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from: 庵主さん
2010年09月08日 21時19分53秒
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西行と芭蕉をつなぐ“能”。第九回
芭蕉が自ら見、深い影響を受けたと思われる、禅竹作の能「芭蕉」を紹介しましょう。
■能「芭蕉」
曲目:芭蕉(ばしょう)
曲柄:三番目
作者:金春禅竹
季節:八月
場所:支那湖西省湘水付近
登場人物:
ワキ……山居の僧
角帽子・シケ水衣・無地熨斗目
シテ……里の女 面:深井・
無紅唐織
後シテ……芭蕉の精 面:深井
・長絹・白大口(色大口))
〈解説〉
能「芭蕉」は芭蕉の精を主人公にし、その成仏を主題にした珍
しい作品である。能にはほかに、梅、藤、桜(西行桜)、柳(遊行柳)など草木の精を主人公にした作品があり、かつては人間以外のものを取り上げていることから5番目に分類されていた時期もあったが、現在ではいずれも3番目に数えられている。
作者は金春禅竹。世阿弥の娘婿であるが、その作風は能の幽玄美をいっそう追求したもので、物語性よりも思想的な内容を重視した。良く知られた作品としては、「雨月」、「小督」、「千手」などがある。仏教的な思想性を作品の中にとりこんでいるのが特徴である。
この作品にも、金春禅竹の仏教観が草木の成仏という形で現れている。有情の人間ではなく、非情の草木について成仏を論ずることは一見奇異に思われるが、禅竹は法華経の薬草喩品を取り上げながら、仏の慈悲は有情非情をとわずあまねくいきわたっているのだと主張している。
〈あらすじ〉
唐土楚国の湘水というところに山居の僧が毎夜読経をしていると、ひとりの女がそっと聴きに来る様子なので、ある夜、僧は女にその素性を尋ねる。女は「私はこの辺りの者で仏縁を結びたいと思って来るのですから、どうか内へ入れて御法を聴聞させてください」と言う。
その志に感じて僧は庵の中に入れて、薬草喩品を読んで聞かせる。それに対して、女は草木さえも成仏できる法華経の功力をたたえ、その後、自分が芭蕉の精であることをほのめかして消え失せた。
その後もなお僧は夜もすがら読経をしていると、芭蕉の精が再び女の姿で現れる。そして非情の草木も無相真如の體であることや、芭蕉葉が人生のはかなさを示していることなどを語り、舞を舞った。秋風が吹きすさむとその姿は消えて、庭の芭蕉の葉だけが破れて残っていた。
詞章
地「恥かしや帰るさの 道さやかにも照る月の
影はさながら庭の面の雪の中の芭蕉の
いつはれる姿の真を見えば如何ならんと
思へば鐘の声 諸行無常となりにけり/\。
(中入)
シテ「これも芭蕉の葉袖をかへし
地「かへす袂も芭蕉の扇の 風茫々と物すごき
古寺の庭の浅茅生 女郎花刈萓 面影うつろふ
露の間に 山おろし松の風 吹き払ひ/\
花も千草もちりぢりに 花も千草もちりぢりに
なれば 芭蕉は破れて残りけり。
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