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from: エリスさん
2014年05月16日 11時59分49秒
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夢のまたユメ・95
二日後、一雄は新潟へ帰ることにした。
恭一郎は最初、まだ東北の方が落ち着いていないこと、特に福島の原子力発電所が危ない状態だからと、福島の隣の県である新潟に帰ることは反対していたのだが、帰ることを勧めたのが誰でもない母の沙姫だと聞かされては、反対ばかりもしていられなかった。
「いいか? 父さん。具合が悪いってちょっとでも感じたら、我慢なんかしないですぐに病院に行けよ! 無茶するなよ!」
恭一郎が言うと、
「心配するな! 父さんには母さんが付いてる(憑いてる?)」
と、一雄は意気揚々と帰って行った。実際、その車の屋根の上に沙姫が乗っていて、百合香と恭一郎に手を振っていたのだが、それが見えたのは姫蝶だけだった。
そしてさらに翌日の夜、宝生家に主立った関係者――ナミ、ユノン、紗智子と、馨が呼び寄せられた。
「そんなわけで」と、百合香は言った。「私と馨が付き合うことになりました」
それを素直に祝福したのはユノンだけで、紗智子は微妙な表情を浮かべ、ナミは完全に怒っていた。
「なんで俺は断って、カールさんとは付き合うんですか!?」
ナミが言うと、百合香は言った。
「だから話したでしょ。私はもう男の人とは付き合いたくないって。それに、あなたとじゃ久城家が絡んできてしまうもの」
「久城家のことは仕方ないにしてもですよ、カールさんだって男じゃないですか!」
「いや、ナミ君」と、馨が言った。「僕は男じゃないよ」
「ハァ?? 何言ってるんです?」
「だからこれから」と、百合香が言った。「その説明をするために、みんなを呼んだのよ」
百合香は馨が半陰陽(性分化疾患)であり、精神的には女性であることを説明した。
「だから私は、女としての馨と交際することにしたの」
「ありえない!」と、ナミは言った。「リリィさん、だまされてますよ!」
「だまされてないわよ。ちゃんと確かめたわ」
「確かめたって......」
ナミが赤面して黙ってしまったので、ユノンが口を挟んだ。
「ユリアス、もうカールと......やっちゃった?(*^_^*) 」
「ええ」と、百合香が微笑むと、
「まあ......」と、紗智子が赤くなった。「身重の身で、大丈夫だったの?」
「大丈夫よ、私が立ち役だから。私、女同士の時はいつもそうなの」
「あら、ステキ......」
「"ステキ......"じゃないですよ!」と、ナミは言った。「紗智子さんも百合属性の人だからって、だまされちゃダメです。カールさんがどんなに女に化けてたって、本当は男なんですよ。俺、何度か更衣室で一緒になってましたけど、普通に男の中で着替えてたし、胸だってなかった! それなのに半分女だなんて、信じられませんよ!」
「馨が男だけの空間で着替えが出来るようになったのは、これまでの経験の積み重ねによる訓練の賜物よ」と、百合香は言った。「戸籍上は男性だから、学校だって男として通わなくてはいけなかった。だから、嫌でも慣らして行かなくてはならなかったのよ」
「でも、でもでも! そんなのおかしい...‥」
ナミが何とかして反論しようと言葉を探していると、
「分かったわ」と、馨が言った。「ナミ君、一緒においで」
馨はナミの手を引いて、バスルームまで連れて行った......。
なので百合香は、ユノンと紗智子に言った。「きっと、服を脱いで証明してあげる気ね」
「私もちょっと興味あるけど」と、ユノンは言った。「プライバシーだから遠慮しておこう」
「そうしてあげて」
「それで彼――いいえ、彼女は......」と、紗智子が言った。「翔太との子供のことは、何か言ってる?」
「まだ具体的なことは言っていないけど、馨は子供が作りづらい体だから、私に子供がいてくれた方が都合がいいんですって」
「そうなの......彼女が、翔太の子供を自分の子として育ててくれるって言うなら、私はあなた達の交際――最終的には結婚も、反対したりはしないわ」
「ありがとう、紗智子さん」
「でも、馨さんが翔太の子を疎むようになったら......そうならないことを祈るけど、もし万が一そういうことになったら、子供は私が引き取ってもいいからね。私は伯母なんだから」
「うん、その時はそうしてもらうかもね」
「へえ、紗智子さんって」と、ユノンは言った。「焼きもちとか焼かないんだね」
「え? なにが?」
「だって、紗智子さんってユリアスのことが好きだからスール(姉妹)になったんでしょ?」
「やだ、ユノンちゃんたら(^_^;) 私は百合香さんのことを人生の先輩として大好きだから妹にしてもらったのよ。恋愛対象とは違うわ」
「あれ? そうなの」
「ユノンちゃんは百合小説の読み過ぎよ」
「エヘッ、ごめんなさい」
女同士でそんな話で盛り上がっていると、しばらくしてナミと馨が戻ってきた。馨は乱れた髪を直しながら、ナミは恥ずかしそうに顔を俯いたままで......。
「認めます。カールさんは立派に女性でした......」
「理解してもらえて嬉しいわ」
その二人の様子からただならぬものを察した百合香は、馨の手を引っ張って部屋の隅に連れて行った。
「ナミになにしたの?」と、百合香が小声で言うと、
「僕が女だって認めてもらうには、何も演技していないことを見てもらうのが一番でしょ? だから......」
「誘惑したの!?」
「ナミ君はパッと見、女の子に見えるから......でも、触らせてあげただけよ」
「どの程度!?」
百合香が多少怒り気味に言うと、馨は耳打ちでナミとの情事を説明してあげた。
「......まあ、その程度なら......」
「でもね」と、馨は百合香の手を取った。「僕、百合香さんの手の方が一番感じる。だから、後で同じことしてね」
すると百合香はフフンッと笑った。「もっとすごい事してあげるわよ」
「オオーイ! そこのお二人さァ~ん!」と、ユノンが声を掛けてきた。「こそこそとエロい話してないでよ!」
「してないわよ」と、百合香が笑って見せた。「とにかく、他のみんなには徐々に話していくから、しばらくは私達の交際のことは、このメンバー内の秘密にしておいてね」-
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