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シムダンス「四次元能」

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  • from: 生成門さん

    2008年07月19日 10時56分04秒

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    起死回生の思考(2)カミングアウトして救われる

    プロセス球の図は上村武雄氏著「気配論」から引用しました。

    起死回生の思考(2)カミングアウトして救われる
    <シムダンス=補完共振>

    起死回生の思考(1)「我輩は猫である」では夏目漱石を取り上げました。
    http://www.c-player.com/ad00178/thread/1100070757046
    以下引用です。

    スキゾタイプの人がパラノの世界に入ると被害妄想的になるのです。夏目漱石は巻き込まれたのです。夏目漱石がモンゴルに生まれたならば、被害者意識ではなく、魚が水を得たような天真爛漫な気質を出していたでしょう。スギゾがパラノ世界に生まれると、我輩は被害者である。猫は被害者である。だから、「我輩は猫である」となるのです。これが述語思考・論理です。考え過ぎでしょうか。知に働けば角が立ち、情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくこの世は住みにくい。草枕の冒頭の言葉です。ここに、夏目漱石の分裂症親和的気質が現れているのです。
    ---
    今回は、夏目漱石と似ている西田幾太郎を取り上げて見ようと思います。西田幾太郎は、そのものズバリ、分裂性格者の救済の哲学といわれたのです。しかし、親戚の哲学者は分裂症親和的な性格の持ち主といわれることを嫌いました。世間体もあったのでしょう。必死になって否定したのです。家庭でも立派な父親であったと述べています。それほどにパラノ世界にいると、スキゾ的言動は異常と看做されたのです。

    今日では、性同一性障害は立派な市民権を得ましたが、それまでは本人はもとより、家族は白い眼で見られて大変な苦労を強いられてきたのです。性同一性障害はスキゾではないのですが、その悩みは、西田幾太郎の悩みと同質であり、スキゾの共通点があります。資本主義の自我同一性という、自己保存本能の弊害で、悩むパラノにも、共通性があるだろうと思います。それにしても、精神病院行きになりそうな人が、自分の悩みを解決して救済者にされてしまうのだから面白いものです。その西田幾太郎のテキストは、道元に劣らず超難解です。しかし、彼の場合は思考のプロセスが残されています。

    西田幾太郎に触発されて気配論を著述した上村武雄氏はこういっています。西田幾太郎は、混迷から自覚へと階段を登っていったのです。その思考の軌跡がテキストから読み取れます。混迷から自覚までのプロセスはこのようなものかということを理解できる形で残してくれたのは西田幾太郎一人でしょう。私達が、後を辿れるのは西田幾太郎が自分の苦渋のテキストを残してくれたお陰です。夏目漱石も自分の苦しい状況を小説という形で残してくれたのですが、それを述語論理による思考のプロセスとして、私達が利用できるところまでは心の裏側を見せてくれていないのです。その点で、西田幾太郎が道元に述語思考を発見し、それを哲学までにしたのは、大変貴重な仕事をしたと思うのです。それというのも道元の中に自分を見たからでしょう。これが、スキゾがスキゾを見抜く、共感するということの現れなのです。

    その反対に、西田幾太郎に道元を見ることができなかった後輩がいました。彼の無の哲学は、混在、混迷、いっしょくたであると批判したのです。それは本人がパラノだからです。パラノはパラノを見抜き、スキゾはスキゾを見抜くのです。後輩は、西田幾太郎の述語論理を理解できなかったのです。この後輩はパラノだから、二元対立で論理が体系的にされなければ気に入らないのです。つまるところ整理整頓、綺麗好きなのです。もうすこしで、西田幾太郎は消滅されるところでした。

    「いっしょくた」というのは、スキゾの特徴です。玉石混合、清濁合わせ飲む、混沌からの秩序形成、老子と荘子、陰陽の五行などはスキゾの現れなのです。このことが意味するのは、思想、思潮、言明を理解するには、気質を理解しなければならないということに繋がります。良いとか悪いという評価は、評価する人とされる人の気質が関係しているのです。つまりは、互いに反映しているということなのです。内が外にあらわれるというのはティトムでも基本です。

    上村氏は、自覚(悟り)の獲得までの思考の軌跡をプロセス球という形で浮彫りにしてくれました。出立ち、踏み迷い、知り覚え、還りゆくという循環によって表現されています。このプロセス球に、西田幾太郎自身の思考の軌跡である前期、中期、後期の作品を対応させたのです。彼の思考が時代と共に変遷していく様子が手に取るように分かるようになっています。

    その球は、

    出立ち<初期西田>
      →生まれたままの純粋の経験の場所

    踏み迷い<中期西田>
      →常識世界の苦を経験する場所

    知り覚え<中期西田>
      →苦から解放された自由意志の場所

    還りゆく<後期西田>
      →絶対の悟りの場所、生まれた場所

    ということになるでしょう。

    このプロセス球を参照して思考の軌跡を説明してみましょう。出立ちとは、生まれたままの世界であり、何の迷いもない赤子の状態です。それが、すぐに踏み迷いに入ります。ここは主語論理の世界です。自分は自分であり、他人ではないのです。そのようなきつい強制が働く、仕付け、決まり、ルール、常識の社会です。幾太郎はこの世界に違和感を覚えます。立身出世、名誉、利益などを優先する社会に、世渡りの下手な、堅物的頑固な性格もあり、被害妄想を持つのです。そして、猛烈に悩むのである。気狂い寸前までいきます。

    しかし、逃道がありました。精神病院に入らずに済む世界があったのです。それが哲学です。面目を潰さずに、生きられる世界があったのです。それは哲学という精神病院でした。ビジネスや俗世間の世界に満足できずに、悶々として生活しているとしよう。精神的な満足を得るために黙想したい人は意外に多いようです。ところが、生活するためには昼行灯のようなスタイルは許されないでしょう。このジレンマに悩むのです。上村氏自身も、同様のことに悩み、西田幾太郎に共感したと述べています。

    インドでは瞑想することが社会的に価値のあることという了解があるようなのです。日本ではサボっているとなります。これが文化の違い、気質の違いであり、パラノの中のスキゾには、苦しさを生むのです。今日ではブログが流行していますが、これで大分救われている人がいるのでしょう。誰も訪れることのないブログに投稿して、自己満足しているとしても、それはそれで精神的な満足があるのかも知れません。インターネットという新しいメディアが悟りを開く武器となるのです。これについてはこの後に続く補完共振「インターネット禅」で述べることになるでしょう。

    パソコンが流行り始めた頃は、パソコンの前に座るだけで上司から睨まれたものです。遊んでいると見られたのです。おたくともいわれたのです。ハッカーはおたくなのです。そうして、白い眼で見られたにもかかわらず、逃げ場を見つけた彼は、知り覚えに入るのです。

    知り覚えとは、「自分は自分であり、自分は、他人でもある」ということに確信を持つことです。性同一性障害者は、初め、自分がおかしいと気がつきます。そのときは、ひょっとして、自分(男)は他人(女)ではないかと思うのでしょう。しかし、肉体は男です。自分(男)は他人(女)であるはずがないと思うのです。そうして、ジレンマに陥るのです。この逆(女・男)もあります。これが踏み迷いです。しかし、やがてカミングアウトする時が来ます。毅然と、「自分は、男である」同時に「自分は、男ではない」と宣言するのです。カミングアウトしてしまえば、怖いものは何もありません。再び、元の生まれたままの場所へ還りゆくのです。

    この生まれたままの場所を西田幾太郎は、絶対に信頼できる場所、無(空)の場所、生まれた故郷であると高らかに言明したのです。西田幾太郎も又、「私はスキゾである」(述語論理の得意にタイプ)とカミングアウトして、救われたのです。

    これを要約すれば、

      出立ち  <A=A>
      踏み迷い <A≠非A>
      知り覚え <A=A、A=非A>
      還りゆく <A≠A、A≠非A>


    ということになるでしょう。

    これは人生をかけた、苦しみからの解放される自覚のプロセス、悟りへのプロセスであり、禅の即非論理を、述語論理で哲学にしたのです。西田幾太郎の哲学は、西田と道元とのシムダンスした結果生まれた悟りなのです。

    下のプロセス球の図は上村武雄氏著「気配論」から引用しました。





    ここで示したプロセス球は、悟りの十牛図や宇宙のサイクルとどこか似ています。四次元能=シムダンスは、スキゾの救済の哲学ではなく、人類の救済=起死回生の思考としたいのです。果たしてそれで間に合うのでしょうか。

    このテーマ終。

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