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恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜

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  • from: エリスさん

    2008年02月07日 00時00分19秒

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    贖罪

    前もって告知しておきます。次の小説アップは金曜日の午後です。

     これから書くことは、本当なら「猫の知恵袋」に書くべきことです。でも兄がオーナーを務めているそのサークルで、妹の私が暗いことばかり書くのは、兄にとってもイメージダウン。
     でも、自分のこの罪を隠しておくのは、卑怯だ。
     姫への贖罪のためにも、自分がオーナーを務めているこっちのサークルで書かせてください。
     小説以外の話は読みたくない、という読者の方は、どうぞこの項目は飛ばしてくださって構いません。





     昨日は休日で、一人で家にいたせいもあったのか、新作を書きながらも、ペンを止めて考え込む時間が多かった。
     なにを考えていたのかと言うと、うちの猫ちゃん達のこと。
     猫としてありえない話だが、姫は公太に傍にいてほしいとせがみ、公太もそれに応えている。今まで恋に冷めていた、あの公太が! ちゃんと姫を労っている。
     普通の母猫なら、赤ちゃんを守るために、夫猫さえ威嚇するものなのに。
     そんな二匹を見ていたら、姫が羨ましくて、嫉ましくさえ思えた。
     愛する男の子供が生めた姫――私には、もう一生訪れない幸福。
    36年生きてきて、もうその希望を諦めなくてはいけない私に対して、姫はたった2年で遣り遂げてしまった。この不公平さは、いったいなんなんだろう。
     猫に嫉妬したところで、どうしようもないことは、分かっている。人間と猫では生活スタイルも違うのだ。
     でも、愛する男の子供を産む、ということを、一番身近でやられてしまった私としては、昨日の段階では、もうどうしようもなく悔しかったのだ。
     もしかしたら私は、産むどころか、作る段階で拒否反応が出る可能性が高いから――初体験の相手が女だったんで――それプラスこの年齢。どっかのミュージシャンの失言じゃないけど、女の限界にもう到達しているかもしれない。
     それが分かっているだけに、悔しい。
     それでも、姫の世話をするときは、極力そのことを考えないようにしていた。破水の時に汚れたシーツを取り替えるので、姫たちを巣箱から出した時、姫はなるたけ私の言うことを聞いていた――赤ちゃんがちょこまかするので、一ヶ所に固まらせておくのが大変だったみたいだけど。

     兄が仕事から帰ってきて、私が巣箱の中を掃除して、赤ちゃんの数も数えたことを話すと、

     「姫ちゃん、あっこには赤ちゃん触らせたんだ。じゃあお兄ちゃんも触れるかな」

     と、兄が姫のゲージに行くと、途端に威嚇された。

     「ええ〜、なんでお兄ちゃんには駄目なの?」
     「私にはそんな声ださないよ」
     「じゃあ、あこちゃんがやってみて」

     兄の代わりに私が姫のゲージの前に立つと、姫はぴたりと威嚇の声を止めた。

     「ほら、平気でしょ」
     「子猫も出せる?」
     「さっきは触らせてくれたから……」

     私は姫の頭を軽くなでてから、赤ちゃんを一匹つかんで、兄の前に差し出した。

     「ほら、姫ちゃん怒らないよ」
     「いいなァ、あこちゃんばっかり」
     「そりゃお兄ちゃん、私は……」

     私は、姫の「母親」なんだ――姫はそう思ってくれている。だから、赤ちゃんに触ることを許してくれていたのだ。
     私はその「信頼」を、みすみす手放すところだった。
     女になりすぎて、私は母親の心を忘れてしまっていた。母親として、娘の出産を喜ぶべきなのに、なんて馬鹿だったんだろう。

     ごめんね、姫。
     もう、あなたを嫉んだりしないから。
     出産おめでとう。良かったね。ちゃんと育てるんだよ。

     そんなわけで、私には今、4匹の孫がいます。
     里親も探していますが、一匹は手元に残す予定です。

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