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恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜

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  • from: エリスさん

    2015年04月03日 13時12分58秒

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    夢のまたユメ・107

    9月に入った。妊娠7カ月になった百合香のお腹もかなり立派になって来て、もうマタニティードレス以外の服は着られなくなってきた。それを察した近所に住む幼馴染の荒岩静香と福田千歳が、
    「ユリちゃんに似合うと思って」
    と、新しいマタニティードレスをプレゼントしてくれた。
    「いいの? ありがとう!」
    百合香がさっそく着替えて見せている時、隣の部屋から姫蝶が「みにゃあ~」と顔を出した。
    「あら、キィちゃん。久しぶり......」
    静香が言葉を途中で止めたのも無理はない。姫蝶もお腹が大きくなっていたからである。
    「え? キィちゃんもおめでたなの?」
    と千歳が言うと、着替え終った百合香が振り向いて言った。
    「そうなの。柿沼さん家の幸太くんが通い婿してくれて、見事に授かりました」
    「授かりましたって(^_^;) 親子(百合香と姫蝶のこと)そろって出産って、大丈夫なの?」と静香が言うので、
    「大丈夫よ。キィちゃんの出産は今月中だから、私の出産とはかち合わないわ」
    「ユリちゃんの出産は12月だものね」と千歳は言った。「その頃には生まれた子猫も離乳してるから、そんなに手がかからなくなってるのね」
    「でも里親探しで大変だと思うよ」と静香が言うと、
    「里子になんか出さないわよ。全部家で飼うから」と百合香は言った。
    「やめときなって(-_-;) なんならうちで一匹貰ってあげるから」
    と、静香はあまりに楽観的な百合香を諭すのだった。
    次の日には、紗智子がベビー服をお土産に訪ねてきた。
    「流石にベビー服は気が早くない? 男か女かも分からないのに」
    百合香が包み紙を剥がしながら紗智子に言うと、
    「だって、買わずにいられなかったんですもの。だから色は......」
    「あ、黄色ね! これなら男女どちらでも大丈夫ね」
    「でしょ? それでね、このフードをかぶせると......」
    「ひよこちゃんだ!」
    「可愛いでしょ?」
    最近はベビー服に遊び心が加わって、ひよこや猫、犬、果てはアニメキャラクターにコスプレ出来るものも出回っていた。
    「早く見てみたいわ、百合香さんの赤ちゃん」
    「あなたにとっては姪っ子か甥っ子ですものね」
    ちょうど百合香がその日の仕事を終えた時でもあったので、二人はその後まったりとお茶の時間にすることにした。すると、百合香は茶筒の中の茶葉がもう残り少ないことに気付いた。
    「そろそろ買いに行かないと......」
    「買いに行くって......その中身、緑茶じゃなくて紅茶でしょ?」
    日本茶用の茶筒を使ってはいるが、百合香が大の紅茶好きなのを熟知したうえで、紗智子はそう聞いた。実際、ティーポットのお湯に茶葉からにじみ出ている色が赤い......。
    「ええ、ローズヒップティーよ。実は他の茶筒のカシスブルーベリーも、白桃烏龍(はくとうウーロン)も、アプリコットも......」
    「全部ないの?」
    「ううん、アセロラティーだけ残ってるけど、それもあとちょっと」
    「なんで買いに行かないの?」
    「だって......」
    百合香はお盆にティーセットを乗せて運んできて、紗智子の横に座ってから言った。
    「こんなにお腹が出てきたら、電車に乗るのもはばかられて」
    「満員電車にさえ乗らなければ、危なくないでしょ?」
    「下が見えづらいから、エスカレーターに乗るのも、ホームに出るのも怖いの」
    「ああ、怖いのね......」
    百合香が贔屓にしている紅茶専門店は、電車で二駅行ったところの駅ビルの中にあった。
    「じゃあ、私と一緒に車で行きましょ。今度の土曜日、ひま?」
    と紗智子が言うので、
    「いいの?」
    「もちろん! ついでに落語聞きに行かない? 駅ビルの上の劇場で、今ちょうどやってるのよ」
    「行く!」
    そんなわけで、二人は久しぶりのスールデート(義姉妹でのデート)と洒落込むことになった。

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