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from: consolationsさん
2012年10月21日 00時21分56秒
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ヒンデミット:前庭に最後のライラックが咲くとき 「愛する人々へのレクイエム」
ウォルト・ホイットマンの詩集「草の葉」は、最初は12編・100ページの作品でしたが、書き直すこと12回に及び、400編を超える内容にもなっています。
その内容は、ロマンあふれる人道主義、人間を含む大自然の歌、アメリカの風土についての現実的な表現がなされており、特にアメリカに将来に対して、楽観的な予言が含まれていることから、読み手が増え、アメリカ最大の国民の詩といわれるほどになりました。
この詩集に「リンカーン大統領の追悼」の一場面があり、リンカーンの突然の死に際して、書かれたもので、
ホイットマン自身、リンカーンの大統領選挙再選に応援もしていたことから、その心情がつづられた内容です。
花 ライラック と 西に沈む星 と つぐみ とにより、
リンカーンの死を偲んだ長編の詩「前庭に最後のライラックが咲くとき」です。
リンカーンが暗殺された時期に、ライラックは咲いており、棺にうず高く置かれた花 ライラック…
西の夜空に沈む大きな星、作者ホイットマンの心をあらわす、つぐみの歌。
詩の中には、リンカーンという言葉は入っていませんが、痛切な悲しみをうたっています。
さて、作曲家 パウル・ヒンデミットは、1934年ころからナチス政権により、ドイツを追われ、トルコ、スイスへ移り、戦争を避けて、アメリカに移住しました。
アメリカの市民権を得て、その孤独な気持ちを表現したのが、
「愛する人々へのレクイエム」
テキストは、ホイットマンの詩「リンカーン追悼詩」から取られました。
合唱指揮者 ロバート・ショウの委嘱により、フランクリン・D・ルーズベルトの追悼と、第2次世界大戦の犠牲者への想いを込めた作品です。
テキストは英語ですが、ヒンデミットによる、ドイツの伝統にそくした作品です。
ロバート・ショウは、同時代の作曲家の中でも、他の作曲家たちにも影響を与えた偉大な4名と作品を挙げています。
バルトーク :カンタータ・プロファーナ
ストラヴィンスキー :詩編
シェーンベルク :地上の平和
ヒンデミット :前庭に最後のライラックが咲くとき
作品を聴いての感想は、澄んだレクイエムでは、ありません。
作品自体が、ドイツ伝統による重厚な響きであるのは、もちろんですが、合唱は、重く、独唱部分も重たいです。音楽全体に、ずしりとした感覚があります。
誰にでも訪れる死について、フォーレのように安堵の気持ちで、天国へいざなってくれるのではなく、
それまで、亡くなる前まで、生きていた人を悼む気持ちが悲痛なほどに
、不安感もよぎるほどの心痛さで音にした作品です。
長らく聴いていませんでしたが、第2次世界大戦という言葉をたよりに、棚から探し出して、聴いています。
戦いは、攻撃した・被害を受けた、やった・やられたであり、皆が不幸になると思います。
また、大戦でなくとも、新聞では、毎日のように世界中のどこかで紛争が起きています。
美しい曲ですが、こんな悲しく、重々しい曲は、これから、作曲されては、いけないと思います。
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