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from: 玖路さん
2011年03月17日 05時37分25秒
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とある魔術の禁書目録
今月『新約』として新たなスタートを切ったこのシリーズ、まず間違いなく今一番勢いのあるラノベでしょう。
自分は正直一巻から「微妙だな」と思ってたので、七巻までで話を追うのをやめてました。それが一年程前、とあるきっかけからその時点で出てた21巻まで全部買い揃えて、一気読みしてみた結果、意外に(失礼)面白かったわけです。
読み終えてから、どこが面白かったのかな、としばし考えました。
作家としての実力は、凡庸と言っていいと思います。
表現力は(ラノベ作家として)並(つまりちょっと不満)、説明ゼリフが多くて会話のテンポが悪い、それどころか無駄なエピソードも多数。ついでに擬音も多数。
小説としては、だいぶ造りが粗いです。
それがここまで売れているのは、おそらく脚本家として超凡だからではないかと。
特にそれが顕著なのは、スピンオフ作品である『とある科学の超電磁砲』でしょう。小説の、自分に酔った感のある妙な心理描写や、無駄な状況説明が、漫画やアニメという媒体のせいかスッキリと整理されて、そのおかげで整合性の高いキャラ配置とストーリー構成が生きています。
だから大まかな展開だけ考えて、細かい部分はもっとうまく描ける誰かに丸投げしてしまった方が、いいものができるんじゃないかとも思いますね。
あとはなんと言うか、舞台装置が素晴らしいです。
近未来の超科学に溢れた、超能力開発機関が統括する巨大学園都市。誰もが子供の頃想像する、自分が大人になったときに、実現されているかもしれない未来に対する憧憬がうまく形になっている、という感じですかね。
簡単に言うと、たぶんこのシリーズを好きな人のほとんどが、学園都市に住んでみたいと思ってるんじゃないかなー。
キャラクターについては……なんとも言いがたいものがあります。
特に主人公の上条当麻が一番意味不明なんですよね。
なぜなら彼には闘う理由がないからです。
大概のバトルものは、主人公にも敵役にも自分だけの戦う理由(復讐だとか野心だとか強さの希求だとか)があるものですけど、当麻には全くそれがありません。常に誰かのために闘います。
常に状況に振り回されながら、その中心点に向かって走っていって、「全ての異能を打ち消す」右手でぶん殴るわけですよ。
ふた昔は前の、勧善懲悪の物語の主人公……一番近いのは仮面ライダーとかアンパンマンじゃないですか。
ただ、それを二十巻以上も貫き通されると、違和感も何もなくなりますねwwこの「ぶれなさ」はホント凄い。
他のキャラクターについても、誰もが物語の主役になれるように、細かに設定がされています。もちろん一巻ごとの単位でみると無駄な描写もあるのですが、これはのちのち色々な場面をクロスオーバーして描けるよう、ちゃんと計算して書いてあるのでしょう。キャラクター相関図とか描いたら、もの凄い事になりそうです。
今月の新刊でシリーズ25冊目になるのですが、作品世界はまだまだ広がりを見せています。ここまで広げた風呂敷を、きれいにまとめられるのかは分かりませんが、これからさらに面白くなっていくことは間違いなさそうです。
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ちなみに電撃文庫で初めて累計発行部数が一千万部を超えた作品らしいですね。
単一シリーズで一千万部を超えた作品と言うと、
グインサーガ、スレイヤーズ、銀河英雄伝説、
魔術士オーフェンはぐれ旅、幻魔大戦、吸血鬼ハンターD
レーベルを超えての刊行も含めるなら、創竜伝とフォーチュンクエストもでしたか。
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