イデアについて考えるようになったのは、私が生長の家の信仰で活動していたときで、谷口雅春師はまだご存命で、生長の家に勢いがあった時代の頃です。谷口師は、武者小路実篤のナスビの絵の魅力について語りました。決してうまく描けていない武者小路実篤の絵がなぜ多くの人を魅了するのかというのです。彼の絵には、ナスビの目に見えない理念というものが描かれているから人々を魅了するのだと言われました。イデアでなく生長の家では、理念という言葉を使いますが、明らかにイデアと同じです。

　また、生長の家の教義は唯神実相論と呼ばれ、究極の存在は神と神より出でたるもののみとします。プラトン的イデア論と同じかたちです。では、イデアの内容において、プラトンの考えと谷口雅春師の考えが全く同じなのかといえば、それは分かりません。しかし、両者が考える内容において絶対に共通するものがあるということが一つあります。それは神という概念です。この一点において一致するはずです。これはキリスト教であろうと、仏教であろうと同じであり、万教は一つのものから生じた、すなわち万教帰一論となります。谷口師は、この理論により、キリスト教の聖書、仏典などを解釈していきました。私も、谷口師のこの考え方のうちにいたのです。