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恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜

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  • from: エリスさん

    2013年09月06日 11時42分38秒

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    夢のまたユメ・84

    「宝生さん? 小林でェす(^o^)」
    楽しげな小林佐緒理の声が聞こえてきたので、百合香はすぐに「いい知らせ」だと気付いた。
    「佐緒理さん! 伊達さんの行方が分かったんですね」
    「おっ! 察しがいいねェ」
    そこで、"グビッ"っという音が聞こえてくる。どうやら佐緒理は何か飲みながら電話をしているようだった。それに、後ろの方で、
    「ハーイ、よろこんで!」
    という、威勢のいいい声が聞こえてくるところを見ると、どうやら佐緒理は居酒屋にいるらしい。
    「実はさ」と、佐緒理は言った。「今、隣で飲んでるんだわ」
    「......はい?」
    「伊達だよ。今、一緒に飲んでるの」
    「え、ええ!?」と、思ってもいない状況に百合香は驚いた。「伊達さん、東京に来てるんですか?」
    「そ。今、彼に代わるから」
    「え? ええっと......」
    まだ心の準備が出来ていないのに、電話の相手は突然交代してしまう。
    「やあ、久しぶり......」
    男性の割には少し高く甘い声......間違いなく、伊達成幸(だて しげゆき)の声だった。
    「もしもし? 宝生?」
    百合香が返事をしないので、伊達が話しかけてくる。
    「あっ、すみません......」と、百合香ははにかんだ。「久しぶりに、伊達さんの声に悩殺されてました」
    「おいおい、俺はエロゲーの声優かよ(^_^;)」
    実際、それに匹敵するほど甘い声の持ち主なのだが、それはさて置き。
    「伊達さん、御無事でなによりです」と、百合香は言った。「ネットで伊達さんが救出された時の記事を見ました」
    「そうらしいね、佐緒理さんに聞いたよ。それで、俺のこと心配してくれたんだって?」
    「ええ。宮城の方はとても大変そうですし......」
    「ああ......心配かけたな。でもまあ、この通り元気だから」
    そこで、「いつまで人の携帯で無駄話してるの。本題に入りなさい!」と、佐緒理の声が聞こえてくる。
    「今、話しますよ......」
    「もう、代わりな!」と、佐緒理が携帯を取り返したらしく、再び佐緒理が電話に出た。
    「宝生さん、明日の午前中、ひま?」
    「明日の午前中、ですか?」
    「そう。明日、伊達、帰っちゃうのよ。こっちには慈善団体のバスに乗せてもらって来てるから、その人たちがまた宮城に救援物資を届けに行く時に乗せてもらって宮城に帰るの。それが明日の11時なんだよ」
    「11時......」
    「だから、伊達が帰る前に会いに来ない? 明日は日曜日だから、映画館は忙しいかな?」
    「あっ、いえ! 大丈夫です」
    まだファンタジアの仕事を辞めたことを佐緒理に話していなかったが、今それを告げると話が長くなってしまう。
    「ちょうど私も明日はお休みです」
    「良かった。それじゃ......」
    明日の10時に御茶ノ水の公園で待ち合わせる約束をして、お互いに電話を切った。
    百合香はすぐにパソコンの向こうのルーシーに話しかけた。
    「お待たせ。電話終わったわ」
    「はい、待たされました(^o^) それで、明日はお暇?」
    『あ!?』
    こっちとも会う約束をしようとしていたことを、すっかり忘れていた。
    「ごめんなさい、明日は先約が入りました。たった今」
    百合香が事情を手短に話すと、
    「それなら、午後は予定ないよね? その人、11時には帰っちゃうんでしょ?」
    「そうね。午後なら空いてるわ」
    「じゃあ、午後は私と会って。秋葉原で待ち合わせるのは、どう?」
    御茶ノ水から秋葉原なら、歩いてだって行ける距離である。
    「いいわ。秋葉原で会いましょう」
    「じゃあ、待ち合わせのお店はね......」
    ルーシーからとあるメイド喫茶のホームページのアドレスが送られてきた。
    「このお店なら知ってるわ。一度行ってみたかったの」
    「じゃあ、明日。12時にね」
    百合香はルーシーとのチャットを終わらせて、パソコンをシャットダウンした。
    奇しくも二つの待ち合わせをしてしまった。
    「明日、なに着て行こうかな......」
    百合香は立ち上がると、洋服ダンスを開くのだった。

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