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  • from: 21世紀さん

    2009年07月13日 07時04分17秒

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    マル激トーク・オン・ディマンド更新しました

    マル激トーク・オン・ディマンド更新しました。

    http://www.videonews.com

    ■マル激トーク・オン・ディマンド 第431回(2009年07月11日)
    ミツバチが知っていて人間が知らないこと
    ゲスト:中村純(玉川大学ミツバチ科学研究センター主任教授)

    <プレビュー>
    http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_431_pre.asx

    今年の春、農作物の花の受粉に使用されるミツバチの不足が全国各地で伝えられた。
    花粉交配用ミツバチは、特にイチゴやメロンなどのハウス栽培作物に欠かせないため、
    海外から繁殖のための女王蜂を輸入することで安定供給を図っていたが、輸入の8割を
    占める豪州産女王蜂に伝染病が発生し、輸入が止まったため需給に混乱が生じたことが、
    どうやら今回の日本におけるミツバチ不足の直接の原因だったようだ。
     しかし、ミツバチの大量死や減少は、日本だけでなく、世界各地で多発している。特
    に米国では、蜂群崩壊症候群(CCD)と呼ばれるミツバチが巣箱から突然消えていなくな
    る現象が3年前から各地で発生し、農業生産に大きな打撃を与えている。
     ミツバチの消滅や大量死の原因には諸説あるが、ミツバチ研究の第一人者である中村
    純玉川大学ミツバチ科学研究センター主任教授は、全米で起こったCCDについては、人間
    がミツバチを農業用の資材として酷使したことで、ミツバチに過度なストレスがかかっ
    たことに原因があったとの見方を示す。アメリカでは花粉交配用のミツバチは農業生産
    に欠かせない家畜として、開花の時期に合わせて巣箱ごと全米各地をトラックで長距離
    移動させられる。しかも、単一作物が植え付けられた広大な農地での受粉作業は、ミツ
    バチにとって栄養バランスの悪い食事以外の何ものでもない。移動の疲れに栄養不足な
    ど過重なストレスがかかったミツバチが、ダニ、ウイルス、農薬など既知の外敵への抵
    抗力を低下させていた可能性も否定できない。実際、アメリカではミツバチの栄養と衛
    生状態を改善した結果、今年はCCDの発生はほぼ治まっているという。
     ミツバチの大量死が顕著だったアメリカには、そのような特殊な事情があったと見ら
    れる一方で、アメリカほどではないものの、やはりミツバチの不足や減少が発生してい
    る日本や欧州では、ネオニコチノイド系農薬に原因の一端があるとの見方が有力だ。ネ
    オニコチノイド系農薬は、人体に有害な有機リン系農薬に代わる新種の農薬として開発
    され、近年その使用が急激に増えている。人体への影響はないが、昆虫の神経系に打撃
    を与える特徴を持つとされる。欧州ではネオニコチノイド系農薬を使用した農地の周辺
    でミツバチの大量死が報告されたため、現在フランスやオランダなどでは全面禁止され、
    EU全体でも禁止の方向に向かっているという。
     日本ではカメムシ被害によってコメの等級が下がることを避けるために、稲田でネオ
    ニコチノイド系の農薬が広範に利用されるようになっている。カメムシ被害に遭った稲
    は、コメに微少な斑点がつく。しかし、食味上何の影響もない斑点米の僅かな混入でコ
    メの価値が下がってしまうことを避けるためにネオニコチノイド系農薬が大量に使われ、
    ミツバチを含む生態系に多大なストレスを与えている現状は、果たして合理的と言える
    だろうか。また、科学的には人体には影響しないとされるネオニコチノイドでも、一定
    量を超えて使用されれば、影響があるとの指摘もある。
     このように世界的なミツバチの大量死は、単純な因果関係で説明できないが、一つはっ
    きりしていることは、農業が産業化し、ハウス栽培などでミツバチを工場の機械の一つ
    のように扱うようになったことと無関係ではないことだ。アメリカでのミツバチの酷使
    はもとより、ネオニコチノイドについても、ミツバチの受粉期は農薬の散布を避けるな
    どの小さな工夫で、ミツバチへの影響を最小限に抑えられる可能性はある。昨今のミツ
    バチ大量死は、農業においても生産性と効率のみを追求するあまり、ミツバチを農業資
    材としか見なくなった人間が、その程度の配慮さえできないまでに利己的になっていた
    現実を、訴えかけている。
     またネオニコチノイドも、「人体に影響がない」との能書きで近年一気に利用が広がっ
    ているが、仮に人体への影響がないことが100%本当であったとしても、それだけで大量
    使用することは、生態系の他の生物のことを全く無視しているとの誹りは免れない。そ
    れがミツバチに打撃を与え、更にそれが農業生産に影響を与えることで、結果的に回り
    回って人間に大きな不利益をもたらしていることになる。
     社会性動物であるミツバチは、女王蜂を中心に一つのコロニーを形成し、コロニー内
    では数千から数万の働き蜂が、それぞれ明確に決められた自分の役割分担を果たす。ミ
    ツバチはまた、高度なコミュニケーション能力を持ち、例えば8の字ダンスは良い蜜の在
    り処を他の蜂に伝える伝達手段なのだという。人間はそのような高度に進化したミツバチ
    さえも、効率的農業生産の道具としてしか見られなくなっているようだ。
     地球の生態系では、被子植物の多くがミツバチの受粉に頼って生きている。互いが互
    いを必要とする生物相互関係の中でミツバチも植物も進化を遂げ、動的平衡が保たれて
    きた。その精妙なバランスを身勝手な論理で人間が崩したことが、ミツバチ消滅が起き
    た真の原因と考えるべきかもしれない。
     しかし、ミツバチの生態の逞しさや複雑さを見ていると、環境に対して開かれている
    が故に環境の影響を受けやすいミツバチよりも、環境を克服するために環境から自らを
    隔離し、生態系との相互関係を失ってしまった人間の方が、なぜか脆弱な存在にすら思
    えてくる。中村氏は、だからこそ人間はミツバチの視座を持つことが大切だと説く。人
    間を中心に据えるのではなく、他の生き物の立場に立って生態系のあるべき姿を再考す
    れば、生物多様性の本当の意味が自ずと見えてくるはずだと言うのだ。
     今世界でミツバチに起きていることや、ミツバチの類い希な習性や生態から、我々人
    間は何を学ぶべきかを、ミツバチ博士とともに考えた。


    <今週のニュース・コメンタリー>

    ・児童ポルノ法改正: 行政の裁量拡大に無警戒な政治の惨状
    ・なぜ今、供託金引き下げなのか


    <関連番組>

    ■マル激トーク・オン・ディマンド 第405回(2009年01月07日)
    だから男はみんなできそこないなんだ
    ゲスト:福岡伸一氏(青山学院大学理工学部教授)

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