ブルースを、演ろうと思った。
いや、すべてが、ブルースだと、そう思っていた。
すべてを、深い　BLUE　な　青い闇にしたかった。

と・・

　俺の側を、誰かが通り過ぎた。
そいつは、おもむろにキーを叩きはじめた。
ガラガラだった。　かろうじて残っているのも
くたびれた　何をアテにしているか解らぬ、おっさん連中だった。

　ほう・・這うようなベースが流れだした。
俺は、その　ベースにあわせ、俺のうたを唄いはじめた。

　ベースは、淀みなく、迷いなく　絡まってくる。
暗い「ただの暗い箱」が、「青い深い　BLUES（闇）」に
変わった。

　SUZI　QUATRO　のように、そいつは、ベースを己の股間に
挟んでいたのか、どうか　俺は知らない。

　一曲が終わった。　後ろをふりかえると、そいつは
さそうように、唇のはしで、ニヤリと笑ったのだった。