２０１０年度予算案がきのう衆院本会議で可決、参院に送付された。憲法は参院が３０日以内に議決しない場合、自然成立すると規定しており、年度内成立が確定した。

　政権交代後、初の通常国会が開幕して１カ月半が経過した。骨太の政策論議が戦わされるものと期待していたが、民主党と自民党の「お家の事情」ばかりが優先され、かみ合わない。

　参院選を前に各党、ポイントを稼いでおきたいところだろうが、国会は選挙対策の場ではない。党利党略を捨て、審議を尽くすことが国民の負託に応える道だ。

　序盤国会は、鳩山由紀夫首相と小沢一郎民主党幹事長の「政治とカネ」をめぐる問題に明け暮れた感がある。

　自民党は与党が関係者の国会招致に応じないことに抗議し、２月２２日から国会審議を欠席した。長崎県知事選で自民系候補が勝利し、「勝負どころ」とこぶしを振り上げたまではよかったが、他の野党が審議拒否に同調せず、３日で腰砕けとなった。

　世論の反発を招きかねない審議拒否は、野党最後の抵抗手段のはず。不退転の決意で伝家の宝刀を抜いたのか、疑わしい。半世紀以上、政権の座にあった老舗政党として、今後は何よりも王道を歩むことを勧める。

　民主党の「ゼロ回答」については、特に苦言を呈しておきたい。政治資金規正法違反の罪で起訴された石川知裕衆院議員の辞職勧告決議案は、たなざらしのままだ。

　小林千代美衆院議員の陣営に１６００万円の不正な献金が渡っていた疑いが強まり、札幌地検は北海道教職員組合の幹部ら４人を逮捕した。民主党の支持母体である労組から、違法性の強い資金がそれも衆院選対策費名目で提供されていた構図だ。

　党内で権力基盤を固めるために、あるいは議席を獲得するために、説明のつかないカネが動いているのではないか。国民はそんな疑いの目を向け始めている。政権交代の意義を台無しにしかねない疑惑である。３日から参院に舞台を移す予算案審議が緊迫するのは必至の情勢だ。

　予算の年度内成立を急ぐあまりの強引な国会運営も改めるべきだ。民主党がマニフェスト（政権公約）で掲げた子ども手当法案と高校無償化法案は既に審議入りしている。しかし、これも「日程」だけが一人歩きしていないか。

　確かに両法が成立すれば４月から高校の授業料は無料になり、子ども手当の１回目の支給も参院選前の６月に間に合う。政権交代の成果をアピールできる格好の政策テーマではある。

　だが、子ども手当をめぐって与党は首相が本会議に出席し、質疑に応じる「重要広範議案」としなかった。自民党は「政治とカネ問題の追及を恐れ、首相を出したくないから普通の議案として処理している」（大島理森幹事長）と批判している。

　子ども手当は財源不足から、１１年度以降の満額支給に黄信号がともってもいる。おざなりの審議は到底、許されない。

2010年03月03日水曜日

河北新報