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恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜

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  • from: エリスさん

    2014年12月05日 11時46分33秒

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    夢のまたユメ・104

    百合香が馨と会ったのは、週末の土曜日だった。馨がメイドカフェでのバイトを終えるのを待って、秋葉原で待ち合わせたのである。
    もう終電も間近と言う時間ではあったが、近くに泊まれる施設が多いこともあって、まだ食事のできるお店がいくつか開いていた。二人は居酒屋で美味しい食事にありつくと、その後は上野まで散歩気分で歩いた。
    二人は上野のホテルで泊まることにした。馨が女装をしていたので、完全に女同士のカップルに見えたが、そこはオープンな上野のラブホテルである。難なく入れてもらえた。(男同士だと断られる所もあるらしい)
    二人は一緒にシャワーを浴びた。百合香のお腹の膨らみ具合を確認した馨は、
    「そろそろ、こうゆうのも遠慮しないと駄目かしらね」と、言った。
    すると百合香は「そのことも含めて、話したいことがあるの」と、微笑んで見せた。
    シャワーを済ませた二人はそれぞれバスローブを羽織り、ベッドに並んで座った。
    「私ね、とにかくこの子は何事もなく産みたいの」と、百合香はお腹をさすりながら言った。「兄も言ってたけど、この子は宝生家の跡取りにしたいの。本家を継いだ叔父さんには子供がいないし、このままじゃ宝生家の嫡流は絶えてしまうから――後は継がなかったけど、父は宝生家の長男なのよ」
    「うん、前に百合香さんそう言ってたね」
    「宝生家にとっては大事なことだからね、何度でも言うわ。でもね、二人目以降は私の好きにしていいと思うの」
    「二人目?」
    「ええ。この子が産まれて、しばらくしたら二人目を作ろうと思う。あなたとの子を」
    「......え!?」
    思いもかけない言葉で、馨はびっくりした。
    「あなたも欲しいでしょ? 自分の子供」
    「でも百合香さん、僕は普通の人と違うから、子供は......」
    「不可能ではないと思うの。もちろん、ちゃんと検査しないと分からないけど、私がお世話になってる産婦人科の先生によるとね......」
    百合香は今月の検診の時も、寿美礼に相談していたのだった。性分化疾患の人との間に子供を作るにはどうしたらいいかを。
    「そうしたら、私の母が兄と私を受胎した方法を取ればいいんだって教えてもらったの。私の母ね、不妊治療を受けていたのよ。父と結婚してから、普通の形じゃ妊娠できないって分かって......」
    「やっぱり、体が弱かったから?」
    「ううん、そうじゃなくて......母が養父から性的虐待を受けていたことは、話したよね。それで二回妊娠して、母は自分で流産させているの。その二度目の妊娠がどうも子宮外妊娠だったらしくて、その時に卵管を痛めたらしいの。それで妊娠しづらい体になって、結果、寿美礼おばさんの勧めもあって体外受精で私たちを産んでくれたの」
    「ああ!......僕にもその方法が使えるの?」
    「すべてはちゃんと検査してからだけど、うちの両親の時よりも今の医学は進んでいて、検出した精子や卵子から、健康な物を選んで使用することができるのですって。だから、あなたの胎内にある卵巣も精巣も、普通の人に比べると未成熟だって言ってたけど、でも、そうやって健康な卵子や精子を選べるのなら、私が代理母になってあなたの子供を産むことができるわ」
    「代理母?」
    「これもおばさんから教えてもらったことなんだけど、私とあなたが結婚した場合......」
    馨の精子と百合香の卵子を受精させて、百合香の胎内に着床させて出産すれば、これはなんの問題もなく馨と百合香夫婦の子供として認められる。
    そして、誰か提供者の精子と馨の卵子を受精させて、百合香の胎内に着床させて出産しても、産んだのが妻の百合香である以上この夫婦の子供と認められるのである。
    しかし、この夫婦の精子と卵子を受精させても、着床・出産するのが別の女性だった場合は、生まれてきた子は夫婦の子供としては認められず、出産した女性の戸籍に入らなければならない――それが今の日本の法律だった。
    「だから、生まれてきた子をあなたの子供として認めさせるためにも、私はあなたと結婚するわ」
    「百合香さん......」
    それは紛れもなく、プロポーズだった。予想もしなかった出来事に、馨は戸惑いを隠せなかった。
    「でもそれは、この子を無事に産んでからね。この子を何の問題もなく宝生家の跡取りにするためには、いま私があなたと結婚するわけにはいかないのよ。だから、それまで待っていてくれる?」
    百合香は馨の手を握った。
    「しばらく体のつながりも持てなくなって、不安に思うかもしれないけど、私はちゃんとあなたとの未来を見据えているから、だから、待っていてね」
    百合香の言葉に、馨は嬉しそうに頷いた。
    「待てます。そこまで確実な約束をもらえるなら、何年でも......」
    「良かった......」
    百合香は馨にキスをすると、そのまま馨を押し倒した。
    上半身だけ脱がすと、馨の胸が以前よりも膨らんできているのが分かる。(シャワーを浴びている時は、なるべく馨の方を向かないようにしていた。見たくない物が見えるから)
    『体が女性に近付いて来ているのね。無理して男性として振る舞う時間も減ってきているだろうし。それに......』
    ここ数日抱えてきた不安が取り除かれたせいか、馨の体は百合香の指使いに素直に敏感になっていた。
    ますます自分好みの女性に馨が変身し始めていることに、百合香は優越感を覚えずにはいられなかった。

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