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from: エリスさん
2011年02月25日 12時28分19秒
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「夢のまたユメ・13」
次の日の日曜日。仕事を終えて家に帰り、夕食をとっていると、ネット仲間のルーシーからチャットの誘いのメールが届いた。
百合香は急いで夕飯を済ませると、炬燵の中で姫蝶を膝に乗せたまま、パソコンを開いた。
〔昨日はどうだった?〕
とルーシーから問いかけられたので、百合香は楽しげにキーボードを打ち込んだ。
「実は彼氏ができました」
〔マジで!? 相手はどんな人?〕
「それが驚くなかれ。以前話した長峰君なのよね。小説の慶一朗のモデルの」
〔へえ! 良かったね。これでナミ君のことは吹っ切れるじゃない〕
「そうなんだけど……それが面白いのよ。今日ね……」
と、百合香は今日会ったことを語りだした。
さすがに今日は日曜日ということもあって、来場客数が並ではなかった。フロアスタッフみんなが過労死寸前で仕事をしている中、百合香だけが体力気力ともに元気だったため、ナミがこう言ってきたのだ。
「浮かれてますね? リリィさん」
「そう? 確かに今日は体力がもってるわね」
「今日、このあとデートなんですか? 昨日の人と」
「翔太のこと? そうよ。お茶する約束してるけど」
「ふうん……」
その表情がどう見ても嫉妬の表情だったので、百合香は思い切って聞いてみた。
「なァに? お姉ちゃんを取られて寂しい?」
するとナミは素直に「ハイ……」と言ってから、我に帰った。「いや! そんなんじゃなくて!」
なので百合香はナミの手を取って、ポンポッと優しく叩いた。
「私が誰と付き合っても、あなたとの友情は変わらないから……だから、翔太を認めてあげて。彼ね、すごくいい人なの」
「そりゃあ………………リリィさんが好きになるぐらいの人ですから……」
その時のナミの複雑な表情がとても可愛かったので……。
「もう、抱きしめちゃいたいのを必死で堪えたのよ、私」
と、百合香はチャットに書き込んだ。
〔抱きしめちゃえばよかったのに(●^o^●)〕
「そんな、翔太に悪いわよ」
〔そっか(^○^) でも良かったね。これで目標達成できそうじゃない〕
「目標ね……あまり焦りたくはないんだけど。それで嫌われちゃうのイヤだし」
〔大丈夫。ユリアスさんが焦らなくても、男の方が積極的になるから〕
「……そうなの?」
〔そうなの! だから彼と会うときは、いつでも勝負用付けてなきゃだめだよ〕
この文章を見て、百合香は思わず赤面した。
『持ってないよ、そんなもの……』
明日仕事帰りに買いに行こう――と、百合香はそんなことを思うのだった。icon
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from: エリスさん
2011年02月18日 15時29分16秒
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とうとう明日
明日、2月19日は、
私の誕生日です。
とうとう四十歳になりますOTZ
やっちゃいました! 彼氏イナイ歴40年!
文化学院時代に「付き合ってんだか、付き合っていないんだか、良くわかんない微妙な関係」の男子を勘定に入れると、彼氏イナイ歴20年になりますが、それでも長いよ、この枯れ方は.........。
なので、この「恋愛小説発表会・改訂版」の方で、かなりな妄想話を執筆中な私ですが、この先もこんな花の咲かない人生が続くんでしょうね。
ここはもう、アテーナー 様を見習って尼寺に入るべき???-
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from: エリスさん
2011年02月18日 12時54分15秒
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「夢のまたユメ・12」
「ホント!?」と、長峰は身を乗り出してくる。
なので百合香は微笑みながら頷いた。
「私の方でも気になってたのよ。今頃どうしてるかなァって……おかげで小説にまで出てきちゃって」
「ネット小説だろ? 読んでるよ」
「え!?」と百合香は後ろにのけぞった「よ、読んでるの?」
「うん。慶一朗って、あれ俺だよね? 物言いが似てる」
「アハハ、本当に読んでるんだ(^_^;」
するとぐっさんが手を打った。「じゃあもうこれで決まりじゃん。問題なく復活!ってことで」
「飲みますか!」とジョージも言って、店員さんを呼んだ。「すみませーん、生ビール4つ!」
そこで百合香が訂正した。「じゃなくて、3つにしてください。私はジャスミンティーで!」
「リリィ、乗りワル!」
「お酒飲めないんだからしょうがないでしょ」
百合香とジョージがそんなやり取りをしている間、長峰――翔太とぐっさんは席をチェンジしていた。
「やっぱり俺はこっちの方が落ち着く」
翔太がまだシネマ・ファンタジアにいたころは、飲み会というと百合香と翔太が隣同士で座っていたのだ。
「じゃあ、例のいきますか? ちょうどいいのがあるし」
と、百合香はお手拭で手を拭いてから、フライドポテトを一本手にとって、翔太の口元に持っていった。
「ハイ、アーン」
「アーン!」
百合香が翔太に手で食べさせてあげるのも、恒例行事みたいなもので……。
「バカップル……」
ナミはそう呟いて、ビールを一気飲みするのだった。
明日も早番で仕事が入っていた百合香は、途中で宴会を抜けなければならなかった。
「駅まで送るよ」と翔太が申し出たのだが、
「あなたは久しぶりにみんなと会えたんだから、ゆっくりしてて。大丈夫、沢口さんと一緒に駐輪場まで行って、そっから先は自転車で帰るから」
「うん……じゃあ、後でメールしていい?」
「いいわよ。今度からは遠慮なく、いつでもメールして。近いうちに、どこか遊びに行こうね」
「うん、行こう」
別れ難いのを我慢して、百合香が店から出ると、出入り口で沢口さんが待っていた。
「お互い主婦しながらお仕事だから、こうゆう時は残念よね」
と沢口さんが言うので、
「家族の朝ごはん作らなきゃいけないから、寝坊できないものね。ホント、ゆっくり飲み会に参加できる身分になりたい」
と百合香も言いながら歩き出した。
「ナミがやきもち焼いてたよ、二人のこと見て」
「ええ〜、まさかァ」
「本当よ。“リリィさんの横に俺以外の男が座るなんて……”って言ってた」
「……どうゆう心境だ? それは」
ナミには恋人がいるのだから、翔太に嫉妬するのは本当ならおかしな話なのだが……。
すると沢口さんは母親目線でこう言った。
「大好きなお姉ちゃんが学校の友達を家に連れてくると、妹ってやきもちを焼くものなのよ。うちの娘がそうなの」
「ああ、そうゆうものですか」
「宝生さんもお兄さんがいるから、そうゆう経験ない?」
「私の場合は……兄はあまり、学校の友達を家に連れてこなかったんです。それで、外で遊ぶのが嫌いだった私と、良く家の中で遊んでくれて……そうね。もし、兄が家に友達を連れてきたら、そうゆう心境にもなってたかもしれませんね」
結局、ナミにとって自分は「お姉ちゃん」なんだな、ということを思い知らされる。だからこそ、翔太とよりが戻って良かったのだと、百合香は納得することができた。icon
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from: エリスさん
2011年02月11日 13時40分33秒
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「夢のまたユメ・11」
第2章 夢の始まり
百合香が器を落としたことも気づかずに硬直しているので、ナミは彼女の眼の前でヒラヒラと手を振って見せた。
それで百合香は我に帰った。
「あっ……」
「大丈夫ですか? リリィさん」
「あ、うん……」
返事がまだ上の空に近いのは、ぐっさんに引っ張られて長峰翔太がこちらに近づいてくるからだった。
そしてぐっさんは、
「はい、ナミ! そこあけな」
と、彼の肩を叩いた。
「え? なんで?」
「いいから、あけろ。そこは私の席になったから」
「はい? 訳わかんないです」
ぐっさんがナミを退けようとしている間、ジョージもカールに話しかけていて、席を空けてもらっていた。どうやらジョージとカールは事前に話をしていたらしい。
「ホラ、ナミ君。僕たちはあっちに行くよ」
と、最終的にはカールがナミを連れていく形になった。
そうして空いた席――百合香の目の前に長峰が座り、百合香の隣にぐっさんが座った。
ようやく状況を把握できた百合香は、ぐっさんに言った。
「知ってたの? 長峰君が来るって」
「私も今日聞いたんだよ、ジョージに。それで、ミネ(長峰)が来たらリリィの傍に座らせてほしいって頼まれて」
「なんでまた?」
「なんでまたって……」とジョージが言った。「察してやってよ、リリィ。ミネさんだって、リリィのこと嫌いで振ったわけじゃないんだからさ」
そう言われて、長峰は頬を赤らめていた。
――その様子を遠くから見ていたナミは、カールに詰め寄った。
「あれ誰ですか!? なんで俺が退かされなきゃなんないんです!」
「彼は長峰翔太って言って……」
とカールが説明していると、横から竹下がしゃしゃり出た。「リリィさんの元彼なんだよォ〜」
「元彼!? いたんですか!? そんな人」
ナミの驚きに、カヨさん(門倉香世子)が説明した。
「正確には付き合ってないんだけど、二人とも好き合ってるのバレバレだったんだよね。だから付き合っちゃえば良かったのに、ミネの方に事情があったらしくて」
「でも今日来たってことは」とカールが言った。「その事情も落ち着いたみたいだね」
その通り、百合香もちょうどその説明を長峰から聞いていた。
「結局、親父の会社に就職して、営業の仕事をしてて……仕事にも慣れてきたら、いろいろと、考えることもあったんだ」
「考えること?」
と、百合香が聞くと、長峰は黙ってしまう。なので、ジョージが代わりに答えてあげた。
「ミネさんね、会社の女の子に告られたんだって。でも、その時にリリィのこと思い出しちゃって、それで……」
「オイッ」と、長峰はジョージを止めた。
「ミネさんが黙っちゃうからですよ。でも、そう言ってたでしょ?」
「そうだけど……」
長峰は言い淀んでから、チラッと百合香のことを伺った。
なので百合香は、昔と変わらずに微笑んであげた。
「嬉しい。私のこと、忘れないでいてくれたんだ」
「うん、忘れられなかった……ごめん、俺の都合で、会わないでいたのに……」
「いいのよ。私だって似たようなこと経験したもの。就職とか、環境が変わるとね、いろいろと難しい選択を迫られることはあるわ。だから、あなたに振られたことも仕方ないことだって割り切ってたの」
「あんたはそう言うけどさ」とぐっさんが言った。「あの時、リリィがもう一押ししてたら、二人はちゃんと交際してたと思うんだけど。なのに、リリィったら身を引いちゃうんだもん」
「しょうがないじゃない。私は世間一般から言ったら“オバサン”なんだから、しつこく若い子を追いかけていたら気色悪いって思われるって、分別(ふんべつ)も持ってるのよ」
「もう、この場合その分別いらないから! 両思いなんだからさ」
「そういうことだから、リリィ」
と、ジョージは言った。「俺たちの顔を立てて、ミネさんとよりを戻してください!」
「……そうね……」
ちょうど、ナミへの思いを断ち切ろうとしていたところでもあるし、ましてや自分でも引きずっていた相手である。
「私で良かったら……」icon
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from: エリスさん
2011年02月11日 10時08分21秒
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from: エリスさん
2011年02月10日 19時19分11秒
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怪我しました
これで三度目ですが、我が家の猫・公太に噛まれました。
公太の前に司郎と黒羽の小屋掃除をしていたら、この二匹の匂いが私に移っていたらしく、それでも手を洗ってから公太の世話をすれば良かったのに、それをスッカリ忘れて、結果、噛まれました。
私に噛み付く前に、しきりに私のふくらはぎの匂いを嗅ぐから、変だなっとは思っていたんですが。
そんなわけで、公太を小屋に連れ戻す間に、右足と、右腕の肘と、左手の指先から手首にかけて、噛み傷と引っ掻き傷ができたので、今日病院に行ってきました。――看護士さんが絶句するほどでした。
なので今日は入浴禁止で、指もやられているので洗髪もできません。
明日外出できるか心配です。-
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from: エリスさん
2011年02月04日 14時54分03秒
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「夢のまたユメ・10」
長峰翔太は、当時まだ大学3年生の、百合香より十四歳年下の青年だった。お互い意識していることは間違いなかったし、周りの人たちもそれを分かっていて見守っていてくれた。
だが、彼が就職活動をするためにシネマ・ファンタジアを辞めることになって、送別会を開いた日。百合香が自分の気持ちを告白すると、彼は悲しそうな眼をして断ったのだった。
それを聞いたぐっさんこと山口は、「はぁ!?!!」と、驚きと怒りが混ざった声を発した。
「あいつがリリィを振るなんてありえないじゃん! あいつの方がリリィにゾッコンだったんだよ!」
「でもあの……間違いなく振られました、私」
「ちょっと! ミネ(長峰翔太の愛称)どこ行ったァ!」
宴会場に戻ってきた長峰をひっ捕まえたぐっさんは、そのまま別室に彼を連れ込み、彼の真意を尋ね(半分おどして白状させ)た。それによると、出版社を経営する父親の跡を継ぐか、それともまったく関わりを持たないところで自立するか、今はその判断も迫られている自分は、百合香のようにすぐにでも結婚しなければならないような年齢の女性と付き合っても、責任を持てる自信がない。だから断るしかなかったのだと言った。そういった事情を、ぐっさんも理解しないではないので、それ以上は追及せずに、ただ百合香にだけはそのことを教えてくれたのだった。
百合香もその理由に納得した。百合香自身は結婚のことまで考えてはいなかったが、彼がそこまで考えて出した結論なら、仕方ない。
それから二年、翔太とは会っていない。ファンタジアの忘年会や、新人歓迎会があるたびにジョージたちが誘っているらしいのだが、一度もそういうのに顔を出さないのだ。同僚たちから聞いた話だと、結局、父親が経営する出版社に入社したらしいのだが。
『今頃、年の近い彼女ができてたりするのかな。あの子、いい奴だったから、誰にでも好かれるし……』
百合香が思っていると、また携帯が鳴りだした――今度は兄の恭一郎だった。
「百合香? 俺だけど」
「どうしたの? お兄ちゃん」
「今日、残業で遅くなるから、ご飯食べて帰るよ」
「あらそう。構わないわよ、お兄ちゃんの夕飯は冷蔵庫に入れてあるから、そのまま朝食に回すわ」
「うん、そうして……でさァ、キィはそこにいる?」
「いるよ。待ってて」と、百合香は炬燵のふとんをめくった。「キィちゃん!」
すると中でのびのびと寝ていた姫蝶が起き上がって、「みにゃあ!」と鳴いた。
「お兄ちゃんから電話よ。出る?」
「にゃあ〜〜!」
と、返事だけして、姫蝶はそこから動こうとはしなかった。なので百合香は再び携帯を耳にあてた。
「キィ、出ないって」
「うん、いいよ。声だけ聞けたから」
「お兄ちゃん、キィちゃんともっと接してあげないと、ますますお兄ちゃんに懐かなくなるよ」
「子猫のころは懐いてたのになァ〜」
転職して仕事が忙しくなってしまった恭一郎は、姫蝶と遊んであげる時間がなくなってしまったので、結果、姫蝶は百合香にばかりなつくようになってしまったのである。猫の習性なんであろうか?
「それじゃ、気をつけて帰ってきてね」
百合香は携帯を切ると、またパソコンに向かって小説を書き始めた。
「かっこよかったよねェ〜! 左翔太郎」
百合香が言うと、ナミこと池波優典は言った。
「でも、話の主役は完璧にスカルの鳴海荘吉みたいですよ」
「いいのよ。冒頭であれだけカッコよければ文句なしよ」
ここは忘年会の会場だった。百合香とナミは今日から公開の「仮面ライデー×仮面ライダー オーズ&タブル feat.スカル MOVIE大戦CORE」の話をしていたのだった。フロアスタッフは、各シアターで上映が始まると、映像に問題がないかどうか確認するために“スクリーンチェック”をするので、映画の初めの方だけは見ることができるのである。その時、仮面ライダーの冒頭があまりにも格好良かったので、桐山漣が演じる左翔太郎の大ファンである百合香が興奮してしまっているのだった。
「ああ、早く全編が見たい……」
「火曜日お休みでしょ? その時見たらどうです」
「うん、もう! 絶対その日に見る!」
そこへ、ジョージが一人連れて入ってきた。
「リリィさん、お話し中すみません。ここいいですか? あと、カールも」
「ああ、カール! 久しぶり!」
ジョージが連れてきたのは、去年辞めたカールこと小坂馨(こさか かおる)だった。パッと見が女性のようなのだが、カールはれっきとした男性だった。
カールは百合香の向かい側に座りながら、「お久しぶりです」と頭を下げた。
「今は保育士をやってるんだよね。どう? 大変?」
「楽しいですよ、子供たちに囲まれて。ただ……まだちょっと、男の保育士に偏見を持っているお母さんがいて」
「そっか……まだまだ遅れてる人はいるのね」
「リリィさんは? 彼氏はできました?」
「まだよ(^。^) なかなか私みたいなオバサンになると難しいのよ」
「そんな、リリィさんまだまだ若いですよ。実際、三十九歳には見えませんし」
「あら、アリガト」
「お世辞だと思ってるでしょ? 違いますからね。ねぇ? 君もそう思うでしょ? ええっと……ごめん、誰だっけ」
「ナミですよ、カールさん。一週間しか一緒にいなかったから、覚えてないの無理ないですけど。俺もリリィさんは十歳はサバ読めると思います」
「それ、言いすぎだから」
と百合香は笑った。「ジョージ、スペシャルゲストってカールのことだったの?」
「いや、違います。この後、もっとスペシャルな人が来ますから」
「誰よ、いったい」
「内緒です」
すると、背後から百合香に圧し掛かってきた女がいた。
「リリィさァ〜ん、私もいるのに〜〜」
「はいはい、竹下さん。あなたもう酔ってるの?」
半年前までいた主婦パートの竹下さんだった。百合香より五歳下だが、見た目は……。
時間が経つにつれ、宴もたけなわになり、メインのお鍋がすっかり煮えたころ。百合香が同じテーブルのみんなの器によそってあげようとしたところで、入口の障子が開いた。――それに一番に気づいたのはジョージだった。
「あっ! やっと来た! はい皆さ〜ん! スペシャルゲストの登場ですよォ」
誰? と思って皆がその方を向くと……。
「みんな、久し振り……」
黒いスーツ姿の長峰翔太が立っていた。
「……長峰くん……」
百合香の手から器が落ちそうになったので、ナミはあわててキャッチするのだった。icon
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from: エリスさん
2011年02月04日 11時46分53秒
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「夢のまたユメ・9」
「夕飯ならもう食べたわよ。お兄ちゃんはまだ。っていうか、お兄ちゃんまだ帰ってきてないし。そうよ。毎晩帰り遅いんだから。だから夜はいつもキィちゃんと二人だけでまったりしてるわ……え? なに?」
父・一雄は新潟県で整体師をしていた。そこが一雄の生れ故郷で、無医村と言っても過言ではない環境だったので、六十歳の時に一念発起で引っ越したのである。本当は妻であり、百合香たちの母である沙姫(さき)を連れて行きたがっていたのだが、沙姫本人が「そんな山奥では生活できない」と断ったのである。なので沙姫が死んだ時も一雄は新潟県から夜中に車を飛ばして駆けつけたのだった。
ちなみに一雄は言語障害者なので、会話は家族でないと通じないことが多い。
「いつまでも猫とばかりいるなって言われても……いないわよ、彼氏なんて。……分かってるわよ、私だって。早く子供作らないと年齢的にも困るし、宝生家としても後継ぎがいないし……でもそれ、お兄ちゃんの方こそお嫁さん見つけないと……はい? 見合いって、そのご近所の人の……ああ、妹さんね。でも、それってただでさえ国際結婚じゃないの。それってどうなの?」
父の住んでいる近所に中華人民共和国からお嫁にきた人がいて、そのお嫁さんがかなり「できる嫁」なので、その人の妹さんを百合香の兄・恭一郎と見合いをさせたい、と一雄は言っているのだが……。
「そういう話はお兄ちゃんとして。私は恋愛結婚以外興味ないけど。それじゃ、今ネットにつなぎっぱなしだから、切るわよ」
百合香はそう言って携帯電話の通話を切った……。
『お父さんの心配も、分らないわけじゃないんだけどね……』
こればかりはどうしようもない。恋愛も結婚も、すべては“縁”である。
しかし、宝生家にとって深刻な後継ぎ問題が生じていることも確かである。一雄は宝生家の長男なのだが、身体障害者ということもあって後継ぎを辞退し、弟に譲った。だがその弟夫婦にはとうとう子供が生まれなかった。そこで恭一郎と百合香に御鉢が回ってきたのだが――恭一郎は四十一歳、百合香も三十九歳、どちらもいい歳なのに独身なのである。恭一郎が誰かと結婚して子供を作るのが一番いいのだが、いかんせん、この兄はあまり恋愛に興味のない男なのだ。
そうなると頼みは百合香のみだが、以前の会社でセクハラ事件があった為、男性恐怖症に陥ってしまった期間もあり、これまた相手を見つけるのが困難になっていた。
『……まあ、好きになった人がいなかったわけじゃないけど……』
会社勤めをしていた時に好きになった男性がいたし、シネマ・ファンタジアに勤めてからも、いる。
いま書いている小説に、その人をモデルとしたキャラクターが登場していた。
『長峰君……今頃、なにしてるのかなァ……』icon
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