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from: エリスさん
2012年12月14日 13時12分09秒
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夢のまたユメ・75
次の日。
百合香もナミも出勤日だったので、普通に一緒に仕事をしていたが、お互い昨日の事は口にしなかった。
そして勤務終了後、百合香は一階の食品売り場で、母子手帳を持っている人にミネラルウォーターを優先販売していることを知って、その列に並んで、無事にミネラルウォーターを手に入れることが出来た。
ナミとはそのあと再会した。
「本当に妊娠してるんですね」
百合香が列に並んでからの一部始終をどこかから見ていたらしい。
「嘘なんかつかないわよ......ちょうどいいわ、持ってくれる?」
「重たい物は妊婦には辛いですもんね」
ナミは百合香のエコバックを受け取って、その重さにびっくりした。
「何買ったんですか?」
「姫蝶のごはん」
「猫缶ですか。そりゃ重いわけだ」
二人は駐輪場まで歩いて行った。
「長峰さんは、このことは?」
「話してないわ」
「話せばいいのに。そうすれば......」
「そうゆう汚い真似はしたくないの」
「どこが汚いんです。子供の事ですよ?」
「ちょっとごめん......」
百合香が左手を上げてナミの言葉を切った――百合香の視線の先に、誰かがいた。
翔太が、百合香の自転車の所で待っていた。
『同じ手できたか...‥』と、ナミは思った。昨日の自分とまったく同じ方法で、百合香を待っていたのである。
百合香は翔太に歩み寄った。
「ずっと待ってたの?」
「ああ。どうしても、最後にもう一度、会いたくて」
「そう......最後にね」
百合香はバッグから自転車の鍵を出すと、ナミに渡した。
「ごめん、ナミ。家にお父さんがいるから、この荷物(エコバッグ)と自転車、私の家に届けて」
「自転車も? リリィさん、どうやって帰ってくるんですか?」
「たぶんタクシー......帰り道、暗くなるから」
つまり、それだけ長い時間、翔太といる――ということだ。
「分かりました、預かります」
ナミは百合香の自転車に乗って、二人から離れた......。
「母さんと姉さんに聞いたよ......リリィのお母さんのこと」
「......そう」
いつも利用しているホテルに着いた二人は、先ず百合香がシャワーを浴びて、次に翔太が浴びる、といういつも通りの行動をした。
百合香がベッドに腰掛けて待っているところに翔太が戻ってきて、百合香を押し倒す。
「俺と結婚するってことは、お母さんのことを世間に暴かれて、リリィが辛い思いをするってことなんだな......」
「私だけじゃないわ......父も兄も、母を大好きなみんなが、辛い思いをすることになるの」
「だから、俺が身を引くしかない......」
翔太は百合香のバスローブの腰ひもを解いて、前をはだけさせた。そして、自分は胸元の布を引っ張り上げ、上半身だけ脱ごうとしたが......。
「待って、今日は......」
百合香は手を伸ばして、翔太の腰ひもを解いた――翔太のバスローブがハラリと開かれる。
「最後だから、全部見せて」
「いいのか? リリィは男の......見られないだろ?」
「でも、最後ぐらい......ちゃんと翔太を覚えていたい」
「......じゃあ、脱ぐよ」
「うん」
翔太はバスローブを全部脱いで、床に放り投げた。
「......本当に大丈夫なのか?」
百合香が翔太の顔しか見ていないことに気付いた翔太は、半分笑いながら聞いた。
「ごめん、徐々に慣れるから」
「無理すんなって」
翔太は百合香を少し抱き上げて、百合香のバスローブも完全に脱がした。
「もう一つ注文していい?」
「なに?」
翔太はそう答えてから、百合香の胸元にキスして、百合香の甘い声をキャッチした。
「今日はスローにしてくれない?」
「スローって......ピストン運動しないやつ?」
「うん......」
あまり激しい動きをされてしまうと、流産してしまうかもしれない。なにしろまだ妊娠2カ月ぐらいである。3カ月を過ぎるまでは不安定であることは、素人の百合香だって知っていた。
「まあ、俺は楽でいいけど......あれって、終わるまでが長いって聞くけど?」
「いいじゃない、その方が。ごめんね、私がそんなに体調が良くないのよ。それでなくても今日は激務で......」
「ごめん。悪い時に誘ったみたいだな」
「いいのよ。私もあなたとは"姫納め"したかったんだから」
「それじゃまあ、今日は最後と言うことで......ゆっくり楽しむか」
「うん......」
百合香は両腕を翔太の首の後ろで絡ませた。
「今ので、リリィを妊娠させられたらいいのに......」
まだ体全体が脈打っているのを感じながら、百合香の胸の上で翔太が呟いた。
百合香は、その言葉を悲しい思いで聞いていたが、それを悟らせないように、言った。
「そういうつもりで、今日誘ったの?」
「いや......本当に最後のつもりだったけど......今、つい、そう思った」
翔太がそう言いながら体を起こしたので、百合香はしがみ付いた。
「まだ離れちゃ、いや......」
「うん......」
翔太は軽くキスをすると、百合香の右頬に自分の右頬を触れ合わせて、百合香を抱きしめた。
「俺が社長の息子じゃなかったら、良かったんだよな」
「それを言ったら、私がお母さんの娘でなければ良かったのに――ってことになってしまうから、言わないで」
「そっか、ごめん」
「でもね......幸せだったよ、翔太の恋人になれて。私みたいな年増女、こんなに好きになってもらえて、結婚したいとまで言ってもらえて......本当に、幸せだった」
「そういう風に卑下するなよォ」と、翔太は体を起こした。「俺の方こそ、こんな若造をリリィ......百合香みたいないい女が彼氏にしてくれたんだから、誇らしく思ってるんだ」
「ありがとう」と、百合香は微笑んだ。「......早く、いい人見つけてね」
「百合香もな」
「うん。でも......たぶん、男は翔太で最後じゃないかな」
「なんでさ」
「私がバイ・セクシャルだってことと、男性の――見られないってこと、理解してくれる人なんて、そうそういないもの」
「そっか......じゃあ、リリィにとっては俺が最後の男なんだ。すっごい光栄だけど......無理にそうしなくてもいいんだからな。俺に操を立てるとか」
「そういう意味じゃないから、安心して......あなたもよ」
「ああ......俺の場合は、そうしたくても、させてもらえないと思う」
跡取りだものね、という言葉を言おうとして、百合香は口をつぐんだ。
タクシーには乗らずに、百合香は翔太に送ってもらって、歩いて帰って来た。
二人はその間、一言もしゃべらなかった。足取りも、いつもよりゆっくりで、このままどこかへ行方をくらましてしまいたい衝動に駆られながらも、確実に宝生家へ向かっていた。
やがて、宝生家の屋根が見えるところまで来た。
二人は組んでいた腕を解いた。
「家の前までは行かれないから、ここで......」
「うん......元気でね、翔太」
「百合香も......」
二人は、しっかりと握手をしてから、別れた――。
百合香が自分の家へ歩いて行くと、ベランダで父・一雄が洗濯物を取り込んでいるのが見えた。きっと、そこから二人が別れる一部始終を見ていたのだろう。
百合香が家の中に入ると、先ず姫蝶が駆け寄ってきた。
そして――
「お帰りなさい、リリィさん。夕飯出来てますよ! 寄せ鍋!」
なぜか、まだナミがいた。
「あなた、帰らなかったの!?」
「おじさんに歴史の話をいっぱい教えてもらってたら、遅くなったんで、お礼に俺が夕飯作りました。食べて行っていいですよね!」
「そりゃ、作ってくれたんなら......」
「じゃあ、二階に運びますね。早く着替えてきてください」
「うん、ありがとう......」
出来れば一人になりたかったんだけど......まあ、いいか。ナミだから――と、百合香は思うのだった。-
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