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  • from: ueyonabaruさん

    2010年11月27日 18時04分27秒

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    エマソンの「偉人論」 ③

     面白くないとき、不調なときなどには、エマソンの哲学に戻りたくなります。前回のエマソンの「偉人論」 ②が、10月12日でしたから、あれから一ヶ月以上経ったことになりますね。前回の続きです。


    (プラトン)

     このギリシャの都市国家に生きた一市民は、決して偏狭なナショナリストでも郷土主義者でもなく、普遍的な世界市民でした。彼の著作を読むと、イギリス人は、「この人こそ典型的なイギリス人だと言い、ドイツ人は、「これこそ生粋のドイツ人だ」とうなり、イタリア人は「彼こそロ-マ人の鑑だ」と賞賛するのです。

     プラトンも他の偉人の例にもれずに、自らの生きた時代をまるごと飲み込んでしまいました。それが、まさに偉人の偉人たるゆえんなのですが、旺盛なる知的な咀嚼力で、あらゆる芸術、科学、知識を自らのうちに吸収し、血肉に変えてしまうこの人物とは、一体何者なのでしょうか。

     彼は、まるで無駄なものなど何もないと言わんばかりに、ありとあらゆるものを平らげてしまいます。仮に、道徳的に問題がある思想だとしても、彼の旺盛な知識欲を刺激しないものはありません。何でも自分自身の内に吸収同化してしまうのです。そのために、同時代の思想家の中には、彼に盗作家の汚名を着せる人もいました。

     しかし、真の独創家は、誰よりも模倣の大切さを知っているのです。世の人々は、偉大なる建築物を目にするときに、一人の建築家の手足となって働いた数限りない下働きの人夫のことはすっかり忘れてしまい、偉大な建築家のみにすべての感謝を捧げるものです。私たちは、もしかしたら、プラトンの偉業をほめたたえているつもりで、彼が引用したソロンやソフロン、フィロラウスといった人たちの業績をたたえているのかもしれません。

     しかし、それでいいのです。すべての良書は引用に満ちています。どのような家屋も、森から木材を、鉱山から金属を、石切り場から土台石を、いわば「引用」することによって建てられています。一個の人間は、身体的には先祖からの「引用」に他なりません。まさに、この圧倒的なる知恵の総合プロデュ-サ-のために、彼に先行する諸民族たちは、こぞって豊富な題材を提供することになったと言っていいでしょう。

     プラトンは、その時代の学問・知識を精力的に吸収しました。まずは、ピロラウス、ティマイオス、ヘラクレイトス、パルメニデス、そして誰よりも師のソクラテスから、学べるだけのものを学びつくしたのです。

     しかも、それだけに飽き足りず、さらに古今随一の知の大総合者たらんとしたのでしょう。イタリアに行ってピタゴラスの精神的遺産をつぶさに学び、さらには、エジプトに至って古文書をひもとき、はてはなんと東方世界にまで足を伸ばした形跡すらうかがえるのです。おそらくは、ヨ-ロッパ人の与り知らぬ東洋独特の思考方式を取り入れて、西洋文明の精神的な欠落を埋めようとしたのでしょう。

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