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from: エリスさん
2011年03月29日 14時39分38秒
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「夢のまたユメ・17」
その映画館は、最寄り駅から徒歩8分はかかるところだった。
「この遠さは不利だね……」
翔太が言うと、百合香は大きくうなずいた。
「うち(シネマ・ファンタジア)と同じくショッピングモールの中にあるから、お客さんが集まりそうなものなんだけど、とにかく駅から遠いいのよ。そして、駅から来たお客さんが一番使うであろうこの入り口から、映画館は一番遠いところにあるのよね」
「ファンタジアは駅側の入り口からエレベーターで3階に上がるだけだもんな」
「おかげで、うちの常連客をこっちに取られることはなかったんだけど……でも、こっちの映画館はうちではやらないような作品も上映してるから、それなりに繁盛はしているみたいよ」
二人が映画館に着くと、チケット売り場にはけっこうな人が並んでいた。さすがに祝日だからであろう。そうでなくても人気作の初日である、多少混んでいることは予想していた。
チケット売り場前に掲示されている上映時間を見ると、二人が見ようと思っていた「シュレック フォーエバー」は20分も前に始まっていた。
「他の作品でいいわよ。今は面白い作品いっぱいやってるし」
と百合香が言うと、翔太は、
「そうだね。えっと、この混み具合から察するに、今から30分後ぐらいの作品だったらチケット買えそうかな……」
と、上映時間を指差しながら確認していった。すると、
「仮面ライダーならちょうどいい時間だけど……」
「あっ! 見たい!」
と、咄嗟に百合香は言った。
「へ?」と翔太は驚いた。「リリィ、仮面ライダーは休みの日に見たんだろ?」
「見たけど、もう一回見たい! すごくカッコいいの、最初の話が」
「最初?」
「三部構成なの。最初が仮面ライダースカルの誕生秘話でね……」
「待った! 皆まで言うと面白くない。リリィがいいならそれにしよう。俺も見たかったし」
かくして、二人は「仮面ライダー×仮面ライダー」を見るためにチケット売り場に並んだのだった。icon
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from: エリスさん
2011年03月29日 12時05分58秒
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先日、変なメールが届きました
「削除完了」という件名で、infomation@xx●●●gggggggiiiii3333333gnnnnn.netというところから届いたのですが、(そのまま書くと誤って読者様がクリックしてしまうかもしれないので、一部伏字にしました)私にはなんのことやら「?????」状態で、とりあえず今日まで放っておきました。
それで久しぶりにネットカフェに来たのでネット検索してみたところ、いろんな人のところに届いている迷惑メールだということが分かりました。
特にジャニヲタのところに届いているとか.......はい、納得です。ジャニーズ関係のWebサイトにも登録してますし、ネット販売でキンキキッズのDVDなども買ってますから、そこら辺から私のアドレスが漏れたんでしょう。
それにしても、この震災の直後に迷惑な話だ。とりあえず着信拒否にしておきましたが、それでも駄目ならメアド変更するので、その時は関係者の皆様、お手数かけますがよろしくお願いします。-
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from: エリスさん
2011年03月25日 11時02分04秒
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節電よりも切なる物
今日は給料日なのですが…………………………。
仕方ない、地震のせいで一週間も仕事が出来なかった上に、2月は28日までしかなかったのだから。
我が家にパソコンがない私としては、ネットカフェに行く回数を減らすしかありません。
今日は休載し、来週は金曜日にならないうちに更新したいと思います。-
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from: エリスさん
2011年03月17日 16時15分46秒
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木曜日なのに
いつもより一日早く更新しました。
というのも、私が勤務している映画館――ただいま休業中なのですが、土曜日から営業再開することになりまして、なのでその前日である金曜日に急な出勤になるといけないので、今日更新することにしたのです。
一週間は長かったです.......。
地震で被害にあわれた人はもっともっと辛い目にあっていることは、重々承知なんですが、それでも、この一週間「仕事ができない」苦しみと虚無感は、本当に辛いとしか言いようがなかったんです。
なんかもう、母が死んだばかりで引き篭もりになってしまった昔に、戻ってしまったような恐怖感があって...。
なので、仕事復帰できることが本当に嬉しいです――不謹慎だと分かっていても言わせてください。本当に嬉しくてしょうがないんです。
「冬は必ず春となる」
私が崇める日蓮大聖人の言葉です。本当にこの言葉だけが支えでした。
早く、誰の元にも春が来てくれるといいな、と思っています。-
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from: エリスさん
2011年03月17日 14時33分21秒
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「夢のまたユメ・16」
百合香のシフトは毎週木曜日が必ずお休みで、火曜日は出勤できるスタッフが少なかった場合のみ出勤なので、大概は手が足りているのでお休みになる。金曜日も休みではあるが、この日は必ずネット小説を執筆する日にしているので、事実上休みではない。
というわけで、火曜日の休日にしっかり「仮面ライダーオーズ&W feat.スカル」を堪能した百合香は、水曜日の過酷な労働にも耐え抜き(毎週水曜日は“レディースデイ”と言って、どこの映画館も女性は千円で鑑賞できるので、平日なのに来客数が多い)、次の日を迎えた。
12月23日木曜日(祝日)――翔太との初めてのデートである(仕事帰りのお茶会を抜かせば)。
その日は緊張のせいか早く目が覚めてしまい、仕方ないので早々と家事を始めた。洗濯機にスイッチを入れてから、台所で朝食を作り、それも終わるとカーペットの掃除を始めた。粘着シールが回転してゴミを取る通称“コロコロ”で、しゃがんだまま掃除をしていると、百合香の足の間を姫蝶がくぐってきた。そして百合香のことを見上げて「みにゃあ♪」と鳴くので、
「ハーイ、キィちゃん」と百合香は返事をした。
すると姫蝶がさらに顔を上げてくるので、百合香も顔を近づけてやると、姫蝶は自身の鼻を百合香の鼻にツンツンっとくっ付けてきた。
猫が鼻先で突っついてくる行動は、その人(物)のことが「大好き!」という意思表示である。なので百合香は、
「ありがとう! お姉ちゃんも大好きィ!」
と、姫蝶のおでこに自分のおでこをこすりつけた。
起きてきた兄・恭一郎はそれを見て、言った。
「なにをやっている、妹よ」
「なにって、キィちゃんと愛情を深め合ってるの」
「傍から見たら馬鹿みたいだぞ」
「いいんだもん、ここには私たちしかいないから。ねぇ? キィちゃん」
「みにゃあ♪」
「そうか……まあいい。朝ごはんできてるか?」
「テーブルに置いてあるよ」
百合香は姫蝶を抱き上げると、まだ頬ずりなどしていた。
「大丈夫か? また喉にキィの毛が入ると、発作がおきるぞ」
恭一郎がそう言うので、百合香は姫蝶から顔を離してから言った。
「ちゃんと口は閉じてるから大丈夫よ。それにこのごろは体調がいいから、咳も痰も出ないし」
「ならいいが……医者にも病名が分からなかったんだからな、気をつけろよ」
「うん、分かってる」
正確に言うと、内科の病院に行ったところ「専門の病院でないと分からないですね」と言われたのであって、だからちゃんと専門の病院に行けば分かるのだろうが、それによって姫蝶を手放さなくてはならなくなるといやなので、あえて百合香が行かないだけなのである……とりあえず、症状は喘息に似ているのだが、そこまでひどくはない(痰が出ないときは全然普通)。症状が出ても、一週間分お薬をもらって飲んだだけで治ってしまうので、百合香自身はあまり重く考えてはいなかった。
「ところで、百合香」と兄はご飯をよそいながら言った。「今日は出かけるんじゃなかったか?」
「うん、お昼前に出かけるよ。お兄ちゃんはお休みでしょ?(恭一郎も木曜日を定休にしている)」
「ああ。だから今日は家でゆっくりしてる。祝日じゃどこへ行っても混んでるからな」
「うん、そだね」
「おまえも帰りが遅くならないように気をつけろよ。キィが寂しがるからな」
「分かってる。いつも仕事から帰ってくるぐらいの時間に帰るから」
恭一郎には「彼氏ができた」ということは報告してあるが、兄としてあえてそこは触れずに話を進めている――気にならないわけではないだろう。四十歳間近の妹に、ようやくできた彼氏なのだから。
『まあ、そのうち紹介するから、いいか!』
百合香はそう思いながら、姫蝶を抱き上げたままご飯の場所まで連れて行った。
11時に駅前で待ち合わせをしていた二人は、その十分前に会うことができた。百合香が駅前に着いたら、ちょうど翔太も改札から出てきたのである。
「今日はどこへ連れて行ってくれるの?」
デートプランは俺に任せて! と翔太が言っていたので、さっそく百合香は聞いた。
「先ずは、映画見ようよ。共通の趣味だし」
「いいけど……まさか、ファンタジアで?」
翔太が歩き出している方向が、まさにシネマ・ファンタジアの方向だったのである。
「え? だめ?」
「だめ……だね。かよさんに怒られちゃう」
今日は「相棒 劇場版Ⅱ」と「イナズマイレブン 3D」の初日で、しかも祝日である。かなりの来客数が予想される。
「今日の入場口の担当、かよさんなのよ。いくらこっちは休みとはいえ、同僚が大変な思いをしているときに、客として行けないわ」
「ええ〜、だってリリィ、休みの日によく見に来てたじゃん」
「それは平日のすいている日でしょ? 火曜日とか。今日は祝日よ、場合が違うわよ」
「ええ〜〜〜〜、どうしよう……」
11時という、ちょっと中途半端な時間に待ち合わせをした理由がようやく分かった。
「11時半のシュレックを見ようと思ってたのね」
「うん、そう……」
「だったら他の映画館にしましょう。休日でもそれほど混んでいない映画館を知ってるから」
「それって、出来たばかりのころは〈ファンタジアのライバル店になるんじゃないか〉って言われた、あの?」
「そう。でも、立地条件が悪くて、たいしてこっちに影響が出なかったという……。私、たまに利用してるのよ。ファンタジアでは上映していない作品をやってたりするから」
「そうだね。じゃあ、そっち行こうか」
その映画館は、ここから30分はかかるところにあった。icon
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from: エリスさん
2011年03月12日 18時25分02秒
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from: エリスさん
2011年03月12日 03時33分00秒
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読者の皆さん、ご無事ですか?
皆さん無事ですか?
私は東京に住んでいるのですが、携帯電話が復活したのが夜中の2時で、ようやく兄・三菜斗岬(木堀ZO)とも連絡が取れました。
今日は私が勤務する映画館も営業休止になってしまい、自宅待機してます。-
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from: エリスさん
2011年03月11日 12時07分16秒
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「夢のまたユメ・15」
「と、まあ、キィちゃんの意外な一面が分かったのよ」
百合香は携帯で話をしていた。「翔太も誘いたかったけど、そっちは仕事があったんでしょ」
「そう、今帰ってきたんだ」と、電話の向こうの翔太が言った。「今ちょうどお袋が夕飯をあっため返してくれてるところ。こっちはから揚げ定食みたいだな」
するとそこで翔太の母親が「定食とか言わないの!」と笑いながら怒っているのが聞こえた。
「え!? 翔太、どこで話してるの?」
「キッチンだよ。夕飯食べようと思って、待ってる間にリリィに電話したの」
「そ、そんなところで……」
会話が家族に丸聞こえである……そういうことを気にしない、おおらかな家族なんだろうか?
『いい家庭に育ったんだろうなァ』と百合香は思った。
「それで、姫蝶ちゃんはもう落ち着いてるの?」
と翔太が聞くので、
「うん、もう平気。みんな帰ってからは、のびのびと私のコタツの中で寝てるわよ」
「猫はコタツで丸くなるんじゃないの?」
「いつもはそうなんだけど、なんかもう、解放された気分からか、両手両足をグイーンっと伸ばして、ときどきごろごろと寝返りを打ってるわ」
「本当に知らない人が嫌だったんだね。(^_^; そうなると、俺が遊びに行っても嫌がられるかな」
「初めのうちはそうかもしれないけど、まあ、慣れれば……」
保障はないが……。
「ところで姫蝶って、お濃の方から取ったの?」
「あ!? そうそう! 翔太大正解!」
「ふっ(笑)、やっぱな。歴史関係は任せてよ」
と、翔太が格好つけたところで、母親が割り込んできた。
「ご飯ができたわよ」
「あっ、ありがとう……じゃあ、リリィ。今度は23日だよね」
「そうよ。あなたも私もお休みだから(12月23日は天皇誕生日で祝日)」
「また後でメールするよ……」
と翔太が言っている最中に、母親によって携帯が奪い取られた。
「もしもし、百合香さん? 翔太の母でございます」
いきなり母親が出たので、百合香は一気に緊張した。
「お、お母様!? 夜分遅く失礼いたします!」
「あらあら、ご丁寧にどうも」
電話の向こうでは、翔太が携帯を取り戻そうとしているのが聞こえてくる。
「今度ぜひこちにらにも遊びにいらしてね。百合香さんはコーヒーと紅茶、どちらがお好きかしら?」
「私は紅茶が好きですが……」
「あら奇遇ねェ、私も紅茶のが好きなの。どの銘柄がお好き?」
「あの……ネプチューンが一番好きです」
「ネプチューン? あら、なにかしら? お笑いタレントのあの人たちのお茶?」
「あ、いえ!? そうではなく……ルピシアというお店から出ている紅茶なんですが、茶葉に蜂蜜が練りこまれていまして……」
「まあ! おいしそう!」
「母さん! いい加減に返せよ!」と、ようやく翔太は携帯を奪い返した。「ごめんリリィ、またね」
「うん、またね」
そこで通話が切れた。
百合香は深いため息をついてから、思った。
『本当に楽しそうな家庭だな……』
百合香は死んだ母のことを思い出してみた――とても厳しい人で、かなり束縛もされたが、結局嫌いにはなれなかったのは、やはり血のつながりというものなのか。楽しい思い出はあまりない。
『仕方ないか。お母さんは、生まれて育った環境がひどかったから、どうすれば子供と楽しく過ごせるか、教わってこなかったのよね』
そんなとき、コタツの中から姫蝶が顔を出した。
「みにゃあ!」
「ハイ、キィちゃん……キィちゃんは私が母親代わりで、楽しい?」
「みにゃあ!」
「そう、ありがとう」
百合香はゆっくりと姫蝶の頭を撫でてあげた。icon
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from: エリスさん
2011年03月04日 12時06分32秒
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「夢のまたユメ・14」
「ユリアス、最近付き合い悪い……」
と、ユノンはむくれながら百合香の右腕にしがみついた――月曜日の仕事終わり、更衣室でのことである。
「こォら(^o^) 着替えられないでしょうが!」
「着替え終わったら、ミネさんのところに行っちゃうんでしょ?」
「今日は会わないわよ。向こうも仕事で忙しいんだから」
「だったら離してあげる」
ユノンが愛らしい笑顔で離してくれたので、百合香も怒れなくなってしまう。それを見ていたかよさんは、
「リリィ、モテモテだね」とからかった。
「まあ、姉御冥利につきますが……」
と百合香は言いながら、セーターを頭からかぶった。「おかげでデート代がかさみます」
「そうだよね。今までは仕事終わりのお茶会だけで済んでたけど。でも彼氏ができるってそういうものだから」
「ですよね」
「じゃあさあ、じゃあさあ」
とすっかり着替えを終えたユノンは言った。「お店に入らないで、誰かの家に集合すれば? それこそユリアスの家に行っちゃえば、私、ユリアスの家事のお手伝いもしてあげる」
「それって……ついでに私からお料理習おうって魂胆では?」
「え? バレた?」
「バレるわよ。でも、いいかもね。チアキ(谷川千明。ユノンの恋人)に美味しいもの造ってあげたいんでしょ?」
と、いうわけで………。
「ごめん、連れてきた」
「いや、別にいいが……」
月曜日が定休日の兄・恭一郎は、百合香が職場の同僚5人を連れて帰ってきたとき、黒のジャージ姿で居間 兼 仏間でごろ寝をしていた。
「この部屋、使っていいでしょ? っていうか、お兄ちゃんも混ざる? これから夕飯作るし」
と百合香が言うと、ユノンがレジ袋を見せながら言った。
「今からお鍋作るんです」
「ああ、じゃあ……出来たら呼んで。自分の部屋にいるから」
と、恭一郎は襖を引いて、隣の部屋に入ろうとすると、百合香の同僚の内の男子――ナミと、マツジュンこと松本純一は、「おお!!」と感嘆の声を上げた。それは……。
「すごい! 仮面ライダー勢ぞろい!」
「怪傑ズバットまであるじゃないですか!」
「ん? 何、君たち好きなの?」
恭一郎はアキバ系オタクなので、部屋中に特撮ヒーローやアニメキャラクターのフィギュアが飾られているのである。
「俺はイケメン俳優が演じてる特撮が好きなんですが……」
とナミが言うと、マツジュンが押しのけた。
「僕は特撮もアニメもみんな好きです!」
「そう……じゃあ、見る?」
「見せてください!!」
百合香はそのやり取りを聞いて、『私の人選に間違いはなかったな』と思った。兄が疎外感を持たないように、わざとそっち系の話がわかる二人を連れてきたのである。そんなうちに、姫蝶が階段を駆け上がってきて、居間に入ってきた。
「みにゃあ……」
姫蝶が遠慮がちに鳴くと、女子たちは口々に「かわいい!」と近寄っていった。
「確か女の子だよね? 名前なんだっけ?」
と、かよさんが聞くので、
「姫蝶だよ。お姫様のチョウチヨって書いて。呼び名はキィちゃん」
と百合香が答えると、ぐっさんが突っ込んだ。
「ナニ? その小難しい名前。どっから取ったの?」
「聞く人が聞けば分かるのよ。じゃあ、かよさんと、ぐっさんはここでキィと遊びながら待っててください。私とユノンは料理してきますんで」
台所は一階にあった。そこで百合香は、ユノンに「大根と豚肉とキノコの鍋」を教えながら作り始めた。
「出汁はちょっと濃い目に、お醤油は薄めで……これぐらいの濃さよ。見て覚えて」
「大根ってどれくらいの大きさに切るの?」
「これくらいの厚みで、今日は半円型でいいかな? 人数多いから。いつもは二人だけで食べるから輪切りにしてるんだけど……」
数十分後、出来上がったお鍋と、お皿いっぱいに造ったおにぎりを持って二階に上がると、居間はそれなりに盛り上がっていた。
「これだけ他のとは違ってて、こうすると……」
恭一郎があるおもちゃの先端を手の甲に当てると、おもちゃが「テラー!」と低い男の声で鳴った。
「おお! すごい!」と、マツジュンは感動していた。
「これだけガチャポンじゃなく、ふつうに買ったものなんだよ」
「あっ、リリィさん! お兄さん凄いです! 何十種類ものガイアメモリ持ってるんですよ!」
なので百合香はテーブルにおにぎりを置きながら言った。
「私も持ってるよ、ジョーカーだけ。お兄ちゃんがくれたの……はい、この鍋敷きの上において」
最後の方はユノンに言ったものだった。
「ハーイ! 次は?」
「お鍋を食べる器もってこないと……足りるかな?」
そこへ姫蝶が駆け寄ってきて、百合香の足に体をこすり付けてきた。
「ハイハイ、キィちゃん。もうちょっとお姉さんたちと待ってて」
「みにゃあ!」
「ん? 嫌なの?」
「あのね、キィちゃんね」と、ぐっさんが言った。「さっきからナミが触ろうとすると怒るんだよ」
「あら、どうして?」
百合香は姫蝶を抱き上げて、ナミの方へ行ってみた。
「可愛いから、触りたいんですけど……」
と、ナミが姫蝶の頭に触ろうとすると、
「シャアー!!」
と、姫蝶は威嚇の声を上げた。
「ホラ、怒るんです。俺、何も悪いことしてないんですけど」
「ん〜? なんでだろ。かよさん達は平気なんですか?」
「私達は平気だよォ」
なので百合香はかよさんとぐっさんのところへ姫蝶を連れて行くと、あまり喜んではいなさそうだが、姫蝶は黙って二人に頭をなでさせた。
「うん……もしかして。マツジュン、触ってみて」
「いいですか? それじゃ」
マツジュンはこっちへ来ると、そうっと姫蝶の頭に手を伸ばした。すると、
「シャアー!!」と、牙をむき出しにして姫蝶が怒る。
百合香は普段から姫蝶が、兄にも父にもあまり懐かないことから考えて、結論を出した。
「そっか、キィちゃんは男の人が苦手なのね」
「みにゃあ」
「ええ!? それって、まんまリリィじゃん!」
ぐっさんが言うと、かよさんも言った。
「ペットは飼い主に似るんだね」icon
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