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恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜

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  • from: エリスさん

    2009年01月30日 11時27分59秒

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    「誰も守ってくれない」を見て

     「感想はネットの方に書くね」

     そう同僚に約束して、もう三日も経ってしまった。
     この映画はテーマがテーマなだけに、同僚たちも見るのに二の足を踏んでいるのだろう。だからこそ、私からの感想を聞いてから見るか見ないか決めようと思っているらしいのだが。

     正直、私もこの作品を見るのには勇気がいった。
     見れば絶対いやなことを思い出す。悲しくなること請け合いだ。
     それでも見るべきかもしれない――あの時の「先生」の気持ちを理解するために。

     私には12年間、音楽を教えてもらった先生がいる。某音楽教室の講師だ。音楽に関することにはかなり厳しい先生で、私のように大した才能もない生徒は、いつも先生を困らせてばかりいた。私がその音楽教室で唯一認められたのは、歌唱力だけだった。(楽器はほぼ全滅)
     そしてとうとう、右の手首を故障して楽器を扱うには耐えられなくなったことを切っ掛けに、私は音楽教室を辞めることになった。その最後の発表会を目前に控えてのこと。
     先生が珍しく受講生全員に食事をご馳走する、と言い出した。
     あいにく私はその日、他にも習いごとがあったので帰らなくてはならなくて、先生にそのことを伝えて丁重にお断りした。
     それから間もなくして、先生から手紙が届いた。次のレッスンから新しい先生に変わります、今までありがとうございました...と。
     発表会を目前にして先生が辞める、という不自然さに、誰もが驚き詮索した。先生にいったい何があったのかと。
     私はその答えを数日後に知ることになった。以前、同じ音楽教室にいた生徒さんのお母さんが、買い物途中のうちの母とばったり会って、こう言ったのだそうだ。
     「あなた、ワイドショー見た!? あの事件の犯人、先生の息子さんだったのよ!」
     当時騒がせた「コンクリート詰め殺人事件」の犯人グループのリーダーが、なんと先生の息子だったのだ。ワイドショーには実名は出なかったものの、「犯人の自宅」が映し出され、それが音楽教室の受講生だったら誰でも知っている先生の自宅だったのだ。
     犯罪者の家族になってしまった先生は、ご近所から嫌がらせを受けて、その地から逃げるしかなかったのだ。
     そのことを知らされるまでの私は、先生に見捨てられた気持ちでいっぱいだった。12年間も私のことを見てきてくれた人が、最後の舞台を見ずに、私の前から消えてしまった。それはきっと、私だけではなく他の受講生にとっても同じだったろう。
     だけどその事実を知って、私は先生の行動は正しかったことを知った。
     先生には娘さんもいたのだ。犯人の妹になる。
     あの事件は、今でも2ちゃんねるにスレッドが立っているぐらい衝撃的な――残酷な事件だった。スレッドの住人達の多くは、被害者の友人と、その人たちの思いに共感した人たちなのだろう。
     「こんな残酷な事件を、絶対に風化なんかさせない!」
     ときどきこんな文面が載せられていた。
     被害者の女性が受けた非情な虐待の内容を聞けば、誰もが怒りを覚えないわけにはいかない。私だって、そんな犯人は生きているべきではないと思う。
     でも、犯人の家族にまでその罰を与えなくてもいいと思う。
     先生と娘さんに降りかかった誹謗中傷がどんなものだったか、想像するだに恐ろしい。だからこそ先生は、娘さんを連れて逃げるしかなかったのだ。
     娘さんが被害者と同じ目にあわされる可能性は、十分にあった。


     「誰も守ってくれない」の中でも、犯人の家族になってしまった志田未来演じるシオリは、かなりな誹謗中傷を受ける。佐々木蔵之介演じる新聞記者が言った、
     「犯人の家族も罪を償うべきだと思ってる。死んで償うべきだと」
     という台詞は、被害者の家族なら一度は思うことだろう。
     「犯人はいつか町に帰ってくるが、うちの子は帰ってこない!」
     子供を殺された父親である柳葉敏郎が言った台詞。これも当たり前の心情だと思う。
     被害者の気持ちも痛いほど分かるから、本当は犯人の家族になんか同情しちゃいけないのかもしれない。
     でも私は音楽教室の先生とその娘さんのことを知っているから、家族だけは許してあげて、と言いたい。
     映画を見ている間中、ずっと私には志田未来が先生の娘さんとダブってしまって、泣きながら見てしまっていた。きっと周りにいた人たちは、
     「こいつ、感情移入しすぎ...」
     と呆れただろう。
     とにかく考えさせられる作品でした。


     まあ、そうゆうことだから。
     同僚の皆さん、これを読んで見るか見ないかは自分で決めてネ。

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