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from: エリスさん
2014年02月14日 09時51分50秒
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夢のまたユメ・91
「......そんなこと、今までおくびにも出さないで......」
百合香は正直驚いていた。小坂はシネマ・ファンタジアではクールなキャラとして定着していて、浮いた話など一度もなかったのである。背景に自身の障害のことがあったからなのだろうが、それにしても、百合香に対して思わせぶりな行動なども全くなかったと言うのに。
「もちろん抑えていたんですよ。リリィさんは、僕がファンタジアに入った時にはもうミネさんが好きだってことは周囲に知られてましたから。とても二人の間に割って入れる雰囲気ではなかった......それなのに、あの頃の二人は正式には交際しないで、別れてしまいましたよね」
交際していないのに"別れる"というのも変な話だが、実際に両想いだった二人が音信不通になったのは事実だ。理由は翔太が自分の長峰家での立場と将来を考えてのことだったが......。
「ミネさんがファンタジアを去った時点で、僕も勇気を出して告白すれば良かったのに、出来ませんでした。リリィさんがミネさんを忘れられずにいたのが分かったから......その上、僕も就職活動に入らなければならなくなって、恋愛どころではなくなってしまって」
昔は大学4年生になってから就職活動をすれば良かったが、今の世の中は3年生の時に始めて、4年生になる前に内定をもらうと言う。よって、当人が大学を卒業するまでの一年間、会社はその人が入社してくるのを待っていることになるが、その間に会社の事情が変わり内定取り消し、はたまた会社自体が倒産することも。そうしたらまた就職活動のやり直しになるわけで、まさに今は「就職氷河期」と言える状況だった。
「だから僕は、諦めようとしていました。でも、ファンタジアを辞めてからもリリィさんのことが忘れられなくて、それで、リリィさんがコミュニティーサイトに小説を書いているって話していたのを思い出して......ユノンさんだけリリィさんのこと"ユリアス"って呼んでるから、もしかしたらそれがペンネームなんじゃないかって思って、ネット検索で探してみたんです。そしたら見つかって......」
「それで、私のネット小説の読者メンバーになったのね」
「はい。メンバーになれば、オーナーのユリアスさんとは個人レターでお話しできますから。しかも顔が見えないから、僕は本当の僕として――女として話をすることができる。最高の環境でした」
「"ルーシー"ってハンドルネームは、どこから来たの?」
「単純にCurl(カール)をひっくり返して、さらに女の子っぽくしたんです」
「ああ、lru(エルアールユー)で"ルー"、Cで"シー"ね」
Cはそのまま読めば"ク"だろうが、それでは"ルーク"で男の子っぽくなってしまう。
「全然気づけなかったわ。ルーシーさんがカールだなんて。私の中ではカールは完璧に男性だったから」
「完璧に?」と、小坂は苦笑いをした。「一度も、もしかしたら女なんじゃないかって疑問を抱かなかった?」
「ん~......ああ、そう言えば」
震災直後、小坂が百合香の家に遊びに来て、あの男嫌いの姫蝶が小坂には頭を撫でさせたことがあった。あの時少しだけ疑問に思ったことはある。
「そういえば、あの時あなた、私に胸を触らせたわね。男の人にしては柔らかい胸で......柔らかいはずよね。胸は女の子なのね......」
「ええ。かなり平たいですけど......」
「......ごめんなさい。あなた、そうやって私に信号を送ってたのね」
本当は女だと......私がルーシーなんだと、百合香に気付いてほしくてヒントを与えていたのである。
「そう、でもリリィさんは全然気づいてくれない――当然ですよね。ミネさんや、ナミ君までそばにいたんだから。僕のことなんか目に入らないですよね。でも......ミネさんが身を引いたことで、状況は変わったわ」
小坂はそう言うと、真剣な目を百合香に向けた。
「僕のことを男ではなく、女として見た上で、僕とお付き合いをしてください」-
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