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  • from: エリスさん

    2008年03月14日 12時35分37秒

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    2サークル共通「鹿男あをによし」をエリス的に解説

     最近暗いことばっかり書いているので、ここらで楽しい話を。

     神話と古代史、平安文学などを書いている私としては、あのドラマは実に興味深い――今風に言えば「ぶっちゃけ楽しんで」ます。
     でも、それらに詳しくない人には、ちょっと難しいかな? という点もあって……でもそれすらも、フジテレビ側としては優しく直している節があり。
     詳しい人には「ここ間違ってない?」とツッコミを入れたくなる点を、「いや、それはテレビ局側の優しさだから」とフォローを入れたくなったので、書かせていただきます。


    ◆そもそも「あをによし」って何?
     「青丹(あをに)」というものがあるんです。私の手持ちの資料には「青黒い土」としか載っていないのですが、染料にでもしていたのかな??? これが古代において多く産していたのが奈良県でした。そこから、和歌のときに奈良に掛かる枕詞として使われるようになった言葉が「あをによし」。国内(くぬち)に掛かることもあったそうです。


    ◆「八百万の神々」
     中井貴一さんがナレーションを入れている冒頭部分に、「その昔、日本には800万の神々がいて……」って文章があるんですが。
     古事記や日本書紀では、「八百万の神々」のことを「やおよろづのかみがみ」と読みます。それだけ日本にはたくさんの神様が山川草木に散らばっていたんです。
     ここでまず、歴史好きな人なら「やおよろづって読めよ!」っとツッコミたくなるでしょうが(^_^;
     実際に「八百万」という漢字を見ながら「やおよろづ」と読めば、あまり歴史や古典に詳しくない人でも「800万のことか」と理解できるでしょうが、いかんせん、ナレーションは声だけで表現するもの。実際に漢字を見せているわけではありませんから、ただ「やおよろづ」と読んでも、視聴者に伝わらない可能性の方が高い。
     だからわざと「800万」と読んでいるのではないかと、私は思っています。


    ◆「比売命」はありえない!
     昨日の放送で、銅鏡に彫られていた卑弥呼の本当の名前は「比売命」だとされていましたが、これも歴史好きには「ありえない!」と怒りたくなるポイント。
     だけど、これも優しさですよ。「やおよろづ」と同様にね。
     1800年も前に作られた銅鏡なら、当時使われていた漢字は、ほとんどが旧字体。だから「比売」は「比賣」と書かなくてはならない。
     だけど、視聴者の中で「賣」が今の文字に直すと「売」だと、判断できる人がどれだけいるでしょうか。
     ドラマは一部の人にだけ理解されても意味がない。万人に喜んでもらえるように作らなければならないから、これはきっと苦渋の決断だったと思います。
     それにしても「比売命」を卑弥呼の本名だとするには、ちょっと簡単すぎない?
     「比賣」「毘賣」「媛」「姫」――これらすべて「ひめ」もしくは「びめ」と読みますが、これは女性の名につける美称です。この美称の前に本名が付くのが当たり前です。
     ちなみに古事記の中に「息長帯比賣命(おきながたらしひめのみこと)」という人が出てきますが、大和朝廷ではこの人が中国で言う卑弥呼ではないか、と位置づけています。
     どんな人かと言うと――。
     景行天皇(けいこうてんのう)の王子・倭建命(やまとたけるのみこと)が遠征先で亡くなり、天皇の跡は建の異母弟・若帯日子命(わかたらしひこのみこと)が継ぐことになります――成務天皇(せいむてんのう)です。しかし成務天皇には跡継ぎとなるべき男児がなく、次に天皇となったのは建とその正妃・布多遲能伊理毘賣(ふたじのいりびめ)との間に生まれた帯中津日子命(たらしなかつひこ)でした――これが仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)になります。
     息長帯比賣命(おきながたらしひめのみこと)はこの仲哀天皇の正妃(皇后)になります。俗に神功皇后と呼ばれ、その名のとおり神がかりになったりしてお告げを話す、シャーマンでした。彼女は亡き夫に代わって新羅(朝鮮)に遠征に行っています。そういったところから、この人が中国で言う卑弥呼ではないかと、言われるようになったんです。
     そうでもしないと、日本の歴史に「卑弥呼がいない」ことになってしまいますから。かと言って、卑弥呼そのものの存在を認めてしまうと、「天皇は天照大御神の子孫」という言い伝えを覆してしまうことになるので、古事記や日本書紀を編纂した天武天皇・持統天皇時代の学者たちは、辻褄あわせに大変な苦労を強いられたようです。

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