◆昭和20年12月11日、京成電鉄労組が５倍賃上げを要求しストに突入した◆やみ米一升60円、運転士の月給80円。戦後の凄まじいインフレに低賃金労働者の我慢は限界を超えた◆このストは奇妙なことに、組合員は仕事をした。津田沼の車両工場に非番の運転士・車掌まで集まり、窓ガラスの割れなど危険な車両を徹夜で修理。乗客に迷惑をかけたくないと、残り車両で通常ダイヤの１/3の運行を行った。ただし、運賃を取らなかった◆戦後の食糧難は深刻であった。買出しの人には「いも電車」は命の綱であった。窮乏生活の乗客から、感謝と激励の手紙が組合本部に山と積まれ、「お礼だ」と言って駅員室に野菜を置いていく人もいた◆会社側の警告により、スト１4日目から運賃を有料としたが、組合は運賃収入を全額千葉銀船橋支店に預けた。その額は5日で23万円にもなり、給料を5倍としても半月で全従業員の給料が払えるだけの収入があることが分かった◆低賃金を強いて、8分配当を続けさせていた川崎財閥はついに折れ、組合の要求を呑み、20日間に及んだストは終結した◆翌年、成田山新勝寺の事務員230人も3倍賃上げストに成功◆戦後労働運動の口火を切った京成労組のスト成功は全国の労働者の灯となった。