冤罪でとある墓地に墓堀として強制労働を命じられた囚人の少年オムルは、脱走の下見の最中に謎の少女メリアと出会う。そして、次の日に自身が掘った巨大な墓穴に怪物の姿を目撃し、メリアを脱走のために懐柔しようとするのだが……。

　『ハルヒ』以来のスニーカー大賞ということで期待して読んだんですが、良作といった感じでしたね。
　描写は丁寧で全体的に不気味な雰囲気を出していますし、それが墓地という舞台やストーリーにも合っているんですが、そうして話を引っ張った割にはアッサリとしたラストだったので少し好みではありませんでした。
　ただ、それを埋めるのがオムルとメリアで、特にオムルがいい味を出してました。懐柔しようと悪戦苦闘しているうちにメリアに惹かれていく不器用な態度や心情の変化は微笑ましく、メリアを救おうとする姿は勇ましかったです。ありきたりと言う人もいるかもしれませんが、惚れた女性のために全てをかけて体をはる男の姿はどんなに無様でも格好良いですし、オムルはまさにそれでした。そして、そんなキャラが自分は大好きなんですよね。
　自分の好みからは少し外れていましたが、十分面白かったです。