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ゾイドバトルストーリー文藝部

ゾイドバトルストーリー文藝部>掲示板

公開 メンバー数:8人

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from: たかひら鶉さん

2008年09月05日 10時54分10秒

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<連載小説>白霧の戦線〜Banners Of Liberation〜

白霧の戦線〜BannersOfLiberation〜writtenbyTGZCAUTION!!著者本人ノ許諾無キ部外ヘノ帯出を禁ズ



白 霧 の 戦 線 

〜Banners Of Liberation〜

                     written by TGZ

CAUTION!!
著者本人ノ許諾無キ部外ヘノ帯出を禁ズ

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from: TGZさん

2008年10月14日 17時49分27秒

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「第二話 『戦場の一蓮托生』 後編」
「ゾイド乗りの腕はベテランとは行かないまでも……指揮官が優秀だな」
 コマンドウルフを横滑りさせながらブランドンが呟く。
 ロングレンジライフルを三点射。避けられた。返しでビームが束になってコマンドウルフを目掛ける。
「……先程の言葉は取り消すか」
 ウルフを横っ飛びさせブランドンはニヤリと笑った。
「余裕ブッこいてる場合か! ったく勘弁してくれッ!」
 隣でマイクがヘルキャットを走らせながら叫ぶ。
 さらにライフルのパワーレベルををミリタリーからチェックへ落とし乱射。同時に跳びずさる。
「むっ!?」
 着地時に右前足のダンパーに異音が響く。
(くッ! さっきのビームか! 高負荷機動はできんな……。持つか……?)
 一声ウルフが吼えた。
(そうか、まだやれるか……!)
 敵は王国軍の黒と青で塗られたヘルキャットでほぼ統一されていた。こちらは城砦をあまり離れる訳には行かず、構成機もまちまちだ。同一機で構成されている為同機動力のヘルキャット隊で攻めては引くを繰り返す事で、機動力の異なる革命軍機を分散させ、集中攻撃を掛けていた。さらに部隊を三列に分け、陣対陣に有利な陣形で突撃させた後、各個戦闘に移し、自軍戦力が分散しきる前に第一陣を退かせ第二陣を突撃させる波状戦法を取っている。
 流石に傭兵達も瀬戸際での引き時は心得ているのか、死人は少なかったが戦闘不能となる機体は増える一方だった。
「こ……このままじゃあ……!」
「弱音を吐くな!」
 イヴナの言葉につい反射的に言ってしまってからブランドンはしまったと言う顔をする。しまったと言う顔をしながらヘルキャットの前足を噛み砕く。
(奴には構わんと決めていたが……)
「は……はい!」
 ブランドンの心情を知ってか知らずかイヴナが返事をした。

「戦況はどうなっている!? 敵機数と構成を正確に! 出られる機体は……!?」
 無線にがなりたてながらライランドはディバイソンに乗り込んだ。
「やはり高速機での波状戦法か……分かった。ああ、すぐに出る!」
(この戦い方……!)

「これ以上は……!」
 ステルスバイパーに乗って煙草を咥えた傭兵、ギャリット・ボールドウィンは唸った。
 周りは青黒のヘルキャットのみ。完全に孤立している。
「万事休すか……ッ!?」
 刹那、轟音とともに幾条もの光が降り注ぐ。数機のヘルキャットがまとめて吹き飛んだ。
「死にたくないだけならば退がっていろ! 勝利も手にしたいのなら私の指示に従え!」
 通信が開いた。
「ディバイソン……!将軍か」
 ギャリットは呟く。
「聞こえているのかッ!そこのステルスバイパー!」
「は、はい!」
「全軍に告ぐ! この戦況では役に立たん装甲擲弾隊は退がれ! 砲撃機、城壁上部からの援護に専念! 高速機、正面戦闘! 突撃機、迂回して敵の頭を潰すぞ!」
 後方からラリーサのベアファイターが躍り出た。
「プラムヤ隊! 続け!」
 群れを成して突撃する鋼鉄の猛熊。ヘルキャットは退がりはじめた。

「反乱軍、まとまった反撃に移り始めたようです」
 波状攻撃を仕掛けるヘルキャット隊の後方。指揮者使用のグスタフ。
「指示は早い。『指し手』も悪くは無い。だが伝達が遅いな」
 カザントが言う。
「機体の準備は出来ているか? じきに敵はここを狙ってくる、私も出るぞ」
「問題ありません」
 フラッドレーが言った。
「手筈通りに頼むぞ」 

「……ゴジュラスは出せるか?」
 情報管制の喧騒飛び交う司令室で、通信機を通してライカスは技師長に呼びかけた。
「出せるっちゃあ出せます。整備は終わっておりますからな。ただ、銭もパーツも少ないということを考慮していただけるとありがたいですが」
「分かった」
「この戦況では逆にゴジュラスの出る幕は無いのでは?」
 ウェリントンが言う。
「いや……まだ分からん。これで終わるとは思えん」
「根拠は?」
「……将軍が本気を出している。前回は私のお供だったが今回は……」
(それにこの戦い方は……)
「成る程」
 ウェリントンは目を細めて頷いた。
 ライランドの指示に乗り遅れた、あるいはそれを無視した機体は孤立し集中攻撃を受けて大破していく。だがその数は少なかった。
 敵はこちらの動きを読むと同時に陣形を変える。防御に適した方陣。そして波状移動のサイクルが早くなった。出来るだけ消耗せず敵を進ませない為だ。
「城攻めで防御陣形に入りましたか……これはもう撤退の準備ですかね」
 ウェリントンが言う。
「いや、これは……何かを待っている……?」
 ライカスが呟く。
「?」
 ウェリントンが片眉を上げた。
「すまんがウェリントン君、後は頼むぞ!」
 ライカスは格納庫へ駆け出した。
「……やれやれ」
 ウェリントンは呟き、その自分の声にハッとし、そして首を横に振った。
(私は……馴染んでいるのか……あの男とこの仕事に……!?)

「あれが指揮車かッ!」
 王国軍のグスタフをディバイソンのモニターが捕らえた。
 敵陣を切り裂く突撃機の一団。後方を高速機が固め、退路を確保する。
 突如、ヘルキャットがザッと下がった。グスタフに牽かれた巨大なコンテナが開く。
「その肩章……やはり貴様か、カザント・ヴィシュナワート……!」

「アイアンコング……!」
 イヴナは呟いた。
 名前は忘れたが東方大陸のボードゲームの駒を模ったパーソナルマークがペイントされている。
「やはり貴様か、カザント・ヴィシュナワート……!」
 オープンチャンネルでガイサックの通信が開いた。
(将軍!?)
「相変わらずのようだな、ライランド」
 これはアイアンコングからか。
「何故マタンナの客将だった貴様が『そこ』に居る。よりにもよって……ヴァツト指揮下の王国軍等にッ!!」
 マタンナ共和国。エウロペ東部の小国で、長く明確な国境を持たず、「カヌグル」と呼ばれる遊牧民族が多く暮らしていた。近年になり近隣諸国による領土分割が始まり、それに抵抗する為、統一戦争が起きている。カザントは王国軍からその統一戦争に外交の一環として送られた増援隊の指揮官だった。ちなみに、ZAC2099年1月に終わった統一戦争の後、マタンナはヘリックの後押しで共和国化し、現在もヘリック共和同盟圏の一国だ。
「知れた事、マタンナを追い出されて元の所属に戻ったまで。そして我が目的、我が誓い……それを果たさんが為に」
 全ての機体が止まっている。パイロット達は二人の会話に耳を傾けているのだろう。
(……将軍はこの人と見識がある……?)
「分かっている筈だ、今の王国軍の実態……! それでも尚ッ、そこに残るかッ!!」
「私は軍人! 理由など、それで十分」
 イヴナにはその声が苦渋を含んでいるように聞こえる。
(十分……? そんな訳ない……。理由は自分で見つけるべき物……。あなたの『理由』は……)
 イヴナはコマンドウルフの方を見た。

「今の時点では……最早語る事は何も無いッ!」
 アイアンコングが跳躍した。
「ぬぅッ!」
 ディバイソンが跳び退る。
 轟音。
 地面が、割れた。
「来ないのか?」
 感情を押し殺した声。コングが胸の前に掲げた拳から土がパラパラと落ちる。
(敵だというのなら……今は、ただ、戦うのみか……!)
 ディバイソンが頭を上げた。
「破ッ!」
 一閃する超硬角。それを跳んで回避するコング。
 ディバイソンは勢いを殺さず蹄で急旋回。十七の轟音が大気を穿つ。避けられた。
「フン、『脇役』がッ!」
「な、に、をぉおおおおおッ!!!」
 再び超硬角の一閃。コングは今度はそれを正面から受け止めた。
「な!?」
 超硬角が掴まれている。
「ぬうえぇいッ!!!」
 掴んだままコングが上半身を回す。
 ディバイソンの機体が、宙を舞った。

「な!? 将軍!!」
 ベアファイターの一団――プラムヤ隊がアイアンコングに突撃した。
 避けられる、殴り飛ばされる、投げられる。周辺でも戦闘が再開した。ヘルキャット隊が革命軍とぶつかり合う。
「!」
 ブランドンは我に返った。
「マイク! 援護を!」
「って、え!? わ、分かった」
 ディバイソンは地面に叩きつけられてから動いていない。
「チッ!」
(この戦況ではゴジュラスは出撃していまい……!)
 マイクの援護射撃を受けながらスモークを全開にしてコングに突っ込む。
 肩関節を狙ってライフルを発射。コングはわずかに体をそらす。射角が浅くなった。拳を避けて跳び退る。
(外したか。だが……!)
 追い縋るコングが煙幕の中に突っ込んだ。
 ライフルのモードをミリタリーからマックスへ。感度を最大にしておいたセンサーを頼りに撃ち込む。一発……二発……三発……。
「!?」
 煙の中から拳が飛び出す。
「く……ッ! ……!?」
 ウルフの右前足が崩れた。
(さっきの損傷かッ!!)
 残った足で直撃だけは避けようとする。
 そこへ。
「!?」
 イヴナのガイサックが、割って入った。

 文字通り吹き飛んだ。マイクのヘルキャットの頭上を越える。
 破片をバラ撒き、横滑りし、止まる。顔から血の気が引くのが分かった。
「バカがッ!!!」
 ブランドンは叫ぶ。ウルフが腹から大きく吼えた。怯むコング。
「ぬおぉおッ!」
 ライフルを強制排除。右の肘関節に喰らい付く。遮二無二振り回される。
 ウルフが飛ばされた。……が、コングの右肘のアクチュエーターが音を立てて爆発する。
「ブランドン!!」
 マイクが叫んでいる声が聞こえる。
(南無三……)

 だが、コングが顔を向けていたのはウルフではなかった。

「生きているか? 私に話しかけられたら死ぬなんてジンクスを作らないで欲しいものだがね」
「司令!?」
 ガトリングの付いたヘルキャットのパイロットが叫んだ。
 ウルフが弱くだが確かに唸り、首を上げる。
「ガイサックも回収した。パイロットも生きているそうだ。…………さて」
 ライカスは顔を上げてアイアンコングを見た。
「久方振りだね。カザント・ヴィシュナワート将軍」
「……ライカス・フッダール代議士。ライランドの仲立ちで会ったとき以来か」
「こちらに来る気は?」
「折角だが……断らせてもらう」
「ふむ……では戦うかね?」
「右腕が使えん状態でゴジュラスと……いや、貴君とやりあう愚は避けさせてもらう。あまり『高飛車』なやり方は嫌いだ。それに、手紙も回収した……」
 最後は聞き取れなかった。
 刹那、全てのヘルキャットが閃光弾を放った。

 後に残ったのは、動かぬ残骸と革命軍のみ。
「ウェリントン君、全軍に通達。『我々は勝利した。帰還せよ』とな」
「了解」
 スピーカー越しにウェリントンの声が聞こえた。

     *     *     *

「……」
「……」
「……」
「……」
 一緒に担ぎ込まれたブランドン、イヴナ、ライランド、ラリーサの四人は部屋の一角に横に並べられて寝かされている……もとい、いた。ブランドンとラリーサは寝ていろと言われたにも関わらず既に起き上がっている。
 死人も少なくない戦いだ。負傷者は多い。ベッドなど足るはずが無い。辺りは雑魚寝さながらである。
「やあ、気分はどうだね」
 ライカスが様子を見に来たらしい。
「最悪ですよ」
 開口一番この調子なのはラリーサだ。
「今回ほとんどど噛ませ同然でしたから、ああ、全く情けない!整備員も医療班も資金も足りないのに。足りないのは司令、あなたのせいですけれどね!」
「あまりまくし立てない方がいい、体に障る」
 ライカスの言葉にラリーサが固まる。
(ラリーサ隊長……こんな感じだったっけ?)
 かつぎ込まれる途中に二言三言ラリーサと会話をしたイヴナは思う。
「大体!そもそも……」
「ラリーサ隊長って、何か司令が相手だと多弁になってその上遠慮が無いですね」
 ラリーサの言葉におっかぶせてイヴナが言った。ラリーサがさらに固まった上に赤くなる。
「気のせいだと思うが?」
 何食わぬ顔でライカスが言う。
「司令も……狸、ですな」
 ライランドが起き上がった。
「大体の事情は聞かせてもらった」
 表情を変えてライカスが言う。
「そうですか……。彼と私は士官学校時代からの付き合いで……いや、そんなことは関係ないですな」
 ふむ、とライカスが首を軽く傾げる。
「彼が向こう側に未だ留まる理由は分かるかね?」
「自分は軍人である、それが理由だと言っていましたが……」
「『が』?」
 逆接に繋がる言葉をライカスは尋ねる。
「それだけではないような気がするのです。……根拠はありませんが」
「そうか……」

「イヴナ」
「……はい?」
 ライカスが出て行って、ラリーサが隊員の様子を見に行った時にブランドンが言った。ライランドは寝ている。
「何故あんな無茶をした?」
「聞かなきゃ分かりませんか? 理由」
 少し寂しそうな言葉。
(どのみち……付きまとわれるな)
 ブランドンは自嘲気味に笑った。
「……いいだろう」
「……? ……!!!? はい!? 何の事です!?」
「聞かんと分からんか?」
 ニヤリとブランドンは笑った。
「よ、よろしくお願いします!」
(二度と失いたくは無い……。なら……)
「自分を守れるだけの力は必ず身に付けろ、いいな」
「はい!」

 ライランドは隣でのやりとりを聞いて気付かれないように軽く笑った。
(若さだな……だが、私は……。彼にまで『脇役』と言われるとは)
「?」
 隣の部屋から騒ぎ声が聞こえてきた。
「あのおっさんの指揮なら俺らは勝てる!!」
「直接戦闘でのやられっぷりは酷かったけどな!」
「ワハハハハハハハ!!」
「ライランド・ホフマン将軍に乾パーイ!」
「かぁんぱーい!!」
「おい、俺らも混ざっていいか!?」
「誰だお前等?」
「構わねぇって! 入れ入れ!」

 『組織力』は改善しつつあった。

(私は……。ああ、まだいけるな!)
 ライランドは拳を握り締めた。

 格納庫。
「終わらねぇ終わらねぇ終わらねぇぇぇええええええ!!!!」
 ヘルキャットも整備が必要な上に、右前足全損のコマンドウルフと半壊したガイサックの修理を頼まれたマイクは死にそうであった。

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