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ゾイドバトルストーリー文藝部

ゾイドバトルストーリー文藝部>掲示板

公開 メンバー数:8人

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from: たかひら鶉さん

2008/09/05 10:54:10

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<連載小説>白霧の戦線〜Banners Of Liberation〜

白霧の戦線〜BannersOfLiberation〜writtenbyTGZCAUTION!!著者本人ノ許諾無キ部外ヘノ帯出を禁ズ



白 霧 の 戦 線 

〜Banners Of Liberation〜

                     written by TGZ

CAUTION!!
著者本人ノ許諾無キ部外ヘノ帯出を禁ズ

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from: TGZさん

2008/10/14 17:17:53

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「第二話 『戦場の一蓮托生』 前編」
「まずはタイメイアを陥とせた事を祝おう。君達の奮闘あってのことだ。礼を言わせて頂きたい」
 タイメイア城砦。革命軍の上層部がそろっている中で、ライカスが言った。
「さて、今後の事だが。まずは補給に関してだ。参謀長」
「では、申し上げます」
 ウェリントンが立ち上がる。
「タイメイア城砦の物資を全て接収し、捕虜はヘリックに引き渡す予定ですが、食料含め生活物資に関しては持ってせいぜい一週間分と言うところです。武器弾薬類に関しては……」
 ウェリントンが軍事物資を取り仕切る技師長の方を見る。
「戦闘の規模と頻度にもよるでしょうが、今回の戦闘を一回とすると三回程度の備蓄ですな」
 技師長が言う。
「へリックからの援助は?」
「協定で定められた最低限の物しか来ていません。やはり先方も気を抜けないようです」
 ウェリントンが応じ、腰を下ろす。事実、この後ガイロスはヘリックからの停戦勧告を無視する。
「将軍、今後の戦略についてはどう考える?」
 ライランドの方を向き、ライカスが言う。
「まずは、このタイメイア城砦を拠点として使う体制を整えたほうが良いかと考えます。組織力を改善する期間も必要でしょうし、ヴァツトが勢いだけで倒せる相手とは思えません故。ただ、

補給の件もあります。あまり手間取っては後手に回る事にもなりかねませんな」
「組織力の改善……ですか」
 ホワイトミスト直属の戦闘部隊、プラムヤ隊の女隊長、ラリーサが柳眉を寄せて呟く。
「将軍、その『組織力の改善』はどうなさるおつもりか?」
 ホワイトミストの幹部の一人が言う。
「それは……」
「呆れた物だ、考えがないと!?」
「まあまあ、落ち着きたまえ。考えのある者は?」
 ライカスが言う。
「資金さえあれば……!」
 別の幹部が言う。
「金で繋ぎとめた結束等脆い物だ。危うくはあるが、今のヴァツト打倒でなんとか持っている組織を、方向性を変えないまま纏めねばならん」
「とはいってもゴロツキ共がそう上手く……」
 幹部の台詞にライカスが言葉を被せる。
「彼等は彼等で事情が有って傭兵を生業としている者が多い。我々が地下組織として活動してきた様にな」
「……それは……そうかもしれませんが」
 傭兵をゴロツキと言った事を非難したらしい。
「しかし傭兵業は信用の上に成り立つ商売だ。資金さえあれば相応の働きはするのでは?」
 また別の幹部が言った。
「たとえそうにしても無いものねだりでしょう」
 ウェリントンが言う。
「ところで技師長、司令のゴジュラスは……」
 ラリーサが言った。
「ああ、そのことですが」
 技師長はニヤリと笑った。

「ブランドンさん!」
「言ったはずだ、弟子など取る気は無い」
「お願いです、この通り」
「知らん」
 整備員の人数不足で何時整備してもらえるか分からないので、自分でコマンドウルフを整備するブランドンだったが、そこにイヴナが付きまとっている。
「おい、そこの君! ガイサックの整備で分からんところがある。ちょっと来てくれ!」
 整備員が声をかけた。
「え、あ、は〜い」
「糞ッ! 光学迷彩がありゃあこんなに損耗しないだろうに!」
 ガイサックの方へ駆けていくイヴナを見ながら隣のヘルキャットから、同じく整備中のマイクが言う。攻城戦で調子に乗りすぎてヘルキャットを痛めたらしい。
「輸出仕様の機体には光学迷彩は装備されていないんだろう?」
 手を止めずにブランドンが言った。
「変なところで出し惜しみしやがって……ガイロスの連中め」
「光学迷彩を装備したところで、その装備にコストと手間がかかるだけだと思うがな」
 傭兵の機体選びに重要なのは、性能よりもまず、損耗率と部品のコスト、規格外の部品も受け入れられる設計上の余裕だ。
「……むぅ。まぁ、それはそうと、そこまで嫌がる理由は何だ?」
「奴のことか?」
 ブランドンが手を止め、ガイサックの方を顎でしゃくった。
「そ、イヴナちゃん」
「……生憎、その気も義理も無いんでな。それに、あの手の人間は苦手だ」
「煮えきらんなぁ。お前らしいといえばお前らしいが……」

     *     *     *

 時は少し遡る。タイレンの王都、ベドルナク近郊。王国軍基地、ドルニテ。
「ぬうッ……。デモクラット共め!」
 ジャルナク中将は報告書を握りつぶした。
「中将、状況は?」
 男が部屋へ大股で入って来た。
「カザント准将か。反乱軍の手によってタイメイアが陥ちた」
「タイメイアが……!? 反乱軍の指揮官は誰です!?」
「フッダール、ライカス・フッダールだ」
 ジャルナクは忌々しげにその名を口にした。
「ライカス……」
 カザントが呟く。
「あの男、一度投獄されて大人しくなったと思っていたが……。狸め……!」
 ジャルナクがより一層報告書を握り締める。
「各地のレジスタンスは?」
「まだ目立った動きは無いが、時間の問題だろう。フッダールがヘリックのを後ろ盾を取り付けたらしいからな。連中がこの機を逃すはずが無い」
「! ヘリックの……ということはやはりあの情報はダミーだったのか」
 カザントは首を振った。
(しかし……ヘリックの後ろ盾か……これは問題だな。あの国のような事にさせる訳には……!)
「准将、幸い制空権はこちらの物だ。タイメイアに最寄のイェンバ基地まで飛んでくれんか。あの基地には優秀な指揮官がおらん」
「願ってもいない……叩き潰して見せましょう」
「……それと、反乱軍に諜報員が一人潜入している。行きがけに接触してくれ」
(諜報員?)
「分かりました」
「頼むぞ、『猩将』」

     *     *     *

「奴を見ていると……あいつを思い出す」
 ガイサックの方を向いてブランドンが呟いた。
「ん、何か言ったか?」
 整備を一足先に終えたマイクがこちらを向く。
「給弾作業も済んだのか?」
「ああ、一応な」
(弟子、か。何にせよ、また失うわけには……)
 ふと、ブランドンが顔を上げ、眉を寄せた。
「どうした、ブランドン?」
「いや……」
 マイクの問いにはっきりとは答えず、ブランドンは最後のボルトを締め上げつつ、首を動かさず目だけで辺りを見回す。刺されるような感覚。
(視線か?やけに鋭い……)
「……消えたか」
「あ、おい」
 マイクを無視してブランドンはコマンドウルフから飛び降りた。

「整備の手が足りていない……か。なるほどな」
 格納庫からは死角になっている通路。サングラスの男が顎に手をやって呟いて、踵を返そうとしたその途端。
「動くな」
「……ふうむ、無用心が過ぎたかな」
 背中に銃口が突きつけられるのを感じて男は動きを止めた。
「どこの人間だ?」
 背後からの言葉。
「それはこちらの台詞……何? どこの人間?」
「傭兵の身のこなしではない……だが操縦桿を握ってきた手だ。何を調べていた?」
 ニヤリと笑って男はサングラスに手をやった。
「動くなと言った……!」
 銃口がより強く押し当てられる。
「この顔に見覚えはないかね?」
 男がサングラスを外した。
「!……申し訳ありません」
「いやいや、君のような人間が居てくれるなら私がスパイを警戒する必要は無いな」
 ニヤニヤと笑いながら男――ライカス・フッダールは言った。
「名前は?」
「ブランドン……ブランドン・ヴァイシュタイン」
「そうか、私がライカス・フッダールだ。知っているとは思うがね」
 ライカスは方眉を上げて右の口元をニヤリと吊り上げた。
「失礼しました」
「いや、私もこんな格好で出歩いてきたのがまずかったな。会議も一段落して様子を見に来たのだが」

「マイクさ〜ん! ブランドンさんは?」
「さあ? さっき一人でブツブツ言ってどっか消えたけど。ガイサックは?」
 イヴナの問いにマイクが答える。
「規格外の部品を使ってたんでちょっと問題があっただけで、整備も終わりました。それはそれとして……どうしたらいいんでしょう……」
 イヴナがコマンドウルフを見上げる。ウルフが軽く唸った。
「弟子入りねぇ……」
 マイクが天井を仰ぐ。
「奴は奴で必要以上に嫌がってるように思えるが……気になるのはイヴナちゃん、君がどうしてアイツに弟子入りしたいかなんだが」
「それは……ブランドンさんに我流じゃだめだと言われて……」
「惚れたか?」
「な、何でそうなるんですかっ!」
(おうおう、顔が赤いぞ)
「じゃあ、この革命軍に参加しようと思った理由は?」
 ニヤニヤしながらマイクが言う。
「……端的に言うなら、両親の為……ですか」
「?」
「重税で喘いでいる内はまだ良かった……。国交が途絶えて輸出入ができなくなって……。問屋業を営んでいた私の父母はファハン市の嘆願集会に出て行っている時に武装警察に連行

されました」
「ぬ……」
「父母は……多分処刑されては居ないはず。ヴァツトを倒してあの日常を取り戻したいんです。だから経験の有る人に色々教えてもらいたいんですけど伝手も無くて……」
 マイクはイヴナの目を見た。その目が輝くのは凝視している暗闇の中に希望の光があるからか。
(それが君の『理由』か。両親の為……俺とはえらい違いだな)
「じゃ、代わりにブランドンの事、一つ教えておこうか」
「何です!?」
「昔、奴を庇って死んだ傭兵が居た。それが君によく似てると奴は思ってる」
「え!?」
 イヴナが目を見張る。
「奴の様子を見ていると、似てるのは外見よりも行動や考え方らしいけどね。奴は怖いんだろうな。二度失うのが」
「怖い? ……でも」
 イヴナの目が泳ぐ。
「ああ見えて臆病なのさ。あの男は。俺も短い付き合いじゃないんでね、それくらいは分かる。とりあえず、その辺どうにかしないと、どうにもならないと思うぜ?」
「そうですか……。分かりました!」
 イヴナが笑うのを見てふとマイクは思った。
(ん……待てよ……伝手がないってだけなら別に俺でも……)
「あ……」
 既にイヴナは居なかった。
(まぁ……いいか)
 赤くなったイヴナの顔とブランドンの仏頂面を思い出しながらマイクは一人ニヤニヤした。

(むう……ぬかったな)
 頭を下げつつブランドンはそう思った。
「ところで、だ」
 ライカスが言う。
「ここで会ったのも何かの縁だ。少し手伝ってもらいたい事がある」
「非礼の手前もあります。出来る限りの事なら」
(いや……しかし)
「司令! ここにいらっしゃいましたか」
 男が駆けて来た。
「どうした?」
「ヘリック共和国軍のグレアム・クライヴ中将がお見えです」
「何……!? 本人が、か?」
 ライカスが眉を寄せた。その目をブランドンは見た。
(この目線だったか……? いや、わからん)
「はい。何でも、司令に直接話したい事があると」
「分かった。すぐに行く。ブランドン、また追って話そう」
「お忙しいようで」
「『まだ』彼等には任せられん仕事もあるのでな」
 ライカスは今度こそ踵を返した。
(まだ任せられん……か)

     *     *     *

「……総戦力数のデータは……タイメイアの事を鑑みても質の問題でアテにできんからな」
 イェンバ基地。指揮車仕様のグスタフに乗り込み、カザントは資料を再確認した。
「何!? 一体どういう……? ああ、そうか、分かった」
 イェンバ基地の司令官、マタル・カ・フラッドレー中佐が携帯端末を耳から話した。
「准将、ヘリックのグレアム・クライヴ中将がタイメイアを訪れているようです」
「グレアム……対外干渉に積極的な軍閥のリーダーだな」
 苦い顔をしてカザントは呟いた。
「このまだ危険な時期に本人が出向くとは……」
「大方、後々のことを考えてのパフォーマンスだろう」
 協力の姿勢を示す事で恩を売ろうと考えている、とカザントは踏んだ。
(だが……それだけか?)
「成る程……。と、准将、出撃準備が整いました」
「よし、これ以上後手に回るわけにはいかん。まずは様子見だが高速部隊で突いて『角道』を開けさせるとしようか」
「は? 『角道』でありますか?」
「ま、相手の出方を見るといったところだな。出るぞ!」

     *     *     *

「中将、ご足労、痛み入ります」
 ライランドが言った。
「いやいや、我が空軍は最早どの国にも劣りませぬからな」
 ストームソーダーの開発、レイノスの再配備、そしてこの時期にはサラマンダーの再生産と共和国空軍は着々と力をつけている。
「……ご用件は?」
 グレアムに尋ねる。
「実はライカス閣下に直接手渡したい物がありまして」
 そう言ってグレアムは懐から数枚のディスクを取り出した。
「お預かりしましょう」
「ライカス閣下に直接、と申し上げた」
「む、……」
「お待たせした!」
 ライカスが入ってきた。
「……それは?」
「我が軍内でも研究が進められているあるシステムのデータです。何らかの役に立てばと思いましてな」
「それはありがたいが、開発関係のデータは私達が役に立てるは……」
 ライカスが困ったような表情をする。
「開発関係のデータ……間違いではありませんが、一度、その類が分かる人間に見せれば、これが本質的に何なのか分かるかと」
「……分かりました」
「それと、信用するしないは貴方方次第ですが、進路上にある遺跡は出来るだけ抑えておいた方が良い。取り返しのつかぬ事を恐れるならば」
「…………」
(一体何だと……? いや、それにしても私は……)
 ライランドは左右に小さく首を振る。
(『脇役』か……)
「では、私はこれにて失礼しますぞ、イェンバから王国軍も近づいて来ている様なのでね」
「!?」
 グレアムが踵を返すのと、警報が鳴り響くのはほぼ同時だった。

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