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  • from: ueyonabaruさん

    2010年11月28日 18時01分31秒

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    エマソンの「偉人論」 ④

    (プラトン)

     「物事の本質を明晰な言葉でとらえて、しっかりと定義できる人は、私(プラトン)にとって神同然の知性の持ち主である」

     このように物事の本質をしっかり定義するというのが、哲学本来のしごとなのです。哲学とは、世界の仕組みを説明しようとする人間精神の試みに他なりません。

     哲学の奥にあるのは、常に二つの根本事実、すなわち(1) 一(同一性)と(2) 多(差異性)です。私たちは、この「一」と「多」によって万物を統一します。「表面的にはさまざまな相違はあっても、その根底に共通する一なるものがある」ということです。この一なるものを認めたからといって、必ずしも多なるものを否定することにはなりません。どんなことを語るにしても、考えるにしても、この「一と多」は、決して外すことのできないポイントなのです。

     私たちは、もともとさまざまな結果(現象)に共通する一なる原因(本質)を求めるように生まれついています。私たちの精神は、その本性からして、目に見える現象の奥にある原因の、そのまた原因へと限りなく遡及して、万物の究極原因にまでたどり着かずにはいられないところがあるのです。

     古代インドの聖典「ヴェ-ダ」には、次のような名言があります。「太陽の真ん中には光があり、光の真ん中には真理あり。真理の真ん中には不滅の実在あり」

     洋の東西を問わず、全ての哲学は、この究極の実在を追及してやみませんでした。そして、いったんこの根源なる統一に帰着したならば、今度は逆に、自然界を支配する必然の法則によって、この一なるものから一ならざるもの、すなわち現象の多様性を説明せずにはいられなかったのです。
     
     だからこそ、渾然一体となっているこの一と多を明瞭に区別して、再び統合することが、哲学の最も大切な課題となるのです。実際は、この両者は、矛盾対立するかと思えば、またたく間に互いに見分けがつかないほどに混ざり合ってしまう変幻自在存在で、なかなかとらえることができないものです。

     いつの時代、いかなる地域においても、こうして根源的な一なるものに対して深く思いを致す偉大なる覚者がいました。彼らが、深い祈りと瞑想の状態に入ることによって、この究極の存在と一体となると、この世の存在は、跡形もなく消え去ってしまいます。

     東洋の宗教書、とりわけインドの聖典「ヴェ-ダ」や「バガバッド・ギ-タ」「ヴィシス・プラ-ナ」は、こうした神秘的な境地を見事に伝えています。

     これらの宗教書は、ひたすらこの究極の一なるものについて、手をかえ品をかえて説いていると言っても過言ではないでしょう。この一なるものをたたえる詩篇は、至純で崇高な調子に満ち満ちています。

     結局、「万物は一に帰する」ということなのです。敵も味方も、田畑を鋤く人も、鋤かれる田畑も、またその鋤という道具も、みな本来同一の原素材から生じているということです。

     元なるものが同じである以上、個々の区別や変化は、さして問題になりません。

     クリシュナ神は、ある聖者に向かって次のように言ったそうです。


     おまえは、自分自身が、この私と違うものであると思ってはならない。この私という存在は、すなわち、おまえ自身なのであり、そして、神々や英雄、人間達が暮らしている全世界そのものなのだ。とにかく人間というものは、表面的な違いばかりにとらわれるが、それは彼らがまだ無明の闇の中にあるからである。「私」や「私のもの」という言葉も、無知迷妄より発した言葉にすぎない。私は、すべてのものの究極の目的を今からおまえに話そう。

     それは大いなる霊なのだ。それは、あらゆる肉体や物質の内に宿り、形を変ずることなく、完全無欠であり、大自然の至るところに偏在し、不生不滅であり、真理の言霊によって成り立ち、すべてのものから独立して、この世のすべての名目や立場といったことを超えて、過去・現在・未来を貫いて存在している久遠の霊なのである。

     おまえは、この大いなる霊が、本質的に一なるものであり、自分自身と他のあらゆる人の体の内に宿っていることを知らねばならない。さすれば、おまえは、万物の統一を知る最高の叡智を手にすることになるであろう。

     (次回に続く)

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