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from: エリスさん
2014年11月28日 09時01分14秒
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久しぶりに投稿しました。
しばらくもう一方の「神話読書会」に集中していたので、こっちがおろそかになってしまって、すみませんでした。
読者の皆様はもう「淮莉須 部琉はこっちを見捨てたのかもしれない」とお思いかもしれませんが、そんなことはありませんので、どうぞお許しください。-
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from: エリスさん
2014年11月28日 08時57分56秒
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夢のまたユメ・103
「それで?」
と、長峰紗智子は言った。「百合香さんとのデート、楽しかったんじゃないの?」
紗智子の問いに、小坂馨は俯き加減に言った。
「楽しかったよ、途中までは......」
ここは紗智子が行きつけにしている飲み屋の個室で、馨はルーシーの格好をしていた。「でも......」
「でも、どうしたの?」
紗智子としては、秘密を知っているとは言え、あまり馨と親しいわけではない。それでも、相談したいことがあるというから、呼び出しに応じてあげたわけだ。それなのにもじもじと話を先延ばしにされると、ちょっとイラッとくる。
「相談相手、私じゃない方が良かったんじゃない?」
紗智子は言ってから、焼酎を一口飲んだ。
「ごめんなさい......でも、僕の秘密を知ってるのは、後はナミ君とユノンだけだから......」
「ユノンちゃんに相談すれば?」
「ユノンは、すでに百合香さんの相談に乗ってるっぽいの」
「つまり消去法で私だったわけね......まあ、いいけど。それで? なにがあったの?」
「......映画見てから、ホテルに誘ったんです」
「それって、ラブホ?」
「はい......」
「百合香さん、妊婦なんだけど?」
「それでも、僕たちの場合、大丈夫なんです。僕が女役だから......」
「ああ、そうなのね」と、余裕の表情で答えつつも、紗智子は内心恥ずかしがった。
「それで?」
「それで......行ったラブホが......」
百合香が翔太に"初めて"をあげたホテルだった。そもそも映画を見に行ったのも、二人が初デートをした映画館だった。ファンタジアに行けないとなると、他に近場の映画館はそこしかないからである。そうなれば、そこから近いホテルを探そうとすれば、同じ場所に辿り着くのも当然と言える。
なので、百合香がホテルに入るのを拒否したのだった。
結局、二人は百合香の家に帰ることにしたのだが......。
「なんか、そんな話されちゃったら、僕の方ができなくなっちゃって......」
馨のその言葉を聞いて、紗智子は焼酎を一気に飲み干した。そして店員を呼び、焼酎を二杯分注文した。
「道徳的に言えば、妊婦に欲情してるんじゃないわよ」
「ごめんなさい......」
「でもまあ、そこは百合香さんが同意しているのなら、私が口を挟むことじゃないんだけど......」
そこで焼酎が届いて、紗智子は店員が部屋から出るのを待って、言った。
「つまりあなたは、百合香さんが翔太との思い出を大事にしているのが、気に食わないって言うのね」
「気に食わないって言うか......」
「そうでしょ? 百合香さんが、そのホテルで翔太に純潔を捧げたから、その思い出を大事にするあまり、あなたとの情事で穢したくない......そう言う風に考えたのが、嫌だったわけでしょ?」
「......まあ、そうです」
「あなたって、まだまだ子供なのね」
紗智子はまた焼酎をぐいっと飲んで、言った。「あのねェ、人にはそれぞれ過去ってものがあるの。あなたにだってあるでしょ? 百合香さん以外と付き合ってた過去が。だったら、百合香さんが過去を大事に思ってることも理解してあげなきゃ」
「......」
馨にとって過去の恋愛は辛い事ばかりだったのだが、そこは言わずに黙って聞いた。
「それに、あなた達って百合香さんの家でデートしてるんでしょ? それって翔太も同じだったから、それこそ、百合香さんの家には翔太との思い出がごろごろ転がってるのよ。それなのに、ホテル行くのを拒絶されたぐらいで落ち込んでるようじゃ、この先やっていけないわよ。どうするの?」
「そう......ですよね」と、馨はため息を付いた。「結局、僕が大人にならないといけないのね」
「そうよ。それが嫌なら、百合香さんと別れなさい」
「それは、イヤ......」と、馨は目の前の烏龍茶をごくごくと飲んだ。「僕にはもう、百合香さんしかいないの。百合香さんしか、僕を理解してくれる人はいないもの」
「だったら、翔太のことはもう気にしない事よ」
紗智子はそう言うと、もう一杯の焼酎を馨に差し出した。「飲んでみる?」
「僕、そんなに強いお酒は飲めないわ。酔っちゃうから......」
「酔ったら、私が介抱してあげるわよ」
「ええ~.........エッチ(#^.^#)」
「コラコラ(^_^;) 違うから!」
数日後。紗智子はお茶菓子持参で百合香のもとを訪ねた。百合香はちょうどその日の仕事を終えたところだったので、早速お茶会を開くことにした。
紗智子が訪ねてきた理由は、当然、馨のことを百合香に話すためだった。
話を聞いて、百合香も恐縮せずにはいられなかった。
「ごめんね。紗智子さんにまで迷惑を掛けて......」
「ううん、いいの。百合香さんの為だったら、私なんでもしちゃう」
紗智子はそう言いながら、クッキーをかじった。「それに、なんか嬉しかったし」
「嬉しいって?」
「百合香さんがね、翔太との思い出を大事にしてくれていることが」
「それは......女って誰でもそうじゃない? 初めての男性って、特別だから......」
「うん、そう言えれば幸せだよね......でも、そう思えない人だっているんだよ」
「そう、なの?」
「現に私の初めての彼氏って、私の他にも女がいることが分かって、修羅場の果てに別れたのよ。そんな男、もう思い出したくもないわ」
「そうだったの? 初耳......」
「そりゃそうよ。家族にも内緒にしてたもの......でも、私はまだその程度だからいいけど、世の中にはもっと酷い体験をしている人だっているから、その人たちにしてみれば、初めての男なんか思い出したくもないって思ってるはずよ。だけど、百合香さんはそうじゃない。誰にも穢されたくない思い出として存在していて、それが私の実の弟だっていうのが嬉しいのよ」
「紗智子さん......」
「まあ、そんなわけだから......馨さんのことも、少し気にしてあげてね」
「ええ、そうするわ......思っている以上に、ナーバスなのね、あの子」
「それも仕方ないかもね。自分の障害のことで、きっといろいろと悩んできたんだろうし」
「そうね......」
百合香はそう答えると、どうしたらいいのか、ティーカップを両手で持ちながら考えるのだった。-
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