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from: エリスさん
2014年04月24日 12時31分54秒
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夢のまたユメ・94
「お、おおお母さん!?」死んだはずの母・沙姫に会うのはこれで二度目だが、百合香はまたしても仰天した。「な、なんでいるの!?」「あなた達の様子を見に来て
「お、おおお母さん!?」
死んだはずの母・沙姫に会うのはこれで二度目だが、百合香はまたしても仰天した。
「な、なんでいるの!?」
「あなた達の様子を見に来てあげたんじゃない」
「わざわざ? 幽霊になって?」
「幽霊って言うか、守備霊?」
「どっちでもいいわよ! そんな何回もこっちの世界に来ちゃったりして、大丈夫なものなの? 冥界の管理者たちに追われたりとかしてないでしょうね!」
百合香が言うと、沙姫はおかしそうに笑い出した。
「あなたのその発想、流石は小説家ねェ。アマチュアだけど」
「悪かったですね、プロになれなくって! そんなことはどうでもいいでしょ、今は!」
「はいはい。大丈夫よ、お盆やお彼岸にあの世から里帰りするのと一緒で、別に誰にも咎められたりしないわ」
「そうゆうものなの?」
「そうなの。だから心配しないで」
「まあ、お母さんが心配ないのは分かったけど......」
百合香は母の膝の上に居る姫蝶に視線を移した――眠っている、というか、気を失っているように見える。
「あの......もしかして、キィちゃんからパワーを奪ってたりしてない......よね?」
「ああ、ちょっと借りてるわよ。この世に居るのも霊力を使うから、あなた達の"事が終わる"まで霊力が足りなくなりそうで」
「やめてェ~!」と、百合香は姫蝶を奪い返した。「キィちゃんの寿命が縮まったらどうしてくれんのよ!」
「いやァ~ね、人を悪霊呼ばわりして」
と、沙姫はケラケラと笑いながら手を上下に振って見せた。「寿命なんか縮めやしませんよ。ただ......」
沙姫が言い終らぬうちに姫蝶が目を覚まし、
「みにゃあ!」と鳴いて、自分のご飯が置いてあるところまで駆けて行った。
「異様にお腹が空くだけよ」
「だけって......キィちゃんが夕飯食べたのは、ついさっき(百合香が馨と部屋に籠る前)......」
つまり、姫蝶が食事で摂取したエネルギーをほぼ全て沙姫が借りて(奪って?)しまったらしい。当然のことながら姫蝶のお皿にはもうご飯など入っていないので、姫蝶は百合香の方に振り返って「みにゃあ~!」と催促をした。
「ほら、あげてきたら? 呼んでるわよ」
「分かってるわよ」
百合香は沙姫に怒りつつも、姫蝶のお皿にドライフードを入れてあげるのだった。
「そもそも、キィちゃんにエネルギーを借りるぐらいなら、一旦帰れば良かったじゃない」
「そうしようとも思ったんだけどね」と、沙姫は立ち上がって、クスッと笑った。「あなたの"お姉様モード"な情事を聞いてたら、なんだか昔の自分を思い出しちゃって......」
「や~め~て~!!」
つまり、馨との濡れ場をまるまる聞かれていた、ということである。親にそんなものを聞かれて恥ずかしくない娘はいない。
百合香はドライフードを手にしたまま、沙姫に詰め寄った。
「プライバシーの侵害だわ! そもそも、おかあさんってそんなキャラじゃなかったじゃない!」
「人間って死ぬとね、抑圧されたものが総て解放されて、素の自分に戻れるのよ。あなた達の前じゃ良妻賢母を演じてたけどね......でも、知ってたでしょ? お母さんが昔は"S"だってこと」
「今でいう"百合"でしょ? お母さんも私と同じで、女の子と交際してたって聞いてはいたけど......でも、あの頃の"S"って単なるレズごっこで、実際にベッドインしたりとかは、ないんでしょ?」
「私はあったのよ」
「ヘェ、そうなの......」
「そりゃあ、そうなるでしょ。義理の父親から暴力的に犯され続けてたら、男との情事なんて気持ち悪い物にしか思えない。だから、女子校で知り合った女の子たちと、そうゆう関係を続けてきたのよ」
「まあ、分からなくはないけど......良くそれで、お父さんと結婚できたね」
すると沙姫は、満面の笑みを浮かべた。
「だって、一雄さんは私にとってナイト(騎士)だもの。助けられたお姫様は、助けてくれたナイトと結婚するのが当然のハッピーエンドでしょ?」
「なるほどね。お母さんも夢見る少女だったんだ、本質は」
「そういうこと。私のこの夢見がちな性格が、あなたにも受け継がれて、小説を書く上での想像力につながっているんだから、感謝しなさい」
「......感謝はしてるよ、いつだって」
そこでまた姫蝶が百合香を呼んだので、百合香はご飯のお代わりをあげに行った。
「感謝はしてるけど、私の大事なキィちゃんに迷惑をかけるのは御免こうむるわ」
「悪かったわよ。でも、どうしてもあなたに言ってあげたいことがあったから、だから待ってたのよ」
「なァに?」
百合香はドライフードの袋を姫蝶の横に置いて、また沙姫の方へ行った。
「やっと、あなたに相応しい相手を見つけられたわね」
「......馨のこと? お母さんは、私には馨の方が相応しいと思ってるの? 翔太よりも?」
「翔太君もいい人だったわ。でも、彼の家庭環境では、あなたを受け入れることは絶対にできない。そうでしょ?」
「まあ、そういうことになるけど」
「そして、ナミ君は......初めて見た時、すぐに正典おじさんの血縁者だって分かったわ。だから、あなたと結ばせてはいけないって思った。久城家が係わってしまうから」
「もしかして、私がナミに告白できないように、お母さんが私を制御してたの?」
「ごめんなさい、ちょっとだけね。でも、その方が良かったでしょ?」
「う~ん......そう、なるのかなァ」
やや納得はできないが、そういうことにしておこう、と百合香は思った。
「他にも何人か――私がまだ生きている時、あなたに近付く男たちはいたけど、みんなあなたには相応しくない――将来的にあなたを傷つける男たちだって分かったから、お母さんはわざとあなたに、そういう男たちの悪口を言って聞かせていたのよ」
「それでだったの? お母さんが、私が好きになる男の子の悪口ばっかり言ってたのは」
「そのことで、お母さんのことを恨んでいたでしょ? 百合香」
「恨んでたわ。お母さんのせいで、私は男の子と恋愛できないんだって、半ば自棄(ヤケ)になって女の子と付き合い始めたんですもの」
「でもそのおかげで、自分の本質に目覚められたのよ」
「普通、アブノーマルなそういう本質には、目覚めてほしくないって親なら考えるんじゃないの(^_^;)」
「同性愛をアブノーマルだと見る方がナンセンスよ」
「ああ、お母さんってそういう人だったのね」
よもや、死別してから聞かされるようになろうとは。
「でもね、あなたの恋路を邪魔し続けてきた甲斐があったわ。馨君は......いいえ、女性だから馨さんね。彼女はちゃんと、あなたを受け入れるだけの度量がある人よ。なによりも、彼女自身もあなたに救いを求めてる。彼女のご家族も、我が家の家庭の事情を受け入れてくれる人たちよ。だから、彼女とならあなたは幸せになれるわ」
「お母さん......」
百合香は沙姫の手を取ろうとして手を伸ばした......だが、すり抜けてしまって、それでも沙姫が自分の手を差し出してくれたので、百合香はそれを包み込むようにした。
「お母さんが私のことを心配してくれるのは、本当に嬉しいし有難いわ。でもね......私、翔太のことも認めてもらいたかった......」
「認めてあげたかったわ、彼がスキャンダルを気にする大企業の社長の息子でさえなかったら」
「それは、翔太には何も責任はないことよ。彼個人は、どんなに私を愛してくれたか......今度のことだって、私のことを苦しめないために、自分から身を引いてくれて......」
「分かってるわ。だからとても残念よ。翔太君が、家族を捨てて百合香を選んでくれないかって、何度願ったことか......」
「お母さん......」
「でも、ほら」と、沙姫は百合香のお腹を撫でた。「ここには、そんな翔太君の子供がいるでしょ? きっと、素敵な人に育つわ。翔太君のように情の深い、優しくて賢い人にね」
「......うん、そういう人間に育てる」
そんな時だった。玄関のドアが開いて、一雄が入って来たのは。
「た、ただい......」
"ま"を言う前に、一雄は沙姫に気付いた。
「......沙姫......」
「あなた!」
沙姫が一雄の方に駆け寄ろうとすると、一気に沙姫の存在が透けてきた......エネルギーを借りている姫蝶から距離が出来たからだ。
それでも、沙姫は一雄を抱きしめた。
「あなた、百合香はもう大丈夫よ。もう心配ないから、あなたはあなたの生活に戻って」
「沙姫......」
「分かってるんでしょ? あなたが新潟にいないから、患者さんたちが困ってる。それに、震災のせいで怪我をして、あなたの治療を受けたがっている人がいっぱいいる。そういう人たちを助けてあげるのが、あなたの使命なんだから......」
「沙姫! 分かったから、行くな!」
だんだんと沙姫が見えなくなり、それでも一雄は空を掴んで沙姫を止めようとした。だが沙姫は、
「一雄さん、愛してる」の言葉を残して、完全に消えてしまった。
沙姫が見えなくなると、一雄は声を立てて泣き出した。
「なんだよ......いつだって、百合香のことばっかりで、俺は二の次で......」(一雄の言葉は本当は吃音だが、ここでは意訳して記している)
「ごめんね、お父さん」と、百合香は言った。「きっと、またお盆に帰って来るよ。お母さん、さっきそんなこと言ってたし」
「そうか......そうだな」と、一雄は涙を拭いた。「それで、もうおまえのことは大丈夫って、何かあったのか?」
「ああ、うん......そのォ......新しい彼女が出来ました」
「そうか...............な、なんだと!?」
恋人と別れたばかりでもう次の人が出来た――と聞けば、普通の親ならこうゆう反応を示すものである。-
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from: エリスさん
2014年04月04日 12時23分28秒
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夢のまたユメ・93
「これ、もう外そうね」そう言って、百合香はルーシーのウィッグを外した。ウィッグが無くても、ルーシーの仕草や表情で十分女性に見える。それに今は百合香の浴
「これ、もう外そうね」
そう言って、百合香はルーシーのウィッグを外した。ウィッグが無くても、ルーシーの仕草や表情で十分女性に見える。それに今は百合香の浴衣の中でも艶やかな柄のものを着せている。
『うん、ショートヘアーの女の子なんだと思えば、全然イケるわ』
百合香はそう思いながら、ルーシーの上半身だけを脱がせた。腰から下は浴衣で見えなくするのは、いつも翔太にやってもらっていたスタイルだった。
ルーシーが恥ずかしげに胸元を隠すので、百合香も同じ風に上半身を脱いだ。
「ホラ、恥ずかしがらないで。女同士なんだから」
「リリィさん......」
百合香に押し倒されたルーシーは、すべてを彼女に委ねた。
百合香の愛撫はルーシーにとってすべてが初体験で、羞恥心も何もかも考えられなくなってしまう。
一方、百合香は冷静にルーシーを観察していた。
『体の反応はすべて女の子のものだわ。これじゃ、カールを男だと思ってベッドインする女は、拒絶反応を示しても仕方ないわね』
百合香は浴衣で隠れているルーシーの太ももの間に、右手を滑り込ませた。
「あっ、リリィさん......そこは......」
「ん? ああ、触るのは平気なの。翔太のも見ないで触ってあげてたのよ」
「そうなんですか?」
「うん。でも、あなたのは男の子の方じゃなくて、女の子の方を触るね」
百合香は手探りで、ルーシーの女の部分を見つけた。
「あっ!」
ルーシーは咄嗟に百合香にしがみ付いた。
「イヤッ、ダメ......」
その反応を見て、百合香は『か、可愛い......』と思った。女性として見ると、ルーシーはこんなにも百合香の好みのタイプだったのだ。
「大丈夫、怖がらないで......」
百合香は耳元で囁くと......。
ルーシーが恍惚と眠りかけているのを横目に見ながら、百合香は起き上がって着替え始めた。その物音でルーシーは目を開けて、百合香に声をかけた。
「リリィさん......」
「あなたはもう少し休んでていいのよ」
「あっ、いえ......僕も帰らないと......」
ルーシーは起き上がると、自分の着替えは全部バスルームにあることを思い出した。
「もう一回シャワー浴びてく?」
「いえ、大丈夫です。着替えてきます」
最後に男としての部分が反応して、浴衣を汚しそうになったのだが、翔太との経験を踏まえた百合香が上手く処置をしてくれたのである。おかげで見たくない物を見せてしまったが......。
男の服を着てルーシーがバスルームから出て来ると、百合香はすっかり部屋を片付けて、ちゃぶ台を出しているところだった。
「お茶でも飲んでく?」
百合香が聞くと、
「いいえ、もう帰ります。そろそろ、リリィさんのお父さんも帰ってくるでしょ?」
「そうね......お父さんに紹介するのは、もうちょっと先でもいいかな」
「え?」と、ルーシーは聞き返した。「僕をですか?」
「そうよ。交際相手を親に紹介するのは当たり前のことよ」
「交際、してくれるんですか? 僕、リリィさんが見たくない物を見せちゃったのに......」
「あんなのちょっとしたハプニングじゃない」と、百合香は笑った。「次からはあんなことがないように、ちゃんと準備しましょうね。大丈夫、あなたは十分女性よ。私好みの」
その言葉を聞いて、ルーシーはようやく安心した。
「とりあえず、私たちが付き合うこと、何人かには報告しないとダメよね。先ず、ナミでしょ。それからユノンに......」
「......ミネさんは?」
「翔太はいいわよ。会う口実になっちゃうから......」
会えば必ず抱かれたくなってしまう......だから今は、会う口実を作らない方がいい。
「それと、呼び方どうする? あなたが男の子の格好をしている時でも"ルーシー"って呼ぶのは、ちょっと問題があるでしょ?」
「あっ、だったら......名前で呼んでください」
「馨(かおる)?」
「はい。だから僕も、百合香さんって呼んでいいですか?」
「いいわよ。じゃあ、今後はそう呼び合いましょう、馨」
「はい、百合香さん」
百合香はルーシー――馨を玄関先までお見送りをした。
そして......。
「キーちゃん! お待たせ~!」
馨との情事を邪魔されないように、姫蝶を猫部屋で待たせていた。なので百合香は勢いよく猫部屋のドアを開けると......。
「ハイ、待ってたわよ」
そこに、姫蝶を膝に乗せて正座していた母・沙姫がいた――!?-
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