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from: 庵主さん
2010年09月05日 23時07分50秒
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西行と芭蕉をつなぐ“能”。第八回
■芭蕉の名の由来
芭蕉という植物は中国原産のバショウ科の多年草で、バナナと同種。中国南部から渡来し、日本では平安朝から親しまれていました。夏には長く大きな葉を広げ、秋にはその葉がばっさりと落ちるのが特徴です。芭蕉の茎は大木のように成長しますが、「偽茎」と呼び稲、ススキと同様に葉の鞘の部分が巻いているだけなので、辣韮(らっきょう)と同様剥くと中身がなくなってしまう。それ故古来仏教では、この世の存在の無であることの例えにされていたのです。
能『葵上』には「人間の不定、芭蕉泡沫の世の習ひ…」とあり「人間の命の定めなく儚いことは芭蕉の木を剥くように、芭蕉の葉や水の泡のように空しい」と謡われる。また、『芭蕉』の終曲近くに「芭蕉の扇の風茫々と…」とあるように、芭蕉の葉は古来扇に見立てられていました。『井筒』の最後は「芭蕉葉の夢も破れて」と破れやすい譬えとして謡われています。
芭蕉も、この破れやすい植物の芭蕉の無常な様を愛し、自らの俳号として採用しました。
天和元年(1681年)の春に、門人の李下(りか)から贈られたバショウの株を庭に植えたところ、大きく茂って近隣の名物となり、草の庵は誰言うとも無く「芭蕉」の号で呼称されるようになったのです。
芭蕉は、天和2年(1682年)の春、望月千春編「武蔵曲(むさしぶり)」の中で自らも「芭蕉」と名乗り「芭蕉翁桃青」と署名しています。この年の秋、風雨にたたかれる庭のバショウを題材に「芭蕉野分して」の句を吟じています。
老杜、茅舎破風の歌あり。坡翁ふたゝびこの句を侘て、屋漏の句作る。其世の雨を芭蕉葉にきゝて、独寝の草の戸。
芭蕉野分して盥(たらい)に雨を聞く夜哉
また謡曲を愛好する芭蕉は、能の曲名『芭蕉』から自身の俳号を得たとする説もあります(『悪党芭蕉』嵐山光三郎)。
能『芭蕉』の作者、金春禅竹は、深く禅宗に帰依していたことで知られます。
植物の芭蕉=仏教の「無」を象徴→禅宗を信奉する禅竹が、これを題材に能に作曲→謡曲と禅を好む芭蕉が、自庵の芭蕉をきっかけに、自身の俳号に採用。
おそらく芭蕉の俳号の由来はこんなところではないでしょうか。-
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