なきゃ……明日も仕事だ……』
それでも百合香は1時間近く眠れなくなってしまった。icon
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from: エリスさん
2011年01月07日 09時46分19秒
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from: エリスさん
2011年01月02日 19時30分22秒
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from: エリスさん
2011年01月01日 20時32分34秒
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from: エリスさん
2011年01月01日 03時27分07秒
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おめでとうございます
先ずは、あけましておめでとうございます。
お気付きかと思いますが、新年早々こんな時間に起きてます。近隣の皆さん、うちの映画館は今日は8時半に開きます。よろしくどうぞm(__)m
そして、堂本光一さま、誕生日おめでとうございます! 年齢を感じさせないその若々しさの秘訣を教えてほしい。
そんなわけで(どんなわけだ?)今年もお願いします。-
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